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 IT PRo読者の知恵をお借りしたいと考え,筆を取った。日経コンピュータでは1月9日号(新春号)で,「甦れ!日本のIT~ユーザー・ベンダー・識者が考える再生計画(仮)」とのテーマで特集を組む。そのためのアイデアを皆様からいただきたい。

 この特集では,日本の情報サービス産業全体の問題は何か。それを脱し,国産ITベンダーが繁栄するにはどうしたらいいのか。国産ITベンダーの競争力強化とともに,ユーザー企業の情報化推進力を向上させるための方策は何か・・・などを明らかする。具体的に取り上げるテーマは大きく分けて4つ。(1)なぜIT業界に集まる学生が減っているのか,(2)世界に通用するソフトウエアが存在しないのはなぜか,(3)国内企業の収益が回復しているのにもかかわらず,ユーザー企業のIT投資が増えない理由は何か,(4)IT業界を盛り上げるためどのような国策や教育改革が必要か---である。

 経済産業省によれば,日本の情報サービス産業は13兆円規模,従業員数は57万人と,大きな産業になっている。「情報サービス産業は21世紀の基幹産業である」。社団法人情報サービス産業協会(JISA)の棚橋康郎会長はこう明言する。記者も“ITの仕事”は重要であり,今後も繁栄してほしいと切に願う。ユーザー企業がITを使いこなし,経営に役立てる成功事例を一つでも多く,誌面で紹介したい。

 余計なお世話と言われそうだが,記者の期待が大きいだけに,日本のIT業界に一抹の不安を感じることは少なくない。例えば,IT業界に魅力を感じる若手が減っているのではないかと心配だ。東京大学大学院工学系研究科の大場善次郎教授は「卒業後に就職するであろうIT業界に夢を持てないせいか,情報工学部に対する学生の人気は確実に落ちている」と打ち明ける。先日,あるユーザー企業のCIO(最高情報責任者)と雑談していたときにこんな話も耳にした。「大学を卒業する長男がIT業界だけには就職したくないと言ってきた。ちょっとさびしい気がしたよ」と。IT業界に魅力を感じて就職する人口が減れば,絶滅はしないまでも,日本のIT産業が繁栄することは難しい。

 日本発ITプロダクトがないことにも,さびしさと不安を感じる。いうまでもないが,日本の企業情報システムを構築するために導入するOSやミドルウエア,業務パッケージのほとんどが欧米製品である。JISAの調査によれば,ソフトウエアの輸入額は1兆円に対し,輸出額は800億円しかない。しかも,輸出のほとんどをゲーム用ソフトが占める。米国の有識者もこれに関しては疑問を感じている。米MITスローン大学のマイケル・クスマノ教授は,「The Puzzle of Japanese Software」と題した論文で,こう述べる。「日本のITベンダーは他国に負けない品質管理能力を備え,優れたソフトウエアを数多く開発してきたのにもかかわらず,世界に通用するソフトウエアをパッケージとして販売していないのは不思議である」。

 日本のITベンダーに漂う不安や閉塞感は,ITベンダーだけが生み出したものではない。ユーザー企業側にもその責任があるのではないだろうか。「経営を強化する手段として,ITが重要だと本当に理解している経営トップは,日本にはほとんど見当たらない」と,大前研一氏は指摘する。それは,情報化投資の動向でもうかがえる。米IDCの調査によれば,2005年から2010年までの日本の情報化投資の伸び率は,米国の4分の1である。米国の年率5.5%に対し,日本は同1.4%である。日本企業の業績は上向いているものの,ITに対する期待が小さいのかどうか,ITにお金を使うとの考えはあまりないようだ。

 しかもユーザー企業の情報化投資の内訳は一般的に,70%が既存システムの保守・運用費であり,新規システムへの開発費は30%にとどまる。米フォレスター・リサーチによれば,日本の情報化投資のうち,新規分野へのIT投資の比率は15%である。米国の24%,欧州の28%に比べて低いことが分かる。

 各国のシステム事情もあるため,真水投資の比率の高低で,良し悪しを判断することはできないが,記者は危惧することが一つある。日本のユーザー企業が,新規システム開発への投資を渋るとなれば,「ITプロフェッショナルの挑戦意欲を駆り立てるような仕事が少なくなってしまうのではないだろうか」という点である。

 ユーザー企業の情報化に詳しいコンサルタントはこう語る。「ITが切り開く可能性(企業経営を強化すること)を理解せず,情報化プロジェクトにはなるべくお金を使わないとの風潮がユーザー企業に蔓延すれば,ITの仕事はますます魅力がなくなり,ヒトも集まらなくなるだろう」。ユーザー企業に対し,過剰なシステム投資をすべきだと言う気はもちろんないが,この点についてはどのように思われるだろうか。

 日本のITベンダーが力をつけ,IT業界においてもトヨタ自動車やキヤノンのようなグローバル・カンパニーが登場しないものだろうか---。こんなことを素朴に感じることもある。そうした強い企業が誕生すれば,そこに魅力を感じる若者は増えるはずだ。日本のITベンダーの競争力が高まれば,それはユーザー企業にも利益をもたらし,情報化推進力の向上につながるはずである。ユーザー企業からは「外国製品を使い,外資系ベンダーをパートナに選んで情報化を進めることに問題はない。ユーザー企業にとってそんなことは関係がない」との意見も聞かれそうだ。でも本当にそれでいいのだろうか。「品質の高いソフトやハード,さらにきめ細かいサービスを日本のベンダーから“関税の入っていない価格”で得られるなら,そのほうがメリットがある」。こう考えるのは記者だけだろうか。

 いずれにせよ日本のIT業界に漂う閉塞感を打開するには,大学での教育や国策など,さまざまな点から再生計画を練る必要がある。そこで冒頭のお願いごとに戻る。読者の皆様に,先に述べた(1)~(4)の観点で,IT再生計画案を考えていただきたいのだ。「日本のITベンダーやユーザー企業のIT部門に漂う閉塞感を打開するための方策」である。

 自由論文形式であり体裁,文字数は問わない。こちらの日経コンピュータのサイトで「お問い合わせ内容」の欄に記述していただきたい。いただいた論文は,誌面の許す限り,日経コンピュータ1月9日号の特集で紹介する予定である。急なお願いで恐縮だが,12月9日(金)を締め切りとさせていただく。読者の知見が必要である。重ねて,ご協力をお願い申し上げる。

戸川 尚樹=日経コンピュータ