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写真1●活発な議論が交わされたパネルディスカッション「持たないプライベートクラウド~その実力と課題を探る」(写真:新関雅士、以下同)
写真1●活発な議論が交わされたパネルディスカッション「持たないプライベートクラウド~その実力と課題を探る」(写真:新関雅士、以下同)
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写真2●東京海上ホールディングス 執行役員 IT企画部長 澁谷裕以氏
写真2●東京海上ホールディングス 執行役員 IT企画部長 澁谷裕以氏
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写真3●インターネットイニシアティブ 執行役員 マーケティング本部長 松本光吉氏
写真3●インターネットイニシアティブ 執行役員 マーケティング本部長 松本光吉氏
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写真4●アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 インフラストラクチャ コンサルティング グループ パートナー 白石昌靖氏
写真4●アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 インフラストラクチャ コンサルティング グループ パートナー 白石昌靖氏
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写真5●モデレータを務めた日経BP社 コンピュータ・ネットワーク局 局長 桔梗原富夫
写真5●モデレータを務めた日経BP社 コンピュータ・ネットワーク局 局長 桔梗原富夫
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 東京ビッグサイトで開催されている「ITpro EXPO 2012」において2012年10月11日、「持たないプライベートクラウド~その実力と課題を探る」と題したパネルディスカッションが実施された(写真1)。

 参加したのは東京海上ホールディングス、アクセンチュア、インターネットイニシアティブ(IIJ)の3社。ユーザー、コンサルタント、提供者、それぞれの立場からクラウドの意義や課題、注意点などについて議論が交わされた。

 モデレータを務めた日経BP社コンピュータ・ネットワーク局 局長の桔梗原富夫は冒頭で、クラウドについて「一過性の流行ではなく企業のITインフラとして定着してきた」と説明。クラウドの企業導入が進む現状を踏まえ、「改めてユーザーがクラウドに期待するものは何か」と切り出した。

 東京海上ホールディングスの澁谷裕以執行役員IT企画部長(写真2)は、自社の情報システム人員の2割がIT基盤の運用に携わってる現状を挙げつつ「そもそもコンピュータはユーザーに大きな負担をかける道具だった」と話し、ハードウエアの設置やソフトウエアのバージョンアップなど運用にかかる負荷の重さを指摘した。そのうえで、「プラグをソケットにさせば使える電気のような感覚でコンピューティングパワーを利用できるクラウドサービスは、我々にとって歓迎すべきことだ」と、運用負荷の軽減が大きいとした。

 クラウドサービス「IIJ GIO」を展開するインターネットイニシアティブ(IIJ)の松本光吉 執行役員マーケティング本部長(写真3)も、数万台のサーバーを運用する立場から、「ソフトウエアは次々と新製品が出てくる。1年ごとに適材適所のシステムを検討しなければならない。当社のようなサービス提供事業者でもシステム運用は大変。ユーザー企業にとってはなおさら大きな負担のはずだ」と同調する。

 企業や官公庁のITインフラ基盤のコンサルティング業務に携わるアクセンチュアの白石昌靖 テクノロジーコンサルティング本部 インフラストラクチャ コンサルティング グループ パートナー(写真4)は、「ユーザー企業は新しいビジネス、特に海外での展開を進める際のITインフラとしてクラウドがキーワードになっている」とユーザー企業の動向を紹介した。

ブラックボックスがユーザー企業の不安要素

 セキュリティの問題についても取り上げられた。日経BP社の桔梗原局長(写真5)が、多くのユーザーがクラウドサービスのセキュリティに不安を感じているという日経コミュニケーションの調査結果を紹介。アクセンチュアの白石パートナーは「クラウド事業者によってバックアップ方法一つとっても違う。運用面で不安を感じるユーザーは多い」と話す。

 「セキュリティ対策は充分に実施している。ただクラウドサービスはユーザーから見えないブラックボックスの部分がある。これが不安につながっているのではないか」とIIJの松本執行役員は推測する。これに対して東京海上の澁谷執行役員は「当社ではクラウドサービスの契約書に必ず次の二つの内容を盛り込むようにしている。データセンターの運用状況の実地確認ができることと、情報漏洩などが発生した場合に原因究明のために必要な情報のすべてを提供してもらえることだ」と対策を披露。一方で「例えばWebアプリケーションの脆弱性対策などはクラウド事業者の方がユーザー企業よりしっかりしているはず。狭義のセキュリティ対策について不安は感じていない」と話した。

持たないプライベートクラウドが進展

 プライベートクラウドとパブリッククラウドの取り扱いについても議論が及んだ。東京海上の澁谷執行役員は「クラウドの利点はコンピュータの所有と運用という二つの負荷を減らすためのものだと考える。その点でプライベートクラウドは本来のクラウドとは少し違うと感じる」と見解を示した。IIJの松本執行役員は「パブリッククラウド利用の40%がプライベートアドレスを用いている」という現状を明らかにし、「社内システムとの連携が欠かせなくなっている」とクラウド利用の状況を解説。「こうした状況はパブリッククラウドというよりも“持たないプライベートクラウド”だ」とし、こうした状況が進んでいることを説明した。

ユーザー企業とクラウド事業者はパートナー

 最後にクラウド利用における注意点に話が及ぶと、「ユーザー企業とクラウド事業者の間で意識をよく合わせておくことが重要」と三者の意見は一致した。東京海上の澁谷執行役員は「透明性を確保することが大切だ。ユーザー企業もクラウド事業者の運用体制などを知る努力をしなければならない」と語り、「顧客に対して全責任を負うのはあくまでユーザー企業。もし情報漏洩などの問題が発生したとき、クラウドなので運用状態がわかりませんでした、では許されない」と強調した。

 IIJの松本執行役員はソフトウエアの料金体系が、クラウドサービスを提供するうえで不利だと指摘。「ユーザーと一緒になって変えていきたい」と語った。

 「クラウド上で構築中のシステムに性能問題が発生した場合、クラウド事業者が提供するITインフラの問題か、ユーザーのアプリケーションの問題か、どちらの可能性もあるため、もめやすい。お互いの責任の所在を明確化しておくことが必要だ」とアクセンチュアの白石パートナーは話す。そのうえで「クラウドサービスとはハードウエアやアウトソーシングなど従来の製品・サービスを抱き合わせたもの。ユーザー企業とクラウド事業者は長期間のパートナーとして付き合っていかなければならない」と結論付けた。