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写真●ベストセラー「統計学は最強の学問である」の著者で統計家の西内啓氏
写真●ベストセラー「統計学は最強の学問である」の著者で統計家の西内啓氏
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 「分析に必要なのは仮説を考えるセンスだ!」「データ分析は特殊技能。人材を育てるのは大変」。データ分析に力を入れる企業が増える昨今、職場でそんな台詞を聞いたことはないだろうか。ベストセラー「統計学は最強の学問である」の著者であり統計家の西内啓氏によれば、どちらも誤解だ。

 東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2013」最終日、開場と同時に満杯になった展示会場内アリーナに統計家の西内啓氏が登壇。「統計学でビッグデータから最善の答えを探す」と題して、統計学的手法がビジネスでも有用であることを説くとともに、データ分析に注力しようとする企業が陥りやすい誤解を紹介し、対策を示した。

 統計学を学びたくて医学部に進学したという西内氏。医療の世界では、「がんで亡くなる人を減らす」といった目的で、統計学的手法によりもっとも効果的と思われるがん予防の施策を探し、試行を重ねるのが一般的だ。ビジネス分野では「会社の利益を増やす」といったまったく異なる目的になるが、「まったく同じように統計学的手法は使える」と西内氏は話す。

 データ分析に注力しようとする企業がつまずきがちなポイントとして、西内氏は「分析に必要なのは仮説を考えるセンスだ」という考え方を挙げる。「何もないところから、いきなり良い仮説を立てるのはかなり難しい。そのうえ、実ははるかに良い仮説の出し方がすでに確立している」として、具体的な進め方の骨子を紹介した。

 まず始めはゴールとなる指標「アウトカム」の定義。「○△の売り上げ」など具体的かつ数値化できるものを選ぶ。次に比較するための単位「解析単位」を決める。アウトカムが売り上げだとしたら、店の売り上げなのか、営業担当者別の売り上げなのか、商品別の売り上げなのかを決めて、望ましいケースと望ましくないケースを比較できるようにする。

 次にやることは、望ましいケースと望ましくないケースとの違いを表す特徴の洗い出しだ。解析単位が店だとすれば「店舗面積」「駅からの距離」「店員の接客レベル」などになる。

 知りたいのは、挙がった特徴のうち、どれが売り上げにもっとも影響を与えているかである。これを「説明変数」と呼ぶが、統計学でメジャーな手法の一つ「多変量解析」を使えば、簡単に突き止めることができる。

 「これはリサーチデザインという分野で研究され、既に確立された方法。センスなど問わなくとも、段階を踏んで進めれば、有望な仮説にたどり着ける」と西内氏。後はこの仮説をもとに一部の店舗で試行して、効果を検証すればよいわけだ。

 講演の中でもう一つ、西内氏が挙げた問題点がある。「データ分析は特殊技能で人材を育てるのが大変」という認識だ。企業向けの研修も手がける西内氏だが、「統計学的手法はここ数十年あまり変わっていないが、分析の道具はハードもソフトも日進月歩。誰でも使えるものになってきている。早晩多くのビジネスパーソンが多変量解析くらいはこなせるようになるはず」と語った。