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 昨日の「証券取引所に課せられた責任は重い 」に続き,「証券取引所でシステム障害やトラブルが頻発しているが,その責任の所在はだれにあると考えているか」という質問に対して読者の皆さんが寄せてくださった回答を紹介していく。

 「発注者には責任がある」,「カネと手間を惜しみすぎではないか」,「(コスト削減の影響で)異常系のテストが甘かった?」といった指摘について,昨日,いただいた意見のいつくかを見てきた。

 システム関連のコスト削減が,障害やトラブルが頻発した原因の一つだと指摘される方が多数いらした。コスト削減による影響は,テストの甘さにとどらず多様な面に現れると考えるのが自然だ。

運用管理が軽視されている

 コストを削減することにより,システムの運用に対する姿勢が甘くなっているのではないかという意見も目立った。


 今回のみずほ証券の件では,業務仕様の管理ができていないことが大きいのではないでしょうか。また,他の証券トラブルでも当たり前の運用管理が,利益重視の体制の中でおざなりになっていることが原因だと思います。

 証券取引所のシステム運用のみならず,一般の日本企業でも運用管理はかなり軽視されており,キャパシティ管理やリリース管理などができていないと思います。残念ながら,運用に力を入れない日本企業なら,こうしたトラブルはどこでも起きても不思議ではありません。また,作ることのみを重視するベンダーにも責任はあります(ベンダーでも,システムの運用を重視して設計する人は少ないですね)。

(システム開発ベンダーに勤務している)


 処理量の増大,処理業務の複雑さの増大に人間系の運用スキル,リスク回避スキルが追随できていない。もう一つ,運用コストの削減(テスト工数の削減)推進や「なれ合い」のまん延化も一因かもしれない。

 コストを押し上げるかもしれないが,社会的なシステムについては,公的機関の構築認定の仕組みを作って,チェックの多重化を推進すべきである

(システム開発ベンダーに勤務している)


 ユーザーである東京証券取引所が,本来自組織が企業活動をしてゆくための手段/命である取引所システムの開発,保守,運用の実施会社を自社の支配下外(TCS/富士ソフトABCが65%出資)にしてしまったことが,一連の問題を発生させた原因である。何ゆえに資本を譲渡したのか。監督官庁がそれを許した(あるいは,チエックをしなかった)ことが不思議である。

 社会的に重要なシステムは,その組織がシステムのすべてに責任を持っているべきである。責任の所在が不明確であるがゆえに,今回のように相場の過熱等の異常事態が発生したときに,内在していた問題が顕在化するのではないか。

(システム開発ベンダーに勤務している)

 これらの意見も,ユーザー以外の立場の方からのものである。証券取引所に限らないのだろうが,ユーザーが思っている以上に,システムの開発・運用に本来必要なコストが削減されているというのがベンダーから見た本音なのかもしれない。

 3番目の意見は,TCS,つまり東証のシステム子会社だった東証コンピュータサービスに触れている。実際には東証のシステムを開発してきたのは日立製作所であったり,富士通だったりするが,運用の実務を担当するTCSが完全な子会社ではないために,システムの運用業務の流れに複雑な面が生じていたのは事実だと思う。

 次の意見は,システム運用が抱える本質的な問題を指摘したものである。


 システムを開発する際にはユーザー,ベンダーとも優秀な方が多く集まってくるが,開発が終わって保守の段になると,優秀な人材はほかの部署やプロジェクトに異動してしまう。

 保守にかけるコストが昔のネットワークが発達していない時代と変わっていない。もしくは少なくなってきている。ベンダーはその保守料でまかなうために,無理な人員削減を強いられている。結果,スキル,モラルとも下がり続け品質が悪化している。

(その他,ソフトハウス勤務)

 これまで紹介してきた意見は,一連の証券取引所におけるシステム・トラブルについて,「ユーザーである証券取引所に責任がある」あるいは「証券取引所とベンダーの双方にに責任がある」と答えた方のものである。ベンダーに責任があるという立場の方の意見の中にも,システム運用の問題について触れたものがある。そのうちの2つを紹介する。


 開発ではなく,保守・運用レベルで発生しているトラブルである。

 システムとして晩年期に入っているということで,配属されている人材のスキル・モラルが低下しているのではないか。IT業界では一般に,開発や新技術について評価が高く,保守・運用や改善は評価が低い。特に近年は,レガシー系システムの教育過程は絶滅してしまった。こうした状況では,穴を埋めるために配属された人材のスキル・モラルに期待を持てはしない。これは2007年問題の一種ではないだろうか?

(ユーザー企業の利用部門に勤務している)


 直接的にはバグを作った富士通の責任。ただし,間接的には「安価」を必要以上に求めた(であろう,入札か見積比較かはともかく)証券取引所にも責任はある。私が取引所のCIOだったなら,富士通は間違いなく排除していたから。

 IT化は単純労働を職場から減少させるだけのもので,運用に関しては導入後の人も金銭も増やさなければならない。ITの導入は,決して,イニシャルもランニングも「コスト縮減」にはならないのである。単純労働者を頭脳労働者に置き換えることで,企業価値を高めるという姿勢に必要なアイテムに過ぎない。これは,人力車を馬に,そして自動車に変えていくだけの行動と大差ないのである。

 そこを履き違えて(そう思わせた営業とメディアも悪いが),IT導入後,人員増を避けるからこそ(証券取引所以外も含めて)発生する障害である。仕事をするのは「ヒト」以外の何者でもないのだ。

(ユーザーでシステム開発・運用に関係する)