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写真●マーク・マクドナルド 米ガートナー エグゼクティブ プログラム グループ バイス プレジデント兼ガートナー フェロー
写真●マーク・マクドナルド 米ガートナー エグゼクティブ プログラム グループ バイス プレジデント兼ガートナー フェロー
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 「ITが目標としてきたものは過去40年以上にわたってすべて達成できてきた。しかし今の時代、こうした“目標達成ゲーム”の本質(ルール)自体が変わりつつある。当然、われわれもこれに合わせて変わっていく必要がある。こうした本質の変化を見極められずに今まで通りのやり方で成功できるだろうと考えるのは、太った人がドーナツショップに行って『もっとスマートな食べ方をすればやせられる』などと考えるようなものだ」---。

 ガートナー ジャパンは2012年10月3日から5日まで、都内でカンファレンスイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2012」を開催している。その中の一つ、「CIO アジェンダ 2013」と題したセミナーセッションで米ガートナー エグゼクティブ プログラム グループ バイス プレジデント(VP)兼ガートナー フェローのマーク・マクドナルド氏(写真)は、開口一番こう切り出した。

 「かつて、ITの目標は『ビジネスプロセスの自動化』だったときがあった。自動化できれば世界がより良くなるだろう、と。それが成功したら、次は『プロセスの統合』である。統合できればさらに世界が良くなる。それを終えたら次は『Webやインターネットの統合』だ。このようにしてIT部門はこれまで重要な目標をすべて達成してきた。しかし、現在の企業が取り組むべき目標達成ゲームは、もはやIT主体のゲームではなく、“テクノロジー主体のゲーム”に変化しつつある」(マクドナルドVP)。

企業価値をいかに増幅させるかが新しいCIOの役割

 マクドナルドVPによれば、ITと同氏が定義するところの「テクノロジー」は似ているようで本質的に異なるものだという。「身近な例でたとえるなら、ITは企業が価値を生み出すイネーブラー(enabler)であり、テクノロジーはそうした企業価値を増幅するアンプ(amplifier)に相当する。そしてこれからの時代、より求められていくのはアンプの方だ。生み出した価値をいかに増幅できるかがCIO(最高情報責任者)の腕の見せ所となる」。

 同氏は、一般的なアンプが持つ「増幅」および「フィードバック制御」「歪みの低減」といった機能と対比させながら、テクノロジーについての説明を進めた。「アンプの中にはただ入力信号を大きく増幅すればいいというものもある。例えば火災警報器が出す音のようなものだ。現在、ソーシャルや電子マーケティングなどで行われていることの多くもこれと同様で、フィードバックがない“ただの騒音”になっている」(マクドナルド氏)。

 「昨年、大手清涼飲料水の会社が100万ドル以上をかけてFacebook上でマーケティングを実施した。ところが、これによる売り上げ増加はゼロに等しかったという。これなどはまさに騒音であり、信号の使い方が根本的に間違っていた典型例といえる。その直後に大手コーヒーショップチェーンが後追いで実施したキャンペーンでは、顧客に対するたった1通のメール送信で清涼飲料水メーカーを圧倒的に上回る効果を上げていた。このように『信号とフィードバックの組み合わせで新たな顧客体験を定義できるか』が重要なポイントとなる」。

 マクドナルド氏はまた、ガートナーが今回のカンファレンスイベント全体を通じて訴えている「Focus」(着目する)、「Connect」(つなぐ)、「Lead」(導く)という三つのキーワードによる視点が、テクノロジーによる企業価値の増幅においても非常に大事な役割を果たしていることを強調した(関連記事:「クラウドなど“四つのITパワー”が革命を起こす」、ガートナーSymposium基調講演)。

 「多くの企業はより安く商品やサービスを提供することを第一主義として掲げているが、その基準だけで勝負したら、トップに立てるのはたった1社しかない。そうではなく、顧客の様々な要素に着目し、ソーシャルメディアやモバイルデバイスなどを活用して『顧客体験』を増やし、必要とあれば組織改革なども断行する。こうすることで価格競争でトップに立てなくても顧客満足度を高め、企業価値を増幅することが可能になる。そのための戦略立案がCIOに求められていく」。

 具体的に、マクドナルド氏はITとテクノロジーの本質的な違いがよくわかるケースとして、米国の機器製造メーカーの事例を紹介した。「その会社では、顧客から『いくつも製品を発注した時にどの箱に何が入っているか分からないから何とかしてくれ』という要望を受けていた。この課題に対して従来のIT的答えは『わかりました。ではデータベースから引っ張ってきて細かい梱包リストを付けましょう』となるだろう。中身が見えないままそんなリストを見せられても顧客の不満はほとんど解消できない」。

 「一方、そのメーカーが実行したのは、たった10ドルのデジカメを使って製品出荷前に箱の中身の写真を撮り、顧客に対して先にメールで送るというアイデアだった。これだけで顧客は大満足だ。IT型思考は、ピーナッツバターをパンに塗り広げるようにリソースを均一に提供することを是としている。これでは量が少なく不満を感じる顧客が多く出てしまう。これに対して、テクノロジー型思考では、最適化を図って顧客満足度を高めることを第一とし、そのために新しいデバイスやサービスなどをフル活用することを考える。いかに両者が異なるかが分かるだろう」。

 最後にマクドナルドVPはまとめとして、「企業は自社が旧来型のIT組織なのか新しいテクノロジー組織であるのかをはっきりさせなければならない」とし、テクノロジー組織であるならば顧客満足度の向上に積極的に取り組むなど「外向きの視点」を持つ必要があること、そのためにCIOは適切なソーシャル戦略やモバイル戦略を立てなければならないことなどを述べてセミナーセッションを締めくくった。