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写真1●ET2011に登壇したクアルコムジャパンの山田氏、シャープの白石氏、NTTドコモの山下氏、IHSアイサプライの南川氏(左から)
写真1●ET2011に登壇したクアルコムジャパンの山田氏、シャープの白石氏、NTTドコモの山下氏、IHSアイサプライの南川氏(左から)
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 2011年11月18日に開催された「ET2011(Embedded Technology 2011 / 組込み総合技術展)」のパネルディスカッションでは、「日本の産業を元気にするにはどうするか?」という大きなテーマに関して、スマートフォン分野のキーパーソンが議論を交わした。登壇者は、クアルコムジャパンの山田純氏、シャープの白石奈緒樹氏、NTTドコモの山下哲也氏、IHSアイサプライの南川明氏の4人(写真1)。

 冒頭の自己紹介を兼ねた現状分析と今後の展望として南川氏は、「スマートフォンの出荷は、先進国よりも新興国市場で伸びるので、ローエンドの製品がけん引役になる」とした。山下氏は「市場への浸透の速さが通信事業者として脅威を感じる」とし、「スマートフォンが変える、本質的なものに注目したい」とした。同氏が注目する本質的な変化の一つは、工場出荷以降も機能が増やせるので、時々刻々変わっていく情報を容易に扱える点である。

 白石氏は開発側からの視点として、「スマートフォンの技術要素には、広く応用できるものがたくさんある」という。例として挙げたのがオープンソースのソフトウエア。スマートフォン以外の活用例が様々考えられるとした。山田氏は、グローバルな半導体メーカーの立場から「日本企業への供給比率はここ数年で減ってきた」と報告。続けて、同社が1998年に発売したスマートフォンの原型とも言える「pdQ」を取り上げ、タイミングの重要性を痛感したと語った。

「ユーザーは、完成品ではなく、発展する仕組みを求めている」

 山田氏の「タイミングが重要」という話を受け、スマートフォンの製品化や普及に至る経緯を各パネリストが自身の体験などをもとに振り返った。

 若いころからコンピュータのソフトウエア技術者を志していたという白石氏は、シャープのPDA(携帯型情報端末)「ザウルス」の開発経緯を振り返り、「ザウルス向けのSDK(ソフトウエア開発ツール)を配り始めたときに、『OSの中身が分からない』との問い合わせがたくさんあり、説明会を頻繁に開催したもののカバーしきれなかったことや、メーカーの外部にいろいろな知恵を出してくれる人がいた」ことを紹介した。

 その経験を踏まえて投入したのが、「Linuxザウルス」(SL-C700)。オープンソースのOSを導入したことで感じたのは、「メーカーの役割が小さくなる」ということ。メーカーの意図だけで製品を作っていくことへの疑問がわき始めたという。日本市場で携帯電話が高機能化していったときにも、同じような違和感があり、いわゆる“完成品”ではなく、プラットフォームや仕組みを出すことができないかと考えていたことを明かした。

 白石氏と同様、アップルの初期のコンピュータに感銘を受けたという山下氏は「もしも2000年にiPhoneが登場していたら、果たして売れたか」との仮説を提示。市場に受け入れられるには、ユーザー視点の「使われるタイミング」、メーカー視点の「作れるタイミング」があるとし、ユーザーのリテラシーや要素技術の成熟が伴わないと快適な使い勝手の商品にはならないのだろうとした。そのような商品投入のタイミング判断は、極めて感覚的なものというのが山下氏の見方だ。

 山田氏は、現在のモバイル機器に限らず、パソコンもテレビもデジタル技術によってコモデティー化が進んでいる、つまり「誰でも作れるようになった」と総括した。メーカーの立場としては必ずしも望ましいことではないが、最終的にはユーザーのメリットが大きく、必然の流れとする。山田氏によると、その流れとは一線を画した取り組みをしているのがアップルだという。「コモデティー化の流れを見極めて、半導体メーカーを競争させて、ユーザーの視点でイノベーションを起こしている」。

写真2●南川氏が示した世界の年収別の人口ピラミッド
写真2●南川氏が示した世界の年収別の人口ピラミッド
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 ここで南川氏が参考となるデータとして、世界の年収別の人口分布を提示(写真2)。同氏によると、「年収3000ドル以下の人たちは、個人でエレクトロニクス機器を買うのが難しい」。3000ドル以上の層は毎年1億人ずつ増え、安い携帯電話しか買えない人たちがハイエンドのスマートフォンを買うようになるとしながらも、「価格はどんどん下がっていくだろうと見ている」とした。

 このような状況下でメーカーはどうすべきか。白石氏は「革新的なものを安く作って、ボリューム市場で出していくのが戦い方」とするが、ほかの電子機器と同じように低価格化するかについては疑問だともした。というのは、スマートフォンが身につけるものであり、多様な使い方が考えられるからだという。「要求される機能があれば、汎用になりきれない」(白石氏)。

 山下氏も「すべての機器がコモデティー化することには異論がある」とした。同氏は、電子機器の販売で量販店の力が増すなか、スティーブ・ジョブズ氏が直営店「Apple Store」の展開に挑戦したことや、Windowsパソコンが値崩れしてもアップルのコンピュータは高くても売れている事実を取り上げ、メーカーは何が価値なのかを考えて「最高のおもてなし」にこだわるべきではないかとした。これを踏まえ、山下氏は「(コモデティー化による低価格化一辺倒になっている現状の)ルールを変える」ことを提案した。

 ここで、パネルディスカッションのモデレーターを務めた浅見直樹・日経BP執行役員が、このところグローバル市場への進出を加速するユニクロやセブン-イレブン・ジャパンを取り上げ、「生活に密着したサービス事業の輸出」に言及、コモデティー化による低価格化にどう立ち向かうかについてパネリストに意見を求めた。

写真3●クアルコムの半導体ロードマップ
写真3●クアルコムの半導体ロードマップ
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 山田氏は「コモデティー化をどう回避するかについては、米国でも同じ話がある」という。そのうえでやっていることは「成熟させない取り組み」だとした。同社が手掛ける無線通信用のチップについて言えば、これまでも無線LANやGPS機能を取り込み、常に新しいサービスを開拓しようとしている(写真3)。白石氏は、メーカーの立場として「どんなスマートフォンがいいか」という姿勢ではなく、「消費者がどんな生活をしているか、そのために何を作るか、と視点を変えないといけないだろう」という。

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