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設計書の抜け漏れあったら罰金100円


 プロジェクトを立て直していく上で,プロジェクト内部をよい雰囲気にしていく取り組みも欠かせない。前述の文山氏は,プロジェクト・メンバーがプロジェクトの完遂を目指せるよう,メンバーが「プロジェクトを終わらせる」という意識を持ってもらう仕掛けを用意する。

 例えばあるプロジェクトの支援に入ったとき,業務仕様書やシステムの設計書といった書類の内容を見直す作業が必要だった。そこでメンバーが書類をまとめ,文山氏が「ユーザー企業の担当者に確認したうえで書類をまとめたか」「今回のシステム開発で変更になる業務要件の前提を踏まえて書類を作成したか」といった,抜け漏れのチェックを担当して,作業を進めることになった。

 このとき文山氏は「もし書類の内容をチェックして,内容の抜け漏れが見つかったら,書類を作成したメンバーはプロジェクト・ルームに置いた貯金箱に罰金100円を入れる」というルールを設けた。

 このルールの狙いは,メンバーのモチベーションを高めることにある。メンバーが抜け漏れなく設計書をまとめられれば,あとになってプロジェクトの手戻りは防げる。そのメンバーは罰金を払わずに済む。一方,メンバーが罰金を払うことになっても,その場で書類の不備を修正すれば,作業をやり直すことはなくなる。メンバーが支払う罰金も高くはないし,貯まった罰金は,プロジェクト完遂の労をねぎらう「打ち上げ」に使う。

 そうしたうえで,文山氏はメンバーと一緒になって業務仕様書やシステム設計書を仕上げる。「進ちょくが思わしくないときは,『このままいくと,たくさんビールを飲ませてもらえそうやなあ』とメンバーの苦笑いを誘いながら,和気あいあいと作業を進めていく」と文山氏は話す。

記者にも参考になった火消し術


 「もし自分がシステム開発プロジェクトのマネージャで,プロジェクトの危機に直面したとしたら,事態を悪化させてしまうかもしれないな」。記者は,日経SYSTEMSの6月号(5月26日発行)の特集記事「現場の知恵と達人に学ぶ~プロジェクトの火消し術」を担当することになったとき,ふとこう思った。立て直すためのノウハウはもちろん,その裏づけとなる経験も持っておらず,どうしたらよいか分からないからだ。経験の浅いプロジェクト・マネージャも,もしかしたら同じような不安を抱いているかもしれない。

 そこで,危機プロジェクトに参画した経験を持つ20人以上のエキスパートに,プロジェクトを立て直すノウハウを取材した。さまざまな方々の経験に基づくノウハウを取材していくうちに,「『どうしようもない』と頭を抱えるような状況になっても,経験に裏打ちされたノウハウを知っていれば,希望を持って状況を打開できるのではないか」と思えるようになった。

 取材で得られたノウハウは,記者自身の仕事を進める上での参考にもなった。

 記事をまとめる作業は,システム開発プロジェクトほど複雑ではないものの,一種のプロジェクトとみなせる。取材先,誌面づくりを担当する制作会社,編集部内の上司といった「ステークホルダー(関係者)」の協力なしには作業が進まないうえに,締め切りもある。最悪の場合,締め切り遅れで記事を出稿できなければ,雑誌に白紙ページができてしまう。記事作りで出てくる問題も,システム開発プロジェクトの危機と非常に似ているのだ。

 記者が参考になったなと思うノウハウの一つが,特集記事のなかで紹介している「プロジェクトの目標設定」に関するものだ。「こんなことに困っている読者に,こういう内容の記事を提供する」という目標をあいまいにしたまま記事作りを進めると,「取材対象は絞れない」「記事としてまとめるにもうまくいかない」と首が回らなくなることが少なくない。「そんな状況になったら,あいまいな目標をはっきりさせるのが得策なのか」と,改めて気づかされた。

 特集記事担当記者も参考になった「火消しのノウハウ」は,前出の特集記事で多く紹介している。火消し術としてだけではなく,問題を発生させないようにする「予防策」としても有効なものばかりだ。ぜひお役立ていただきたい。