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 「首都圏情報産業特区・八王子」構想推進協議会(サイバーシルクロード八王子)が2011年10月19日、設立10周年の記念講演会を開催した。テーマは「Android City八王子を目指して」。元グーグル日本法人社長の村上憲郎氏、米ネットサービス・ベンチャーズ・グループの校條浩氏、東京工科大学コンピュータサイエンス学部教授の田胡和哉氏、OESF(Open Embedded Software Foundation)代表理事の三浦雅孝氏らが登壇、それぞれの立場からIT業界における事業チャンスを語った。

「スマートグリッドとはモノのインターネット」

写真1●元グーグル日本法人社長の村上氏
写真1●元グーグル日本法人社長の村上氏
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 村上氏は3年前にグーグル日本法人の代表を辞めた後、スマートグリッドの普及活動に取り組んでいる(写真1)。それは、スマートグリッドが、家電などをインターネットにつなぐ「Internet of Things」(IOT)の基盤になるととらえているからである。「2020年にはスマートグリッドが成立、現在電力網に接続されるものはすべてインターネットにつながる」(村上氏)。

 同氏は、自らもかかわっている資源エネルギー庁における議論や会津大学などでの取り組み、さらには米国事情などを紹介。制度面でも技術面でもスマートグリッドが実現に向かっていることを示した。

 興味深いのは、米国の「デマンドレスポンス」。スマートメーターを設置した家庭では、需要のピークに契約アンペア数を落とし、その代わりに協力料を受け取るという制度である。100万戸規模で設置することで、原子力発電所1基分を担うことができる。この取引は、ネガワット買い取りと呼ばれており、発電設備への投資を行わないで済んだために浮いた資金を充てる。

 同氏は、スマートグリッドが次世代のインターネットであるとし、「その上でできることを思い付けば、それがビジネスチャンスだ」として、八王子から新しい取り組みが生まれてほしいと期待を示した。

シリコンバレーの新潮流は「リーン」

写真2●米ネットサービス・ベンチャーズ・グループの校條氏
写真2●米ネットサービス・ベンチャーズ・グループの校條氏
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 校條氏は、シリコンバレーに拠点を置くベンチャーキャピタリストの視点から、昨今の起業(スタートアップ)の潮流を紹介した(写真2)。

 これまでスタートアップ企業にはMBA(経営学修士)のような理論がないとされていたが、最近は大学でも気が付いて教え始めているという。その代表がスタンフォード大学などで教鞭をとるスティーブ・ブランク氏である」(連載記事)。「これを工学部の中に作っているのが興味深い」(校條氏)。

 校條氏は、スタートアップ企業を推進するにあたり、従来型の日本的な規範がブレーキになっているという。サイバーシルクロード八王子では現場で決められることが多いと聞いた同氏は「自由裁量があることは素晴らしい」とたたえた。

写真3●東京工科大学の田胡氏
写真3●東京工科大学の田胡氏
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 最後に、最近のトレンドとして「リーン・スタートアップ」(Lean Startup)を挙げた。“スーパーエンジェル”と呼ばれる投資家が比較的少額の投資を、小さなグループに提供し、短期間で一定の成果を求め、次のステップに進んでいく動きである(ITproの特集)。

 田胡氏は、東京工科大学の意欲的な取り組みとして「大学病院のような現場を持つ工学系大学」を目指した活動を紹介した(写真3)。具体的な活動としては、クラウドサービスセンターや工科大ケータイ、災害時クラウドなどがある。

写真4●OESFの三浦氏
写真4●OESFの三浦氏
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 組み込み技術の推進団体の代表を務める三浦氏は、Androidに代表されるIT分野では「技術を開示することでパートナーを呼び込む」と強調した(写真4)。米国のネット企業が技術開示でアジアの企業とパートナー関係を結んで市場を開拓したのに対し、「日本企業は技術を閉ざすことで競争相手を作った」と指摘した。

写真5●サイバーシルクロード八王子会長の甲谷氏
写真5●サイバーシルクロード八王子会長の甲谷氏
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 横河・ヒューレット・パッカード代表取締役社長や日本ヒューレット・パッカード代表取締役会長などを歴任し、現在はサイバーシルクロード八王子会長を務める甲谷勝人氏はサイバーシルクロード八王子の過去10年の取り組みを紹介し、これからはAndroidを軸に、事業化や地場産業の活性化、国際交流を進めていきたいとした(写真5)。

写真6●八王子副市長の田中氏
写真6●八王子副市長の田中氏
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 最後に登壇したのが八王子副市長の田中正美氏(写真6)。田中氏は「Androidで、八王子を全国に売り込める可能性がある。行政として努力することを約束する」と、サイバーシルクロード八王子の活動にエールを送った。