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 前回の「CIOは動かないコンピュータを減らせるか」に対して89件のご意見をいただきました。いずれも大変参考になるご意見でした。ありがとうございました。

 「CIOの働きによって動かないコンピュータやシステム・トラブルは減るとお考えですか」との質問に対して,減ると回答された方は,全体のほぼ3分の2に当たる59人。逆に「減らない」との回答は8人だけでした。ITpro読者の皆さんは,システム開発に伴うトラブルや,深刻なシステム障害などの「動かないコンピュータ」を撲滅するために,CIOの果たせる役割は大きいと考えておられるようです。

 その一方で,「日本企業に本当の意味のCIOがいると思いますか」という問いに対して,「いる」という回答は89人中6人だけでした。これに対して,「少しはいる」という回答は39人。「ほとんどいない」とお答えの方は31人でした。CIOの重要性は認識されているものの,「本当の意味のCIO」は少ないというのが,ITPro読者の実感といえるのでしょう。


システム部門の責任者を越える役割を期待


 では実際に,動かないコンピュータを撲滅するために,CIOは何をすべきなのか。この点についても,皆さんから多くのご意見をいただきました。

 CIOは最高情報責任者と訳されるだけあって,単なるシステム部門の責任者を超えた活動が期待されているようです。

 まず,会社の置かれている立場を知らなければ,どんなシステムを開発すべきなのかという根本的な問題が分からないのでは,というご意見がありました。


最も重要なのは状況分析であり,会社の実力にあった戦略,及び戦術を策定すべきであると思います。もし,そうでないシステム,プロジェクトがある場合は,修正,変更,中断等の決断を行う必要があり,それを経営陣が納得するように進言をすることが必要です。
(その他,コンサルタント)

 残念ながら,作ってもきちんと利用されないシステムが存在する企業もあります。こういったシステムもある種の動かないコンピュータだととらえることも可能でしょう。自らの働く企業の実力を知って,こういったシステムを作らないことも,CIOが果たすべき役目だと思います。

 CIOが社内の調整役としての機能を果たすことで,動かないコンピュータが減るのではないかというご意見もありました。


他部門,特に利用部門への働きかけができること。対外折衝能力が無いCIOは無意味。
(ユーザーでシステム開発・運用に関係する)

 利用部門の要望は重要ですが,すべてを実現しようとした結果,要件がどんどん膨らんで,開発に支障を来すことも少なくないようです。ご指摘のような折衝能力は,システム開発プロジェクトにおいて不可欠なものでしょう。

 利用部門との関係で言えば,一時的には悪者になってでも,あるべき企業の情報化を進めるべきだというご意見もいただきました。


企業トップが大規模な改革を目指せば,一時的にせよ現場に混乱が生じるのは避けられない。CIOは改革の成果と引き換えに,不稼働システムやトラブルの増加をあえて受け入れることもある。大局観を持って情報システムと向き合うことが重要といえる。CIOが責任を負うべきシステム戦略の領域は,「情報システム部門の縄張り」と同じではない。CIOの負うべき役割を,情報システム部門の延長線上ではないところで明確に描くことが必要。
(ユーザーでシステム開発・運用に関係する)

 「情報システム部門の延長線上ではない」役割をどう捉えるのか,という問いは重要なものだと思います。今,CIOの多くがこのことを問われているのではないでしょうか。


火消しやPMの支援も必要ではないか


 動かないコンピュータは,往々にしてシステム開発プロジェクトが難航する中で生まれます。プロジェクトを成功させるため,CIOに何ができるのかについてのご意見もいただきました。

 少し長いですが,以下のご意見には参考になる部分が多いと思います。


(1)PMの任命:システム開発・運用の状況を把握して社内外のステークホルダー間の調整を的確に行うことのできる者を,プロジェクトマネージャ(以下「PM」)に任命すること。
(2)PMのモチベーション維持:各PMとのコミュニケーションを密接に保ち,問題発生時には担当PMに責任を押し付けるのではなく,自らPMとともに問題解決のため知恵を絞ること。
(3)状況把握:PMからの報告は,「バッドニュース ファスト」を原則とする。問題の兆しを極力早期に察知し,対策を打つ。時間が経つほど打つ手が限られ,対応負担は幾何級数的に増大する。
(4)CIO機能に対する認識:インターネット企業のようにIT戦略が競争上致命的に重要なのか否か,正しく状況認識したうえで,全社的な観点から正しく資源配分を評価する。
(5)社内影響力:上記の(1)と(4)を迅速・的確に実現するために十分な社内影響力を有すること。

最先端のIT企業では,CIOはCEOと同等の機能,重要性を求められる(シリコンバレーのIT企業のCEOは,自らCIOの機能を果たしている人が少なくない)。一方,普通の(=IT技術を使いこなすことが企業競争上致命的な意味を持つには至らない)企業においては,(ITの重要性が高まっているとはいっても)CIOは企業経営の(重要な)一部分。そうした企業にあっては,CIOはITに限らず社内の様々なプロジェクトをリードし得る人材を育成し,そのモチベーションを維持・管理することに重点を置くほうが,現実的。
(ユーザーでシステム開発・運用に関係する)

 次のようなご意見もありました。


無理なリリースをやめる,もしくは延期する決断を下せるCIO。もちろん,CEO他の経営陣を納得させる力量も必要。
(その他,フリーでPMOのメンバーとして活動)

 ITPro読者の皆さんからのご意見によると,CIOには「火消し」としての能力が望まれることもあるようです。プロジェクトをどうするのかについて,現場のプロマネには判断しづらいこともあります。少し現場から離れた視点でCIOが決断しなければ,プロジェクトを難局から脱出させることができないケースもあるかもしれません。

 より具体的に,問題のあるプロジェクトからの脱出にはCIOがかかわるべきだというご意見もいただきました。特に「費用を追加」するかどうかは,プロジェクトを継続させようとするなら,絶対に必要なことだと思います。


システム開発初期での業務全体の把握。システム開発の現状把握,仕様追加の必要性の取捨選択,仕様変更の是非の判断,必要なものは,費用を追加してでも行える権限。
(システム開発ベンダーに勤務している)


自ら決断できることが重要,IT知識の必要性は分かれる


 動かないコンピュータを減らせるCIOには,どのような能力が求められるのかについても,さまざまなご意見をいただきました。

 代表的なご意見として,以下のものを示したいと思います。要は,トップに振り回されず,部下の言う通りに動くのでもなく,自らの判断で動けるだけの能力が必要ということです。


十個くらいのハンコがついたプロジェクト企画書や,経営者の鶴の一声で始まったトップダウン企画に対して,自身の保身を優先させることなくはっきりと「No」を言える人物。以下の慣習を改めることができれば,CIOは文字通り,CIOらしい職務を遂行できるようになるかもしれない。

・誰も責任を取る必要がない,いわゆる「委員会制」で物事が進んでいく多数の船頭方式。
・「物言えば唇寒し」「出る杭は打たれる」など,「勇気ある個人は日本に不要」といわんばかりの処世訓。
・「赤信号,みんなで渡れば怖くない」に代表される,「悪事も多数となれば正義」とする悪しき民主主義。
(ユーザーでシステム開発・運用に関係する)