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 ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)といった一般消費者参加型のインターネット・メディアの利用者が急増している。総務省のまとめによると,2006年3月末時点の利用登録者数はブログが868万人,SNSが716万人。ともに半年間で約8割も増えた。インターネット利用動向の調査会社ネットレイティングスの調べでは,国内の月間インターネット総接触時間の17~18%をYahoo!JAPAN(yahoo.co.jp)が占める一方で,400万人超の会員を抱えるSNS国内最大手のミクシィは,ヤフー,楽天に次ぐ第3位の地位を占めるまでになっている。

 ブログやSNSなどの消費者参加型メディアは,一般に「CGM」(コンシューマ・ジェネレーテッド・メディア)と呼ばれる。海外では米国の「MySpace」,韓国の「Cyworld」のように数千万人の規模に膨れ上がったSNSサービスがあるほか,写真の「Flickr」,動画の「YouTube」,ソーシャル・ブックマークの「deli.cio.us」,名刺情報の「Plaxo」,技術系ニュースの「Slashdot」や「digg」,百科事典の「Wikipedia」など,一般消費者がコンテンツを投稿・共有・評価する格好で成り立つメディアの利用者が急増している。日本国内でも,ミクシィやグリーなどのSNSサービスに加えて,はてなやオウケイウェイヴなどの投稿型メディアの認知度が向上するにつれ,同様の状況を迎えつつある。

 では,こうしたCGMの台頭を,企業はビジネスにどのように利用できるだろうか。

クチコミを利用したマーケティング手法が進化


 ブログを利用して消費者の関心を引き付け最終的に購買につなげようとする取り組みは,国内でも2003年ころから始まっている。日産自動車,大塚製薬,花王など,すでに一定の成果を上げている企業もある。

 ブログで情報を発信する主体は,企業側の場合もあるが,CGMの特性をより生かせるのが,周囲に対して大きな影響力を持つ個人,いわゆる“インフルエンサ”に商品の使用感や魅力を発信してもらう方法である。影響力が大きい個人のブログからの情報発信によって意図的にクチコミを作り出し,商品の認知度を高めたり,店頭またはECサイトでの購買へと誘導する。

 さらに,より手の込んだ手法も出てきた。著名なブロガーを集めて“広告媒体”として広告主に売り込む新手の広告代理店サービスである。インフォバーンが「bloMo!」(ブロモ)の名称で6月中にサービスを始めるほか,サイバーエージェント子会社のサイバー・バズも「CyberBuzz」(サイバー・バズ)のベータ版サービスを6月に始めた。同社は2007年9月までに5000人の有力ブロガーを組織する目標を掲げている。

 CGMサービスを提供するはてなとグリーも,会員のブログ(ダイアリー/日記)を利用する「クチコミプロモーションパック」を広告商品として4月に販売を始めた。また,ディー・エヌ・エー(DeNA)は,Webサービスに対応したアフィリエイト・サービスをブログ・ポータル・サービスと連携させるソリューションである「BLOG CORE MALL」の販売を6月に開始。個人のブログを成果報酬型の通常のアフィリエイト広告と同様に扱うことで,企業が個人ブログによるクチコミ販促に取り組みやすくしている。

監視の必要性も高まりそう


 現状では,ブログやSNSを介したネット上のクチコミは,商品の宣伝や販売促進,市場調査の目的で使われることがほとんど。ただ,CGMを新しいメディアとみなせば,今後は“広報媒体”としても活用する企業が増えてきそうだ。

 実際,サントリー,NTTドコモ,NECなど,報道機関向けの発表資料(ニュース・リリース)を,RSSフィードにより広く一般にも配信する企業が日を追って増えている。RSSフィードなら,企業側が新聞・テレビなどの既存マス媒体に向けて発表内容を知らせるメールの配信時刻を前倒ししない限りは,個人ブロガーでも報道機関とほぼ同時に最新情報を入手できる。産業機械や加工原料などの企業向け商品はともかく,一般消費者向けの商品については,ブロガーやSNSによるクチコミを期待して報道発表資料をRSSフィードで一般向けに提供する企業は,今後ますます増えてくるだろう。

 一方で,クチコミによって企業にとって“マイナス”の情報がインターネット上で広がるリスクは大きくなっている。利用者の増加とともに社会的な影響力が増大しているCGMに対して,株価操作などの不正な行為を検知するためにも,何らかの方法で監視する必要性がこれまで以上に高まりそうだ。

 ブログ検索では,老舗のテクノラティなどに続いて,ヤフーも3月にベータ版として「Yahoo!ブログ検索」を開始。最短で1分前の書き込みまで検索できるようにしている。自社で運営するブログなどへの投稿やトラックバックを監視するだけでなく,投資家保護や危機管理の観点から,広範囲のCGMを監視する動きが企業に広がるかもしれない。

(井出 一仁=ネット事業推進センター