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 「IT分野に長けている弁護士や法務に詳しい人材がいたら紹介してほしい」。日経コンピュータ6月26日号の特集「迫り来るIT法務リスク」の取材では,ユーザー企業のシステム部長から冒頭のような依頼を受ける機会が多かった。

 最近は「金融商品取引法(通称,日本版SOX法)」への対応ばかりクローズアップされているが,システム部門が直面している法務リスクはそれだけではない。不正競争防止法や労働者派遣法,下請法や著作権法など,さまざまな法律に気を配らなければならない。周知の通り,日本版SOX法を除けばいずれも新しい法律ではない。だが,法改正や監督官庁の監視強化,社会的な関心の高まりといった理由から,これらの法律はシステム部門にとって無視できないものになってきている。

 ところが,システム開発・運用にかかわる法律(IT法務)に詳しい弁護士や法務担当者がいないため,法務リスクに直面しつつも対応できないシステム部門は少なくない。システム部員自らが,セミナーに参加したり書籍を読んだりして法律を学び,対策を打ち出しているのが実情だ。IT法務の専門家不足は,深刻な問題になっている。


システム部門を襲う法務リスク

 システム部門が直面している法務リスクの一例に,違法派遣や偽装請負がある。もし,「開発・運用委託先の社員に対し,システム部員が業務を直接指示している」,「第三者が委託先の社員とシステム部員とを区別できない」,「派遣社員を受け入れる際,履歴書の審査や面談を実施している」といった実態があるようなら危険だ。労働者派遣法や職業安定法に違反しているとして,労働局に摘発されるおそれがある。ユーザー企業自身が摘発されなくても,委託先ベンダーが摘発されれば,システム開発・運用の計画を見直さざるを得なくなる。

 ほかにも,「著作権法」や「特許法」,「不正競争防止法」などを知っておかないと,システム開発委託先からビジネスのノウハウが流出しても責任を追求できない。システム子会社を通じて,外部のベンダーにシステム開発を委託している場合は,「下請法」に準じて支払期日を決めたり,検収ルールを決めなければならない。委託先の責任を明確にした契約を結ぶには,「民法」や「商法」に対する理解も不可欠だ。

 特集では法務リスクを減らすために,業務プロセスを見直したり,契約を改めるといった,ユーザー企業での対策事例を紹介した。ここで問題視したいのは,それらの対策が法務部門やコンプライアンス部門の主導ではなく,システム部門が自ら法務リスクを見つけ出し,対策を打ち出していたことである。


法務部門は頼りにならないが,システム部員も法律を学ぶ必要がある?

 法務リスクを減らすには,法務部門や顧問弁護士の協力が不可欠だ。ところが,本誌が主宰しているシステム部長会の会員に対してアンケートを実施したところ,約7割のシステム部長が「法務部門が,IT分野ではうまく機能していない」との回答を寄せた。「法務部門に,ITに詳しい人材がいる」と答えたのは,1割にも満たなかった。

 アンケートでは法務部門に対して,「(製造や流通など)本業にかかわる法律には詳しいが,システム開発・運用の実態をよく理解していない」,「法律の解説はするものの,システム部門が抱えている問題の解決策を示せない」,「経営におけるITの重要度は増しているにもかかわらず,法務担当者はITのことを勉強しない」といった厳しい意見が寄せられた。「頼れるのは親会社の法務部門だけ。しかし,敷居が高いため気軽に相談できない」など,組織に起因する問題を打ち明けるシステム子会社の部長もいた。

 このような問題に対処するため,IT法務担当者の育成に動くユーザー企業も出てきた。例えば,三菱化学は今年1月,法務部門を定年退職した社員を,システム子会社のIT法務担当として再雇用した。東京海上日動火災保険は,システム企画部門にIT法務担当の席を設けた。ホンダやJTBのように,IT法務の専門組織を設け,IT法務リスクの軽減に努めているところもある。

 しかし,このような取り組みをしている企業は,まだほんの一部だ。IT法務の専門家がいないため,法務リスクを放置しているユーザー企業は多い。日経コンピュータでは,システム部門の一助となるべく,冒頭で紹介した特集でIT法務リスクを減らす各社の対策を紹介したり,IT法務に関連する書籍「基礎から学ぶSEの法律知識」も発行している。

 この問題に関連して,一つ気になることがある。IT法務リスクを軽減するために,「システム部員が法律知識を身につけるべきかどうか?」である。本来なら,専門家である法務部門や顧問弁護士がIT法務リスクに立ち向かうべきではないだろうか。システム部員の中途半端な法律知識で判断すると,かえってリスクを増大させるのではないだろうか——,などと考えてしまう。

 IT法務の専門家が少ない現状をふまえ,企業はIT法務リスクを減らすために,どのような取り組みをすべきか。以下のアンケートで,是非,みなさんのご意見をおきかせください。次回の企画で参考にさせていただきます。

■IT法務リスクを減らすため企業はどのような取り組みをすべきと思いますか?
(いずれか1つを選んでください)

システム部門にて法務分野に強い人材を育成する
法務部門にてIT分野に強い人材を育成する
システム部門や法務部門とは別にIT法務の専門組織を作り,そこで人材を育成する
その他(※自由意見欄)