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 日産自動車のカルロス・ゴーン代表取締役会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)は2012年6月19日、慶応義塾大学日吉キャンパス(横浜市)で講演した(写真1関連記事)。これは、慶応義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)の創立50周年を記念して開催されたもの。ゴーン会長は「グローバル経営と危機対応について」と題し、現在の状況で経営を進めるためのリーダーとしての心構えを語った。

写真1●危機管理について講演する日産自動車のカルロス・ゴーン会長
写真1●危機管理について講演する日産自動車のカルロス・ゴーン会長
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 ゴーン会長はまず、「企業で成果を出すうえで、平常時はリーダーの能力なんて本来は関係ない」と話し、会場を驚かせた。ただし、「危機が起きたときに限っては、リーダーの能力や行動がとても重要になる」とした。

 具体的にゴーン会長は、危機対応のために必要な「5つのステップ」を挙げた。

 1つ目は「状況を把握すること」。2008年の「リーマン・ショック」に端を発した金融不況のときは、「経済状況はどの程度悪いのか」「社内にどの程度のお金が残っているのか」といった事実を把握したという。

 2つ目は「冷静に把握した事実に基づいた手を打つこと」。ここでは、短期的な視点だけではなく、中長期的な視点も重要だという。日産の場合は、既にできていた中期経営計画を破棄し、中長期的な投資はやめて、とにかく手元資金を確保する方針を徹底した。ただし、危機が過ぎた後にも経営が続かなければ意味がない。ゴーン会長は、数少ない例外として、低公害車開発などへの投資は継続することに決めた。

危機時は権限移譲が必須

 3つ目は「権限委譲」だという。これは東日本大震災直後の対応で威力を発揮した。平時なら本社決裁が必要な補修工事案件なども、全て工場・現地で決裁する仕組みに変えた。ゴーン会長は「今まさに危機が起きているときに、何でも中央に情報を集めて決めるのでは大きな間違いにつながる」と断言する。

 4つ目はリーダーが当事者として危機の現場に参画すること。ゴーン会長自身も東日本大震災後に操業不能になった福島県いわき市のいわき工場を訪れ、従業員を激励している。「役員や管理職にも、厳しい場所に自分で行って、『大変な状況だがやる』という意思を示すように伝えている」(ゴーン会長)。

 5つ目は、危機から何を学んだかを考え、組織のノウハウとして生かすこと。これがなければ、また同じ危機・失敗を繰り返してしまうことになる。

 ゴーン会長は「これら5つのステップのどれが抜けても、危機を克服できたとは言えない」と強調した。

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