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明治大学農学部の小沢聖特任教授
明治大学農学部の小沢聖特任教授
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実証実験で栽培しているトマト
実証実験で栽培しているトマト
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ビニールハウスの入り口付近にある「無線内蔵データコントローラ」。下にある黄色いポンプが水や肥料を吸い上げ、農地に供給する
ビニールハウスの入り口付近にある「無線内蔵データコントローラ」。下にある黄色いポンプが水や肥料を吸い上げ、農地に供給する
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「ZeRo.agri」のWindows 8アプリ
「ZeRo.agri」のWindows 8アプリ
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 明治大学は2013年5月28日、日本マイクロソフトなどIT企業3社と共同で進めている、ICTを活用した農業の新たな取り組みを公開した。適量の肥料を溶かした水で農作物を栽培する「養液土耕栽培」の実証実験である。明治大学農学部の小沢聖特任教授はその内容を、「ベテラン農家のノウハウをデータ化し、さらに次のアクションをするための仕組みをICTで整える」と説明する。

 実証実験は、明治大学が2012年4月神奈川県川崎市に開設した黒川農場にあるビニールハウスで実施している。トマトを栽培している500平方メートルのスペースに、土壌センサーや日射センサー、カメラなどを設置。センサーなどから得た情報を基に、トマトに供給する水や肥料の量を調節するシステム「ZeRo.agri」を開発した。

 各種センサーが計測したデータは、ビニールハウスの入り口付近にある「無線内蔵データコントローラ」と呼ばれる装置が、無線LAN経由で収集する。無線内蔵データコントローラは集約したデータを、3G回線経由で10分おきに「ZeRo.クラウド」と呼ぶサーバーに送信する仕組みになっている。

 ZeRo.クラウドは、日本マイクロソフトのクラウドサービス「Windows Azure」を使って構築。ZeRo.クラウドのサーバーアプリケーションがデータを分析し、水や肥料をどの程度供給するかの指標を作成する。計測したデータや分析結果は、専用のWindows 8アプリから参照できる。アプリはタッチ操作に対応している。

 もし、肥料入りの水の供給を増やした方がよれけば、アプリの設定値を変更する。その際はキーボードなどは使わず、タッチ操作で変更できるようにしている。「農家は高齢者が多く、キーボードは敬遠される。タブレットであればアレルギー反応は少ない」(ルートレック・ネットワークスの佐々木伸一代表取締役社長)。

 数値を変更すると、その情報は無線内蔵データコントローラに送られる。無線内蔵データコントローラは、下部に接続されているポンプを制御し、農場に供給する水や肥料の量を自動調節する。

 このような仕組みを整えることで、農家の経験則やカンに頼ってきた手法をデータ化。農作物の収穫量を増やし、品質を高めることを目指す。小沢特任教授は、「収穫量を2~3割増やせる」とみる。

 明治大学はこの仕組みを2012年8月に稼働させ、データを収集してきた。明治大学とともにこの取り組みを実施しているのは、日本マイクロソフト、ルートレック・ネットワークス、セカンドファクトリーの3社。日本マイクロソフトはクラウドサービスを、ルートレック・ネットワークスは無線内蔵データコントローラとサーバーアプリケーションの開発を、セカンドファクトリーはWindows 8アプリの開発をそれぞれ担当した。

 日本の農業は、就業人口の現象や、高齢化が進んでいる。さらに農業による環境汚染も進んでいるという。「肥料に含まれる窒素の50%は硝酸となって環境汚染の原因となっている」(小沢特任教授)。

 そこでこの実証実験で着目したのが、養液土耕栽培。水に肥料を含ませて農作物の根の部分に供給することで、肥料の過剰な使用を防ぐ。イスラエル、オランダ、韓国などの国で盛んで、開発途上国でも取り組む動きが活発になっているという。

 しかし日本ではあまり定着していない。その理由について小沢特任教授は、「養液土耕栽培は、土中水分量や灌水量などの数値管理が大事。しかし日本の農家は数値管理があまりできていない」と指摘する。

 明治大学と3社は、関心のあるIT企業にも実証実験への参加を募り、このシステムをプラットフォームとして利用者の拡大を目指す。明治大学とルートレック・ネットワークスは岩手大学とともに、農業水産省の「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」に採択され、今年度から3年間の予定で、岩手県での実用化に取り組む。