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 金融庁は2012年2月29日、IFRS(国際会計基準)の適用について議論している企業会計審議会総会・企画調整部会の合同会議を開催した。2011年6月に自見庄三郎金融担当大臣の発言をきっかけに再開してから6回めとなる今回は、原則主義のもたらす影響について議論した。議論ではIFRS適用の方針として、「強制適用は実施せず、任意適用を継続する」「対象企業を限定した上で強制適用を実施する」といった方向性が浮上した。

 会議ではまず、日本経済団体連合会(経団連)が実施したIFRSに関する調査結果について説明があった。調査は、経団連企業会計委員会企画部会の委員と業界団体を対象に2011年9月に実施。金融庁が「今後の議論・検討の進め方(案)」として示した11の論点(関連記事:IFRS強制適用について11論点を提示、企業会計審議会が開催)やIFRSで特に問題があると考える点について尋ねた。

 全体として多かったのは「2012年中に、IFRSの適用方法や適用時期などの方向性を明確化すべき」「日本がIASB(国際会計基準審議会)に対する影響力を保持・強化することが重要である」といった意見だ。前者については、IFRS適用に関するロードマップを示した中間報告(我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告))で、2012年をメドにIFRS適用の可否を判断するとの記載がある。前々回の合同会議で、金融庁は必ずしも2012年にこだわらない旨を発言していた(関連記事:適用可否決定は「2012年」にこだわらず、金融庁がIFRSに関する合同会議)が、調査では2012年中を望む意見が多い。ただし、その場合も多くが「慎重に検討すべき」としている。

 IFRSの適用方法については、「範囲を連結財務諸表に絞るべき」とする連単分離を支持する意見が多かった。審議会での議論もこの点は一致している(関連記事:IFRS適用は「連単分離」が濃厚か、企業会計審議会で議論)。懸念の多い基準としては、利益概念、従業員給付、無形資産(開発費の資産計上)、のれん、収益認識、リースなどを挙げている。これらの多くも、これまでの審議会やASBJ(企業会計委員会)で議論した項目である。

最後の検討項目は「任意適用の検証」

 意見が分かれたのは、適用の在り方だ。「任意適用を継続すべき」「当面任意適用を継続して状況の変化を見極めるべき」「強制適用を行うにしても対象企業を限定して行うべき」との意見があった。合同会議での議論と合わせて、大きく「任意(早期)適用継続」と「対象限定の強制適用」の二つが有力であるといえるようだ。

 前者は、IFRSの適用を強制するのでなく、適用したい企業に対して任意適用を認めればよいとするものだ。日本では2010年3月期から、一定の条件を満たす企業に対してIFRSの任意適用を認めている。すでに6社が任意適用済み、あるいは任意適用を予定している(関連記事:JTがIFRS任意適用へ、比較可能性と資金調達の多様化目指す )。

 後者は、日本企業に対して強制的にIFRSを適用すべきとするものだ。ただし、全ての上場企業を対象とするのでなく、対象を限定して適用する形を採る。調査では「適用数が一定数に達することが重要」とする意見があった。

 合同会議でも、IFRS適用の在り方については意見が分かれた。「任意適用継続」を支持する委員からは、「世界的に見ても、対象企業を限定した強制適用というのは一般的ではない。例えば欧州は規制市場にはIFRS、非規制市場には各国基準と市場で分けており、どちらの市場に参加するかは企業が選べる。任意適用に近い形で運用している。企業にとってのコストとベネフィットを考えると、困難ではないか」との意見を述べた。一方、「対象限定の強制適用」を支持する委員は「時価総額で見て、全体の過半数の企業が適用する形にしていくことが大切」と語った。

 後半では金融庁が挙げた11の論点の四つめに当たる「原則主義のもたらす影響」について議論した。原則主義はIFRSの特徴の一つで、企業が経営の実態を反映した会計処理を可能にする一方、財務諸表作成の負荷が大きい、解釈の幅が広がるので比較可能性が損なわれる恐れがあるといった懸念点がある。

 これに対して委員からは、「企業が実際に適用する際に参考になるような、何らかのガイダンスまたはベストプラクティスに当たるものが必要」「企業、監査人、策定主体が十分話し合うべき」といった意見が出た。IFRSの設定主体であるIASBは、各国特有の問題に関してのみ、ガイダンスの作成を認めている。

 金融庁は、前回の会議(関連記事:「海外の先行事例を導入議論の参考に」 金融庁がIFRSに関する合同会議開催)で、11の論点の10個めに当たる「ASBJのあり方」と、11個めの「IASBのガバナンス」を議論したとしている。このため、今回の合同会議で11項目中、6項目分に関する議論が終了したことになる。

 残る5項目は「規制環境(産業規制、公共調達規制)、契約環境等への影響」「非上場企業・中小企業への影響、対応のあり方」「投資家の企業とのコミュニケーション」「監査法人における対応」「任意適用の検証」である。委員からは「項目を見直す必要があるのでは」との意見も出たが、金融庁は「11項目を検討していく」としている。

 この順番で議論が進めば、最後が「任意適用の検証」となる。ここで「任意適用継続」か「対象限定の強制適用」かのどちらを採用するかについて、方向性が見えてくるとみられる。次回の合同会議は3月29日に開催する予定である。