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写真1●ビッグデータ活用を医療・健康・福祉サービスに活かすと主張する神奈川県知事の黒岩祐治氏
写真1●ビッグデータ活用を医療・健康・福祉サービスに活かすと主張する神奈川県知事の黒岩祐治氏
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写真2●科学的なエビデンスに基づく西洋医学に、漢方医学の未病治療という視点を統合させるための情報活用基盤の構築について説明する黒岩氏
写真2●科学的なエビデンスに基づく西洋医学に、漢方医学の未病治療という視点を統合させるための情報活用基盤の構築について説明する黒岩氏
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 クラウド医療・健康・福祉フォーラム実行委員会(委員長:東京医科歯科大学教授 田中博氏)は8月30、31日の両日、東京医科歯科大学内でクラウド医療・健康・福祉フォーラムを開催。医療従事者がクラウドコンピューティングをどのように活用し、医療・健康・福祉サービスの質を向上させていくかを、さまざま視点で議論した。

 初日の基調講演では、神奈川県知事の黒岩祐治氏が、「神奈川県から医療の最適モデルを ~医療イノベーションが目指すもの~」と題して、超高齢化社会を乗り切るため、ヘルスケア・ニューフロンティアを目指す神奈川県の取り組みについて講演した(写真1)。

 黒岩氏は冒頭で、神奈川県の2050年における人口ピラミッドを示し、85歳以上が多数を占めることを指摘。「超高齢化社会では従来の社会システムは通用せず、大改革が求められる。そのために神奈川県は、最先端医療・最新技術の追求による個別化医療の実現と、未病を治すためのライフスタイルの見直し、という2つのアプローチの融合に取り組んでいる」と説明。それらも方策で健康寿命日本一を目指すことで、新たな市場・産業創出につながるという考えを披露した。

 具体的な2つのアプローチは、前者はiPS細胞研究や実証実験を開始したマイカルテなど、後者は衣食農同源や運動習慣奨励など。融合によって、漢方の産業化などが期待できると説明した。

 最先端医療・最新技術の追求という目標に取り組むフィールドが、神奈川県内で認定されている二つの特区である。一つは川崎市・横浜市を中心とした「京浜臨海部イノベーション国際戦略総合特区」。個別化医療、予防医療、再生医療など革新的な医療の実現に向けた研究開発に取り組んでいる。

 もう一つは、2014年に全線開通するさがみ縦貫道路周辺地区で展開される「さがみロボット産業特区」。生活支援ロボットの実用化、普及の促進や関連産業の集積を進める地域活性化のための実証実験フィールドで、ヒト型ロボットだけでなく、センサーで検知・判断してアクションを起こすマシンをロボットと定義し、医療や介護における生活支援ロボット、災害救助ロボットなどの研究開発・実証実験を進めている。

 また、神奈川県が推進するマイカルテ構想は住民が、自らの健康・医療情報を活用するための医療機関から提供を受ける医療情報を含めたPHR基盤。黒岩氏は「いつでも、どこでもスマホで自分のカルテ情報などを閲覧できるようにするのが目標だが、多くの課題がある。全国各地の実証実験を検証してみると、共通の課題は補助金がなくなると施策が停滞すること。持続可能性があるシステムが重要であるため、まずは簡単なところから始めることにした。それがお薬手帳の電子化だ」と経緯を述べた。

 これは、利用者がスマートフォンやタブレット端末にお薬手帳アプリをダウンロードし、保険薬局で処方箋と引き換えにQRコードが印刷された保険調剤明細書を読み込み、服薬情報・履歴を管理するもの。

 「まずは住民に利便性を実感してもらい、その先に自分のカルテ情報を取り込んでいく。カルテ情報活用については、まず個人のヘルスレコードを自分自身で役立てることを目的とする第1ステージと、個人情報を切り離したデータをビッグデータとして活用することの第2ステージ、二段階で考えている」と黒岩氏は説明。これらの施策によって、個別化医療の実現を目指すと説明した。

 一方、未病を治すというアプローチのポイントは、科学的なエビデンスに基づく西洋医学に、漢方医学の未病治療という視点を統合させるための情報活用基盤の構築を意味する、と黒岩氏は説明する(写真2)。

 漢方医学では、人間の体質を8つの「証」に分け、それぞれに適応する治療が行われるが、その分類は一般的に医師の経験則に頼られる。一般には、証を見極めるのは経験値に依存し、処方される漢方薬は生薬で厳密な均一性がないため、エビデンスの収集が難しいとされている。

 「しかし、漢方の処方と効果の情報を大量に集めて処理すること、つまりはビッグデータを活用することで、証も見えてくる可能性があるし、エビデンスも見えてくる。それによって、東西医療の融合も可能になるだろう」と黒岩氏はビッグデータ活用に期待する。身近な健康管理ツールによって収集されたデータに、漢方の「証」にあたる情報、マイカルテによる情報を統合することにより、生活の場で「未病に気付く」「未病を見える化」することが可能だと強調した。

 そして、「クラウド上に集積したビッグデータを解析することによって、新たな健康に関する知見が見えてくる。それが個別化医療の実現につながると同時に、一人ひとりの体質や体調に合わせた“個別化治未病”もできるようになる。こうした取り組みで、未病産業というものを創出できる可能性があり、それこそがアベノミクスの第三の矢(成長戦略)の一つになり得る」と持論を展開し、講演を終えた。