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大手・中堅のITサービス会社の2006年3月期決算
大手・中堅のITサービス会社の2006年3月期決算
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 株式を上場している売上高100億円以上の主なITサービス会社の2005年度(2006年3月期)決算は,増収かつ経常損益が好転(増益や黒字転換,赤字幅縮小)した企業が過半数を超え,ようやく業績回復に手応えが出てきた(参考:ITpro Select「ソリューション営業」の「経営と提案に役立つデータ集」)。

 日経ソリューションビジネスでは毎年,非上場企業も含む大手・中堅のITサービス会社の業績を集計・分析し,7月15日号で特集「ソリューションプロバイダ業績ランキング」として掲載している。今回は,その速報として,2006年3月期決算の上場企業の決算を分析してみた。

過半数が増収・損益好転

 5月19日までに決算を発表した売上高100億円以上の企業76社(表)のうち,前年度と比較可能な73社の売上高の合計は対前年度比2.5%増の6兆2018億500万円,営業利益の合計は同13.7%増の3301億8100万円,経常利益の合計は同13.7%増の3305億6100万円だった。

 このうち,増収かつ経常損益好転を達成したのは40社で全体の54.8%を占めた。一方,減収かつ損益が悪化(減益や赤字転落,赤字幅拡大)した企業は9社だった。営業赤字を除く67社の営業利益率の平均は5.8%。営業利益率が10%を超えた企業は8社と,前年度よりも3社増加した。不採算プロジェクト防止対策への注力や選別受注などの取り組みが,収益改善に貢献したとみられる。

 例えば,日立ソフトウェアエンジニアリングは,2005年3月期に92億4600万円の経常赤字だったが,2006年3月期は不採算プロジェクトを防止するためのプロジェクト管理強化に取り組んだ成果が出て,52億9200万円の経常黒字に転換した。日本電子計算も,2005年3月期には不採算プロジェクトの影響で11億4600万円の経常赤字だったが,提案時に不採算の可能性を検証するなどの防止策に注力した結果,11億5200万円の経常黒字に転換した。

 金融業界向け案件の増加を追い風に業績が好調だった企業が目立つのも,2006年3月期の特徴。野村総合研究所(NRI)は,三菱UFJ証券のシステム統合などの大型案件を相次いで受注し,金融業界向けの売上高は対前年度比17.0%増の1781億6800円に達し,売上高全体の62.4%を占めた。ソランも,金融業界向けの売り上げが同17.1%増の121億4600万円に伸びた。インターネット銀行向けの開発案件が急増しているといい,「人手が足りず,いくつかお断りしなければならない状況」(ソランの千年正樹社長)だという。

今期も増収・損益好転の予想だが・・・

 2007年3月期予想では,76社のうち67社が増収・経常損益好転の計画を立てている。NTTデータは,連結売上高がついに1兆円の大台に乗る見通しである。今期も前期に引き続いて事業再編が進行しており,10月1日には伊藤忠テクノサイエンスとCRCソリューションズが合併し伊藤忠テクノソリューションズが発足する。また,インテックが10月2日付でインテックホールディングスを,日本電子計算が10月1日付でJBISホールディングスを設立するなど,持ち株会社を使った経営統合の動きも活発だ。

 ITサービス業界が,ここ数年間の業績低迷を脱したのは間違いない。しかし,好業績の企業の多くが今後も安定して回復基調の業績を続けられるかどうかとなると,筆者は疑問符を投げかけずにはいられない。

 思い返せば,今から5年前の2001年3月期も,各社は好業績に沸いた。しかし,その後にITバブルは崩壊し,業績が低迷する企業が相次いだ。そしてITサービス業界は厳しい“冬の時代”に突入した。

 実際,ITサービス企業は今なお,いくつもの課題を突きつけられている。これまで下落し続けた単価が元へ戻らず,金融などの大型案件の特需が去った後の新たな収益源も不明確。個々の案件ごとの競争も激化しており,減少傾向にあるとはいえ依然として大型の「不採算案件」が発生している。

 ITサービス会社は今後,これらの課題にどのように対処していくかが問われるだろう。2007年3月期決算も引き続き注目したい。