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写真●国際公共政策研究センターの田中直毅理事長(撮影:新関雅士)
写真●国際公共政策研究センターの田中直毅理事長(撮影:新関雅士)
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 「政府のマネージメントにイノベーションが不可欠な時代がついに到来した」---。こう語り始めたのは、国際公共政策研究センター理事長の田中直毅氏だ(写真)。2012年10月10日から12日にかけて東京ビッグサイトで開催された「ITpro EXPO 2012」内の企画講演セミナー「番号制度カンファレンス--国民が主役のマイナンバー制度に向けて--」の冒頭、「マイナンバー制度によるイノベーション」と題した基調講演の一コマである。

 政府のマネージメントにイノベーションが不可欠になったとする根拠として田中理事長は、日本の財政赤字が累積し続けている現状を挙げた。「もし増税をしない、あるいは多少増税したとしても我々の社会が必要とする需要は高齢化と共に増大していき、よほど大きなイノベーションが実現できない限り、日本社会の破綻シナリオがやってくる。しかしながら、税金をどんどん引き上げるようなことはできない」(田中氏、以下同)。

 田中理事長はここで、日本を代表する作家の松本清張や司馬遼太郎(共に故人)がかつてどれほど高率の税金を納めていたかというエピソードを引用した。「当時彼らは、頼まれて原稿用紙を追加で一枚書くと、それに対する原稿料のうち92パーセントを納税する必要があり、わずか8パーセントが手元に残るという状況だった。それでも彼らはおそらく“書くことに対する責務”として原稿を限界まで書き続けていたが…」。

 こうした高い税率の下でも働き続けられたのは、「彼らだからできたこと」と田中氏は語る。「普通の人間はバカバカしくて仕事をする気にならないだろう。ではどのくらいなら税率と自分の行動の関係を意識しないで済むようになるか。税金が働く人の勤労意欲を損なうポイントがどこかをこれから議論していく必要があるだろう」。

 ただし、「適切な税率のポイントが見つかったとしても、今の政府のありようを前提とするなら、我々の社会は相当惨めなものになる」と田中氏は断言。「やはり民間企業と同じように政府のマネージメントでもイノベーションを起こさざるを得ない」と主張した。

 「ここで、民間企業の経営者なら、まず売り上げを増やすことで利益を増やそうと考えるが、日本という国の場合それは簡単ではない。それが無理なら次は総費用をどのように削るかということになる。そこで、民間企業と同じように政府でもビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)、すなわち経営母体の総体にわたる再構築が必要となる」。