PR

UHF帯リーダーの帯域幅の狭さが災い

 では、複数のリーダーがそれぞれ異なる通信チャンネルを使い、同時に電波を出し続けて、いつでもコンベアを流れる荷物の情報を読み取れるようにしたらどうだろうか。今回のJAISAの実験でもこの方法が試された。

 複数のリーダーが異なるチャンネルで通信する場合、次のような干渉が発生する恐れがある。ICタグが複数のリーダーの送信波を同時に受け取って、コマンドを読み取れなくなるというものだ(これを「タグコンフュージョン」と呼ぶ)。

 ICタグは低コストで作るものであり、リーダーを含む通常の通信機器が備えるチャンネル選択の機能がない。テレビチャンネルを切り替えるように、通信相手のリーダーのチャンネルだけを選択して受け取れないのだ。近くにあるリーダーが異なるチャンネルで電波を出せば、ICタグはすべて受け取ってしまい、それがタグコンフュージョンを引き起こす。

 リーダーからの電波がICタグ上で混信するという、このタグコンフュージョンはどのような場合に発生しやすくなるのか。今回の実験では次のような結果が出た。

 日本の電波法令では、UHF帯リーダーには2MHz(952M~954MHz)の帯域幅が割り当てられており、そのなかで200kHzのチャンネルを9個利用できる(長距離通信が可能な高出力型の場合)。今回の実験は、2台のリーダーが使うチャンネルを、(1)隣接させる、(2)1個飛ばしにする、(3)3個飛ばしにする、と条件を変えて行った。その結果はこうだった。隣接と、1個飛ばしは極端に読み取り率が落ち、3個飛ばしだとほぼ読み取れたのだ。タグコンフュージョンは、リーダーが使うチャンネルが離れるほど起こりくく、今回の実験結果では、3個飛ばしでチャンネルを使うとセーフだった。

 3個飛ばしということは、どういうことか。9個のチャンネルのうち、リーダーが使うチャンネルを1番目、5番目、9番目に設定すれば同時に電波を発射できる。裏返せば、同時に電波を発射できるリーダーは最大3台ということになる。4台目を設置しようとしても、もう使えるチャンネルがないのだ。

 実は、これが米国なら話が違ってくる。米国のUHF帯リーダーは26MHzと広い帯域のなかで、500kHz幅のチャンネルを50個利用できる。同時に電波を発射できるリーダーは格段に増える。日本で割り当てられた帯域が2MHzと狭いことが、タグコンフュージョンをより深刻にしているのである。

対策はいろいろある

 「同時に3台しか設置できないのか」——。この実験結果を受けて、ICタグ関連のベンダーには動揺が広がった。例えばヨドバシカメラがUHF帯リーダーを設置する物流センターには、納入業者がトラックを横付けするドックドアが20個程度あり、ドックドアの間隔は約3mである。どうやって20個のドックドアに対して、入荷検品のためのリーダーを設置できるのだろうか。本命と期待されるUHF帯ICタグだが、日本では使えないのではないか。

 こうした懸念に対して、タグコンフュージョンを避ける方策はいくつもあると業界関係者は指摘する。まずリーダー間の距離を離せないか検討する。本当に5mといった近距離でリーダーを設置する必要があるのか。距離を離せれば、電波が弱くなるので干渉は起こりにくくなる。リーダーの電波出力自体を落とす方法もある。コンベヤの近くに設置して近距離で読み取るだけなら、出力を落として干渉を回避できるかもしれない。

 リーダーアンテナの向きも重要だ。JAISAの実験では、アンテナの向きは、あえて工夫しなかった。アンテナはX軸上に5m間隔で2枚並べ、電波はどちらもY軸の正方向に飛ばした。アンテナの向きを少し変えて、互いの電波が重ならないように工夫すれば、干渉は起こりにくくなる。

 実はこうした方策を、すでに具体化しているベンダーも何社かある。そうしたベンダーは、UHF帯ICタグシステム導入のための独自のノウハウが漏れることを嫌い、あまり多くを語らない。「とにかくウチに任せれば大丈夫」と豪語するベンダーもいる。

 実際のところ、日本でのUHF帯ICタグの導入は始まったばかりである。導入を進めながらノウハウをためているベンダーも多いようだ。ICタグやリーダーの技術的な改良により、干渉回避が容易になることもあるようである。

 今年は、先進ユーザーとベンダーが一緒になって、UHF帯ICタグの課題を克服していく年になりそうだ。欧米の先進ユーザーも同じような道をたどって、企業としての競争力強化にいち早く結び付けていった。日本でも、同様の進展を期待したい。

 そこで、UHF帯ICタグシステムを実際に導入した先進ユーザーの生の声をお伝えするため、ICタグの専門誌である日経RFIDテクノロジは、「RFIDユーザーフォーラム」を6月14日に開催する。13.56MHz帯のICタグシステムに2億7000万円を投じた近畿松下テクニカルサービスの講演では、その投資対効果を明らかにしていだたく予定だ。興味のある方は、ぜひ参加してほしい。