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写真●サイバーエージェントの藤田晋社長(撮影:井上裕康)
写真●サイバーエージェントの藤田晋社長(撮影:井上裕康)
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 「サイバーエージェントでは創業以来、インターネット業界で新規事業を創出する“仕掛け”作りに取り組んできた。開業から16年が経過し、この仕組みはかなり完成されてきた。今日は、新サービスを生み出す当社のシステムを紹介したい」──。

 IT Japan 2013の最終日となる2013年7月5日の基調講演に、サイバーエージェントの創業者で同社代表取締役社長の藤田晋氏(写真)が登壇。同社が、新しいWebサービスを創出し続けるために設けている社内制度について、惜しみなく語った。

 藤田社長自身が「国内上場企業の中で、最も新規事業を投下している企業」と自負する同社には、新サービスのアイデアを見つけるための「仕組み」と、アイデアを「ベルトコンベヤーに乗せるがごとく」(藤田社長)、速やかに事業化するための「仕組み」が存在する。

 まず、社員からのアイデア出しを促す社内制度として、新規事業プランコンテスト「ジギョつく」がある。

 半年に1回、社員から新サービスのアイデアを募り、優勝者には100万円の賞金を出す。「2004年に同制度を開始した当初は、あまり盛り上がらなかった。しかし、アイデアを出すことを高く評価する、優れたアイデアを出した社員を新規事業の重要なポジションにアサインするといったことを繰り返した結果、今では1回に800件以上の事業案が集まるようになった」。

 2012年には、技術者が参加するアイデアコンテスト「モックプランコンテスト」を開始した。新サービスの試作品(モックアップ)を基に入賞作品を決定するコンテストであり、社内だけでなく、社外のエンジニアや学生からの応募も受け付ける。

 社員だけでなく、役員や事業責任者クラスの社員によるアイデアコンテストも年に1回実施している。

 「あした会議」と呼ばれる同コンテストでは、1泊2日の合宿を行い、新規事業案をトーナメント方式で競う。「社員からのアイデアに“ダメ出し”する立場の上層部の人は、さぞかしすごいアイデアを持っているのだろう、という部下目線で同制度は作られた」という。

 「ジギョつく」や「あした会議」で出た新サービスのアイデアを、実現可能なレベルに詰める制度もある。

 合宿イベント「詰め切りセンター試験」では、社員がチームに分かれて、選択式のセンター試験の問題に解答する要領で、アイデアの実現方法を絞り込んでいく。実現可能な段階まで詰め切ったチームほど高い点数がつく。「各チームの成績順位は合宿先の壁に張り出される。写真を撮ってSNSにアップされた時にビリだと恥ずかしいので、社員は皆、かなり本気で挑んでくる」。

新規事業を育てていく数々の社内制度

 新サービスのアイデアを実行する社内制度としては「K点チェック」「信号制度」「ダカイゼン会議」を設けている。

 K点チェックは、新サービスの完成度が一定レベルに達しているかを、専任部隊が経験から来る感覚で評価する仕組みである。「ネット事業の特徴として、一定のラインを越えたクオリティーでリリースすれば、あとは運用しながら改善できる。しかし、リリース時点で一定レベルを下回っていると、その後どんなに手を加えてもうまくいかない」。

 K点越えを果たしてリリースされたサービスについては、その後の改善度合いを信号制度でチェックする。サービスのクオリティーを、「赤信号(まだまだ)」「黄信号(あと一息)」「青信号(OK)」でランク付けし、ランクに応じてユーザーの誘導数をコントロールする。

 さらに、サービスリリース後に継続して改善、問題解決を行っていくための施策として、「ダカイゼンルーム」でダカイゼン会議を行う。ダカイゼンとは、打開と改善を組み合わせた同社の造語。社内のダカイゼンルームとして、「打開の間」と「改善の間」という専用会議室を設置。メンバーで会議の意図を明確にしながら、改善案と打開案を出し合うために利用する。

新サービスを躊躇なく投入する制度がある

 新規事業を始めることには、多かれ少なかれ経営リスクが伴う。同社が次々と新サービスを投入できるのは「事業撤退ルール」の存在が大きい。

 同社には、日本プロサッカーリーグの構図を模した「CAJJプログラム」という制度があり、新規事業の昇格・撤退ルールを規定している。

 同プログラムでは、新規事業をJ1~J5の5リーグに区分。リリース当初はJ5からスタートし、粗利が月に500万円を超えたらJ4昇格、粗利が月に1500万円で黒字化したらJ3昇格、四半期の営業利益5000万円達成でJ2、四半期の営業利益1億円達成で、晴れてJ1入りとなる。

 逆に、2四半期連続で減収減益となった事業や、リリースから1年半以内に黒字化できなかった事業は撤退としている。

 「新規事業の立ち上げに関わった社員は、取引先の手前、事業を撤退することはなかなか言い出しづらい。事業に対する思い入れもあり、何とかなるのではないかと思い込んでしまいがち。だが撤退ルールを明確に設けることで、感情に流されず、経営リスクを限定的にできる」。

 藤田社長はこう説明した。