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 2013年8月21から23日まで横浜市で開催されているゲーム開発者向け会議「CEDEC 2013」。初日の基調講演は「クリエイターと社会のつなぎ方~アイディアをリアルに」というタイトルで、クリエーターのエージェント業務を手がけるコルク代表取締役社長の佐渡島庸平氏と、AR(拡張現実)の開発ユニット「AR三兄弟」の川田十夢氏が登壇した。

コルク代表取締役社長の佐渡島庸平氏(右)と、AR(拡張現実)の開発ユニット「AR三兄弟」の川田十夢氏(左)。基調講演は対談形式で進められた。
コルク代表取締役社長の佐渡島庸平氏(右)と、AR(拡張現実)の開発ユニット「AR三兄弟」の川田十夢氏(左)。基調講演は対談形式で進められた。
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 まず佐渡島氏がコンテンツビジネスを巡る現状認識を語った。佐渡島氏は講談社で漫画雑誌の編集を手がけ、「バガボンド」(井上雄彦)、「ドラゴン桜」(三田紀房)、「働きマン」(安野モヨコ)、「宇宙兄弟」(小山宙哉)、「モダンタイムス」(伊坂幸太郎)など数多くのヒット作をものにした辣腕編集者だ。佐渡島氏は講演の冒頭で講談社を辞して起業した理由を、「現在は明治維新と同じくらい、時代が大きく変わっている。講談社という大きな器に守られるのではなく、実際に空気を感じて感度を高めて行動したいと考えたから」と説明する。

 その変化をもたらしているのがインターネットだ。インターネットは、まだやっと「幕が開けた段階」という。「道ができて、流通や人の動きができて混乱したため、整理が必要になった。これがYahoo!のようなディレクトリーサービスができた頃で、リアルの交通に例えれば信号や交通ルールができたような段階。それが渋滞するようになって、Googleが出てきた。言わば高速道路の登場だ。現在のTwitterやFacebookのようなサービスはターミナル駅のような交通の要所で、人の流れを変えた。そういった場所に、エンターテインメントの場所が生まれたように、現実の置き換えとは異なる新しい楽しみがこれから生まれてくる」(佐渡島氏)。

 そのための課題としてまず挙げるのが、コンテンツの提供方法などが分断されていること。「マンガや小説、映画、音楽、ゲームを楽しむ時間や予算は共通で、奪い合っている。これまでは、それぞれ別のものとして提供されてきた。それぞれの作り手が提供してきたからだが、それは作り手側の論理であって、利用者側に立っていない。これからは、さまざまな境界線があいまいになる。そこにどう対処するかが課題だ」。次に挙げるのが、「面白さ」の評価基準だ。作り手側が面白いというのは、大抵は絶対値的な評価だが、実際にユーザーが感じるのは親近感などを含めた、面積的な評価になる。作り手が感じる面白さだけではない、もう一つの軸が必要だと語った。

 その回答に対するヒントが、川田氏が手がけている数々のARアプリにあるという。川田氏は「これまで多くのARアプリはカードをかざすと何かが出てくる。ARはそれだけではなく、現実の何かを省略するものだ」と主張する。例えばビームが出るマーカーを出すなら、角度を判定して向きが変えられるようにして、さらに衝突判定を付け加える。顔そのものをマーカーとして、目からビームが出せるようにする。漢字をマーカーにした「カンジフルコンピューティング」では、「朝」の文字だと雄鳥の鳴き声が再生するが、「朝」と「娘」だとモーニング娘。の動画が再生される。マーカーを動かして音量を制御するなど、現実から仮想に働きかけることで、両者の間を融合させている。

マーカーから単にビームが出るだけでなく、2本あれば方向や衝突判定を実施する。
マーカーから単にビームが出るだけでなく、2本あれば方向や衝突判定を実施する。
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カンジフルコンピューティング。マーカーを使って制御し、仮想世界と現実世界を結びつけている。
カンジフルコンピューティング。マーカーを使って制御し、仮想世界と現実世界を結びつけている。
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 この他にも「拡張現実オーケストラ」(阪急百貨店に設置。指揮台の上に立つとBGMが止まり、指揮棒をふるうとそのペースに合わせてオーケストラの演奏が再生される)や「自販機AR」(コカコーラの自動販売機にかざすコンテンツ)など、多様なARアプリを紹介した。このようなコンテンツを作るには新しい技術とストーリーを作る人材が必要で、「よく比喩として人生はゲームなどと言われるが、日常生活のすべてで主人公になれて、比喩ではなく人生をゲームにできる。開発者と共同で実現していきたい」(佐渡島氏)と語って締めくくった。