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写真●質疑応答時間にはたくさんの質問が寄せられた
写真●質疑応答時間にはたくさんの質問が寄せられた
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 ゲーム開発者向け会議「CEDEC 2013」では、一般にはまだなじみの薄い「ナラティブ」をテーマにしたセッションが行われた(写真)。モバイル&ゲームスタジオの遠藤雅伸氏とスクウェア・エニックスの簗瀬洋平氏による「ナラティブはここにある!国産ゲームに見るナラティブとは?」と題するセッションである。

 もともと物語性という意味を持つナラティブは、今年春に開催された米国のゲーム開発者向け会議「GDC2013」で話題になったキーワードであり、専門のセッションが設けられるほどだったという。ナラティブがどのようなものかというだけで多くの時間が割かれるほど表現が難しい概念だが、ごく簡単に言えば、「ゲームでの体験を自分の経験として感じられるかどうか」(簗瀬氏)ということになる。

 ただ、この「ナラティブ」が、完全に米国発かというと「そうではないだろう」というのが登壇者2人の考えであり、国産のゲームにもその要素が多分に含まれているというのだ。遠藤氏は「米国発の言葉に対する拒否反応を外すために、本セッションを企画した」とする。

 セッションでは、「ドラゴンクエスト」「ときめきメモリアル」「パックマン」「ゼビウス」「ファイナルファンタジー」など多くのゲームタイトルを紹介しながら、遠藤氏と簗瀬氏が「このタイトルはナラティブかどうか」を議論していった。

 遠藤氏によれば、米国のビジネスが上手なところは、的確な方法論や表現を創作し、トレンドを作り出すところである。ナラティブを担いでセッションに仕立てるところもそうだが、例えば「3つのストーリーラインを組み合わせることで目標に達する」ことを、メルセデス・ベンツのエンブレムのスリー・ポインテッド・スターに重ね合わせて、「メルセデスメソッド」と表現する発表がGDC2013にはあったという。ただし、この手法は既にドラゴンクエストで用いられたものであり、手法としては真新しいものではない。しかし、こうした表現を用いることで、あたかも最初に手掛けたという印象を与えているというのだ。遠藤氏は来場者に対して「ぜひ、皆さんも自身の手法には名称をつけて発表してほしい」と呼びかけた。

 2人の分析は、この「ストーリーラインの組み合わせ」について、さらに深く掘り下げられる。この方法は、断片的な情報をゲームプレイヤーに与えて、プレイヤー自身が自ら答えを導き出そうというプロセスがカギとなる。「自分の決断で下した解決策だから、自分のストーリーとして認識される」(簗瀬氏)。しかし、単に選択肢が多ければナラティブかと言えば、そうでもない。「好き勝手にやることとは違う」(簗瀬氏)というのだ。さらに、濃いストーリーがあればいいわけでもなく、「主人公とプレイヤーが一致していること、期待を裏切らないことが重要」(同氏)。

 そこで引き合いに出したのが、簗瀬氏がGDC2013で面白いと思った「THOMAS WAS ALONE」というゲームである。どちらかといえばシンプルな印象を受けるゲームだが、リソースをかけなくても深い体験ができるという点で「バランスがとれている」と評価したという。この点が、特に個人開発者の興味を引いているのだという。

 最後に簗瀬氏はナラティブをうまく使うためのコツとして「プレイヤーの期待にちょど応える量の情報を与えること」を紹介して講演を締めくくった。講演後の質疑応答には、たくさんの質問が寄せられ、講演前にはほとんどの人が知らなかった「ナラティブ」への関心が一段と高まったセッションとなったようだ。