PR
写真●テラスカイの今岡 純二氏
写真●テラスカイの今岡 純二氏
[画像のクリックで拡大表示]

 手軽にアプリケーションを開発できるPaaS。開発したアプリケーションに対するデータ移行も簡単なのだろうか---。オンプレミスでのシステム開発経験が豊富でもPaaSを使った開発は未経験というITエンジニアはこうした疑問を抱くのではないだろうか。

 そういった疑問にズバリ回答する講演が、東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2011のメインシアターで行われた。講師は、クラウドでの開発に詳しい、テラスカイの今岡 純二取締役ソリューション部部長だ。

 今岡氏が役員を務めるテラスカイは、2003年から米Salesforce.comが提供するSaaSやPaaSである「Force.com」での開発を手がけている。これまでにSalesforce関連システムの導入案件を600以上、手がけている。

 今岡氏は、Force.comでの開発経験を踏まえ、「第一人者が徹底解説、クラウド上での業務アプリ開発」と題して講演を行った。講演では、PaaSを使って開発する際、開発者が抱きがちな非機能要件に関する疑問に答えた。

 冒頭の疑問に対して読者はどのような回答をお持ちだろうか。今岡氏の答えは、「No」。移行がプロジェクトの難関になるケースがとても多いという。「Force.comとは違い、PaaSの中には移行用のツールが提供されていないこともあるし、ツールが提供されても移行できるのはマスターデータだけで、トランザクションデータは移行できないといったこともある」(今岡氏)からだ。

 移行するデータが、数百万~数千万件になる場合はさらに注意が必要だ。「PaaS側のリソースの制限でうまくいかないこともあるので、登録ができるかどうかの検証は欠かせない」と今岡氏は指摘する。

 今岡氏はこのほか、「テーブル間で参照関係がある複数テーブルのデータは、移行する前に関連付けているキーを手作業でつけかえないと、移行後にきちんとデータを利用できない場合がある」ことや、「データ移行は、インターネット経由で数時間もかかるので、通信エラーが生じても、途中からリトライできるように対策を講じておくことが欠かせない」といった、実務経験者ならではの役立つノウハウを披露した。

 「データ移行がそんなに困難ならば、その後に待ち受けている運用・保守も大変なのではないか」。読者はそう考えるかもしれない。ところが今岡氏は、「運用・保守はすごく楽になる」と話す。オンプレミスのシステムで監視対象になっていたサーバーやネットワークなどのPaaS内インフラの運用・保守は、PaaS事業者の担当になるからだ。「PaaSを利用する側の運用担当者は、ログイン履歴がどうなっているか、処理が正しく行われているかといった、アプリケーションの監視だけを行えばよい」(今岡氏)。

 今岡氏は、運用・保守が楽になることで、運用・保守担当者の役割も大きく変わってくると見ている。「PaaS事業者は、多くの機能を次々と提供してくる。それを検証した上でビジネスにどう活かせるかを、システム利用者に提案する。そういう役割が運用・保守担当者が担うようになってくるだろう」と、今岡氏は推測する。

 ただし運用面でも注意は必要だ。PaaSでは、バックアップの機能が提供されていても、リストアの機能はなかったりするからだ。また、セキュリティ面も、PaaS事業者がインフラのセキュリティ対策を講じているのでPaaS利用者が考慮する必要はないが、「PaaS上のアプリケーションに対するセキュリティ対策は、PaaS利用者がしなければならない」(今岡氏)。

 PaaSを使った開発や運用に詳しい今岡氏。この10月には、「Force.comのすべて 設計・開発 実践マニュアル」という書籍を書き下ろした。「どうやってアプリケーションを作るかではなく、プロジェクトをどう進めていくかや、どう設計していけばよいかといった点にフォーカスして、これまでのノウハウをふんだんに盛り込んだ。ぜひ手にとって読んでもらいたい」と、今岡氏は講演を締めくくった。