PR

 「日本は携帯電話で先進的だと言われるが,そんなことはない。欧州などには,人口普及率が100%を超える国がいくつもある。これに対して日本は80%程度にととどまる。参入の余地はまだ十分ある」---。

 約12年ぶりに携帯電話市場への新規参入が認められた,イー・アクセス子会社のイー・モバイルやソフトバンク・グループのBBモバイルは,こう意欲を見せる。新規参入が認められたのは,前述の2社とデータ通信に特化したサービスを提供するアイピーモバイルの計3社。現在サービスを提供している事業者はNTTドコモとKDDI,ボーダフォンの3社であるため,一気に倍増する。来年11月には番号ポータビリティも始まり,乗り換えが容易になる。ユーザーにとっては明らかに選択肢が広がるわけで,喜ばしいことなのは間違いない。

 ただ,実際に自分の携帯電話について,「本当に乗り換えるのか」と考えてみると,今の段階では決められない。読者の方々はどうだろうか。

 周囲の記者に聞いてみると,何人もが「安くてちゃんとつながるのなら,絶対乗り換える」と答えた。当然といえば当然の答えだ。実際には,ブランド,コンテンツ,端末デザイン,カメラやビデオといった付加機能など,選択のポイントはほかにも多々あるのだろうが,やはり料金の安さはひときわ重要度が高い。

 ウィルコムが同社端末間の通話を定額制にしたことで顧客数が急伸したことからも,低料金のインパクトの大きさがうかがえる。ウィルコムは年内には過去最高の顧客数を達成する見込みだ。新規組にはADSLで価格破壊を巻き起こしたソフトバンク・グループがいるだけに,ユーザーとしては期待が膨らむ。

 しかし,「きちんとつながって,既存事業者のサービスより安い」という条件は,簡単に満たせるものではない。割り当てられた電波は少なく,つながりやすさでは,既存事業者と対等というわけにはいかない。基地局への設備投資は大きいし,顧客獲得コストも膨大。端末開発のコストもかかる。そのコストは結局のところ通話料に転嫁される。

 一方で,NTTドコモ,KDDI(au)は値下げ競争の真っ最中。収益の悪化を招きながらも,ユーザーの囲い込みに躍起になっている。筆者自身,今使っている携帯電話(ドコモ)を他社サービスに乗り換えないのは,長期割引と家族割りによる料金の安さが最大の理由だ。新規組がそれなりの低料金は打ち出してくるとしても,中途半端な違いでは,ユーザーの気持ちを動かすのは難しい。

 冒頭のコメントにあるように,新規事業者のイー・モバイルやBBモバイルが考えているのは人口普及率が100%の状態。一人のユーザーが複数の端末を持ち,ビジネス用,個人用,国際用,音声用,データ通信用など用途によって使い分ける状況にでもならなければ,実現しない。やはり,低料金は不可欠な条件といえる。

 そこで考えられるのが,端末の開放と,既存事業者にはない料金プランや割引だ。よく知られていることだが,既存事業者のサービスでは事業者がメーカーから端末をいったん買い取り,事業者端末として販売している。販売店には,安い価格で端末を売れるように膨大な販売インセンティブを支払っている。その金額は,年に数千億円に上る。もちろん,その分は通信料に転嫁されている。端末に市販製品を使えるようにしてインセンティブをなくせば,端末代はかかっても,通信料を安く抑えられるわけだ。既存事業者のサービスで単純計算すると,インセンティブがなければ,ユーザー1人当たり月額1000~2000円浮かすことが可能だ。年間では1万円以上おトク,ということになる。

 料金プランでも,他社からの乗り換えを前提にした特別サービスは可能なはず。例えば長期割引サービス。他社のサービスで適用される割引率を,そのまま引き継いで適用するというのはどうだろう。乗り換えることで生じるデメリットをなくせば,元々の安い料金がさらに生きてくる。割引率をどう引き継ぐかなど,難しい面はあるかもしれないが,実現すればおもしろそうだ。

 記者が考える程度のことは,当然,事業者は検討しているはず。乗り換える気にさせてくれる新サービスを,早く見てみたいと切に願っている。

安藤 正芳=日経コンピュータ