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写真●「IT Japan 2012」で講演する寺島実郎氏(写真撮影:中根祥文)
写真●「IT Japan 2012」で講演する寺島実郎氏(写真撮影:中根祥文)
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 日本総合研究所理事長で、多摩大学学長や三井物産戦略研究所会長を務める寺島実郎氏(写真)は2012年7月4日、「IT Japan 2012」(日経BP社が6日まで東京・品川プリンスホテルで開催中)の基調講演に登壇した。「世界の構造転換と日本の進路」というテーマで、約50分間にわたって熱弁をふるった。

 寺島氏はまず2002年開催の第1回「IT Japan」にも登壇したというエピソードを紹介。「この10年間だけでもITという言葉の意味合いは大きく変質した。さらに過去にさかのぼれば、冷戦終結がITの発展に大きな影響を与えている」と話した。インターネットが民間に幅広く開放されたのは1990年頃で、冷戦期に米国が軍用技術として開発を進めた「パケット通信方式」が基になっている。寺島氏はこうした経緯に言及しつつ、冷戦終結という世界構造の転換が軍用技術の民間開放を促し、今日のITの発展につながったという認識を示した。

世界構造とITは密接不可分

 今後も、世界構造とITは深い関係が続きそうだという。米国と旧ソ連の2極が対立した冷戦の終結後に「米国は『IT革命』を旗印に掲げ、指導層の間では“米国1極支配”という世界観が広がった」。しかしその後、米国同時多発テロやリーマン・ショックなどが起き、「今では国際会議などの場で米国1極支配なんて言う人はいなくなった。多極化しているのか、あるいは極構造で世界をとらえる時代そのものが終わったのかもしれない」と話した。

 インターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及を背景に、中東諸国で政権交代が相次いだ「アラブの春」にも触れた。「『相互依存の過敏性』というべき現象は、社会のあらゆるところにITが組み込まれた結果だ。必ずしも従来の秩序が崩れて混乱しているといるわけではなくて、ITによって新たな“全員参加型秩序”が生まれている」と解説した。経済活動の面でも、アジア圏でITによるつながりを軸にした新たなネットワークが生まれている事実を、データを引きながら示した。

 一方で、ITは望ましい変化だけではなく、個人情報の不適切な扱いなどネガティブな現象をもたらす可能性があることにも言及。「健全なIT社会を発展させていくために、今後10年でやるべきことは多い。10年たった頃にまたIT Japanで登壇したい」と話して基調講演を締めくくった。