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 しばし考えた末,原則として上記の題材は扱わないことに決めた。理由は簡単で,こうした題材はあちらこちらですでに扱われているからだ。内部統制の話はNBOnlineが取り上げているし,IT系4誌とITproが6月5日に共同で立ち上げた内部統制.jp」という専門ページができた。情報セキュリティについてもITproが専門ページを設けており,動かないコンピュータについては専門のフォーラムがある。


ドラッカーを研究するグループを結成

 ITproの情報は専門家向けだから,これらを経営者の視点に合わせて発信し直すというやり方もあり得るが,せっかく新しいサイトを作る以上,これまでなかったコンテンツを,これまでなかったやり方で作って発信したいと考えた。あれこれ考えた結果,三つの特徴を出すことを決めた。

 第一は,社会生態学者のピーター・ドラッカー氏に関する論考を掲載すること。IT産業に関係している有志数人が集まって「ドラッカーのIT経営論研究グループ」なるものを作り,このグループで情報を発信することにした。グループといっても全員が集まって議論をしているわけではない。各自が「ドラッカー」「経営」「IT」の三点が入った短文を書き,経営とIT新潮流2006で発表していこうというものだ。数人の方からいただいた寄稿を「ドラッカーのIT経営論」という場所に公開している。

 ドラッカーのIT経営論研究グループのメンバーは全員,昨年創設されたドラッカー学会の会員でもある。研究グループは,ドラッカー学会の中にあるわけではないが,ゆくゆくは研究グループで論文を書き,ドラッカー学会へ投稿したいと考えている。

 経営とITの新サイトになぜドラッカーが登場するのか。ドラッカー愛読者の経営者が非常に多いからである。ドラッカーに関連した文であれば,ITに関することでも読んでもらえるのではないか。実際,ドラッカーは,経営とIT,あるいは経営と技術について,興味深い指摘をたくさんしている。そのごく一部について,本サイトで紹介したこともある。「ドラッカー氏から「ITプロの条件」を学ぶ」と題した一文がそれである。

 2005年に出版されたドラッカーの『テクノロジストの条件』(上田惇生編訳,ダイヤモンド社)は,テクノロジーを主題にした一冊であり,冒頭に次のような一節がある。

「テクノロジストは,マネジメントすることを好まない。むしろ,それぞれの世界で技術や科学の仕事をするほうを好む。(中略)その結果,企業,政府機関あるいは研究所においてさえ,テクノロジストでない人たちがテクノロジストをマネジメントすることが多くなっている。(中略)私自身テクノロジストでない者の一人として70年近くも前から,テクノロジストでない人たちにテクノロジストの仕事を理解させることの重要性を意識してきた。しかもテクノロジストとマネジメントの人たちの不調和を目にしてきた」

 上記の引用文で「テクノロジスト」とあるところを,ITプロフェッショナルと読み替えて頂きたい。「テクノロジストでない人たちにテクノロジストの仕事を理解させること」はまさに重要である。


セキュリティ標語とCIO川柳

 新サイトの特徴として考えた二番目は,いささか唐突だが「標語」あるいは「川柳」,「諺」である。標語や川柳のいい点はとにかく短いこと。経営者は忙しいから,数ページにわたるコラムなどなかなか読んでくれない。経営とITに関する標語や川柳を定期的に掲載し,蓄積していけば面白いコンテンツになるのではないか。

 現在,新サイトにおいて,経営とIT全般に関する諺と,セキュリティ標語を交互に掲載している。今後はさらに,ITproのWatcher欄で「CIOへの道」を連載している森岡謙仁氏の「CIO川柳」を再録していきたいと考えている。偶然ながら,森岡氏もドラッカー学会の会員である。これまで面識はなかったが,先日開かれたドラッカー学会の総会で初めてお目にかかった。世間は狭いものである。

 新サイトの三番目の特徴は,プロジェクトマネジメントの情報である。「経営者向けサイトでプロジェクトマネジメントとは?」と首をひねる方もおられるだろう。筆者が思うに,プロジェクトマネジメントこそが経営者やビジネスリーダーとITプロフェッショナルをつなぐ共通語の一つである。経営者に向かって,WBSを作れとか,EVMSを理解しろと,プロジェクトマネジメントの手法を押しつけるつもりは毛頭ない。ただし,プロジェクト憲章の起草やリスクの洗い出し,あるいはチームビルディングについて知っておいて損はない。

 プロジェクトマネジメント情報の第一弾として,「プロジェクトマネジメント入門」を公開している。また,先に紹介したドラッカーのIT経営論の中に,プロジェクトマネジメントの体系PMBOKとドラッカーの関連を論じた一文「スケジュール作りから始めてはならない」もある。

 ここからは,ITプロフェッショナルの皆様へのお願いである。経営とIT新潮流2006を通じて,ぜひとも経営者に向けて発信いただければと思う。ドラッカー氏に関する短文を書いて頂いてもよいし,川柳を寄せて頂いてもよい。以前,本欄でシステム開発を巡る川柳を募集していたが,経営者に対して物申したい方は多いはずだ。ドラッカー短文,川柳,ご意見は,本コラムに関する意見欄に書き込んでいただいてもいいし,ITpro編集宛てにメールを送って下さっても結構である。

 なお,今回の「記者の眼」は一冊の本に触発されて,異なる読者に向けて複数のコラムを書く,という試みの一つでもある。一冊の本とはドラッカーの『テクノロジストの条件』のことで,NBOnlineに「50歳になったコンピューター,社会貢献はこれからだ」というコラムを,エレクトロニクスや機械,材料技術者向け専門サイトであるTech-On!には「280年前に書かれた技術者礼賛~『ガリヴァ旅行記』を読む」というコラムをそれぞれ書き,公開している。お時間のある方はぜひ,他の2本のコラムもご覧になっていただきたい。