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写真●日立製作所の渡部 眞也執行役常務(写真:中根祥文)
写真●日立製作所の渡部 眞也執行役常務(写真:中根祥文)
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 「ここ1、2年でビッグデータに関心を寄せる企業が増えてきている。ただし、ビッグデータの利活用によって企業が新しい価値を得るには、三つの要素が欠かせない」。日立製作所の渡部 眞也氏(執行役常務 情報・通信システムグループ 情報・通信システム社CSO)は、日経BP社が東京・品川プリンスホテルで開催しているイベント「IT Japan 2012」の講演で、こう述べた(写真)。

 渡部氏が挙げる三つの要素はいずれも、ビッグデータの利活用プロセスの構築時に求められるものになる。具体的には(1)ビッグデータの利活用の対象となる業務の知識、(2)ビッグデータを処理するための基盤技術、(3)データの分析やシミュレーションを行う際のデータサイエンスに関するノウハウ、である。

 「これら三つを掛け合わせることで、収集、蓄積、抽出、分析、有効活用というビッグデータ利活用のプラットフォームができ、新しい知識や気付きが得られるようになる」と、渡部氏は続ける。

2008年以降、三つの要素を高めてきた

 渡部氏によると、日立製作所では2008年以降、これらの三つの要素を高める取り組みを続けてきたという。(1)の業務知識は、企業の基幹システムと社会インフラシステムの両分野でビッグデータ利活用システムの開発を通して蓄積してきた。

 (2)の基盤技術については、ストリームデータとバッチジョブの両方の処理ができるクラウドサービス「vRAMcloud」を2012年3月に開始。2012年5月には、東京大学と共同開発した超高速データベースエンジン「Hitachi Advanced Data Binder」の提供を開始した。

 最後の(3)のデータサイエンスに関するノウハウは、研究と実践を通して蓄積してきた。2008年から日立研究所と共同で、実業務で得られる大量データを分析してナレッジを抽出する「KaaS(Knowledge as a Service)」の研究開発を推進。その成果を踏まえて過去数年で15プロジェクトに適用して、ブラッシュアップしたという。

データ分析マイスター40人を擁する

 三つの要素を高めることと並行して、日立製作所は「ビッグデータの利活用に向けた全体プロセスを体系化して、提供できるようにしている」(渡部氏)という。具体的にはデータ活用のビジョン、活用シナリオの策定、実用化検証というプロセスを踏む。それらを経た上でシステム導入に取り掛かるようにする。

 プロセスの体系化に合わせて、データ活用のビジョンから実用化検証までを統括する「データ・アナリティクス・マイスター」も養成。データ分析の経験者40人がマイスターとして、ビッグデータ利活用のプロセスをコーディネートして、システム化に結び付ける。

 「マイスターとは別に、データサイエンスに関するノウハウを持つ要員が200ほどいる。さまざまなプロジェクトに現在携わっていて、稼働状況は100%に達している」(渡部氏)という。

新しい価値の協創を目指す

 ビッグデータの利活用の目的は、ユーザー企業が新しい価値を生み出すことだ。渡部氏は、「新しい価値は、大量データを集めて分析することと、異質な情報を組み合わせていくことで、生み出せる」と見ている。

 実際に日立製作所の社内でも、新しい価値を生み出すためにビッグデータの利活用を進めている。中でも、大量のデータを集めて分析する試みをしているのがメンテナンス業務だ。例えば、イギリスで運航している日立製の鉄道車両のメンテナンス業務では、車両にさまざまなセンサーを取り付け、リアルタイムに大量のデータを取得し、部品点検や予防保守に役立てる。

 世界100カ所ほどで稼働している日立製のガスタービンのメンテナンス業務でも、今年1月から適用を始めている。ガスタービン1基につき数百のセンサーを付けて、日本の監視拠点に集約。「1日がかりだった障害検知が数時間で済むようになった」と、取り組みの効果を語る。

 もう一方の、異質な情報を組み合わせる例として渡部氏が挙げたのが、センサーから集めて分析した人の流れを示す情報に、災害シミュレーションの情報を組み合わせるというもの。「さまざまなデータを掛け合わせることで、施設の改善や都市・防災計画に役立てられる」と、渡部氏は説明する。

 渡部氏は講演の最後に「企業ビジネス、社会インフラ、スマートシティと、ビッグデータの適用範囲は広い。企業や個人、社会の夢をITで実現できるように、新しい価値を協創していきたい」と締めくくった。