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 次世代のモバイル無線通信規格として注目を集める「モバイルWiMAX」。そのモバイルWiMAXを使った世界初の商用サービスが,6月から韓国で始まる*1

 サービスを手掛けるのは,固定通信事業最大手のKTと,携帯電話最大手のSKテレコム。通信速度は最大19Mビット/秒で,月額料金は基本料金が2万ウォン強(約3000円)の部分定額制となる見込みだ(韓国におけるモバイルWiMAXサービスの詳細は,日経コミュニケーション3月15日号の特集記事にまとめたので,そちらをご覧になって頂きたい)。

 韓国の総務省に当たる情報通信部は「他国よりも早く実績を作ることで,モバイルWiMAX機器市場でイニシアチブを取る」(キム・ジクドン行政事務官)と“世界初”を目指した理由を言い切る。この言葉を聞いたとき,筆者は日本の無線ブロードバンドを巡る電波政策も,「何が国益なのか」という議論にいったん立ち返る必要があるのではと感じた。

機器市場でのイニシアチブ獲得を狙う韓国

 韓国政府がこのような方針をとる背景には,第3世代携帯電話の「成功神話」がある。韓国は第3世代携帯電話をいち早く導入し,国内市場をテストベッド(技術を検証・評価するための場)に利用することで,インフラ設備や端末の輸出を大きく伸ばした。端末を例に取ると,韓国サムスン電子1社だけでも韓国内で数十機種もの端末を発売。ユーザーの反応を見て,デザインや機能の“良いとこ取り”をして欧米や中国市場に投入する。

 このやり方は,今までのところうまく行っている。調査会社のガートナーが3月に発表した,世界における2005年の携帯電話端末の出荷シェアでは,サムスン電子が3位,LG電子が4位に入った。なお日本メーカーは,ソニーとエリクソンの合弁会社であるソニー・エリクソンが5位に入ったが,パナソニック モバイルコミュニケーションズやNECなどの純国産メーカーは8位以下に甘んじている。

 韓国政府と産業界は,モバイルWiMAX機器市場でも携帯電話の再現を狙う。自国内の市場が小さい韓国にとって,輸出額を伸ばすことは至上命題。電波政策もそれに沿ったものになっており,早期のモバイルWiMAX導入に至ったわけだ。

 早くも成果が出始めている。KDDIやソフトバンクが昨年実施したモバイルWiMAXの実証実験で利用した機器は,どちらも韓国メーカー製。昨年6月から実施しているKDDIはサムスン電子の機器を(関連記事),昨年10月に実験を開始したソフトバンクは韓国LG電子の機器を利用している(関連記事)。

事業者,メーカーの利害調整を超えた議論に期待

 一方の日本では,総務省が3月17日から無線ブロードバンド用の周波数「2.5GHz帯」の割り当て議論を本格的に開始する(関連記事)。まず導入する技術方式や帯域幅,割り当てる事業者数を話し合い,その後,希望する事業者の中から割り当てを決める。順調に進めば,2007年末から2008年前半には商用サービスが登場しそうだ。

 2.5GHz帯の割り当てを目指すと表明している通信事業者は,NTTドコモ,KDDI,ソフトバンク,イー・アクセス,アッカ・ネットワークス,ウィルコムなど多数あるが,割り当て可能な事業者数は最大でも3社程度。2.5GHz帯の空き周波数が70MHz幅しかないからだ。まるで「いす取りゲーム」の様相を呈しており,どうしても事業者間の割り当て争いに注目が偏りがちだ。

 しかし,最も「国益」に沿う電波政策はどうあるべきか,という視点に立つとまた違った見方ができる。例えば,どの技術方式を選ぶべきかという議論。提案が見込まれる技術方式は,モバイルWiMAXや次世代PHS,IEEE 802.20などがある。モバイルWiMAXは,最も世界での普及が見込まれるが,米インテルや韓国メーカーが先行している。次世代PHSはウィルコム主導で国産に近い規格だが,世界への普及は不透明な状況。IEEE 802.20は,モバイルWiMAXへの対抗を狙い米クアルコムが推進しており,急浮上しつつある規格だ。どの技術を導入するかによって,メーカーや事業者のその後のシナリオは変わっていくだろう。

 これから始まる議論では,総合的に考えて何が一番国益になるのか,事業者やメーカーの利害調整を超えた議論になることを筆者は期待している。