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 “サンデー・プログラマ”などという言葉は,もはや死語になってしまったのだろうか。趣味でプログラミングをする人がいなくなったわけではないが,その多くは実は職業プログラマでもあったりする。プログラマ向け月刊誌「日経ソフトウエア」のアンケートでも,純粋に趣味でプログラミングを楽しんでいる読者は3割程度に過ぎない。

 25年ほど前,記者がプログラミングを始めたころは,「パソコンを使う」と「プログラミングをする」がほぼ同義であった。NECのPC-8001をはじめとする当時の8ビット・パソコン(当時はマイコンと呼ばれていた)の一般的なスペックは,メイン・メモリーが最大で64Kバイトしかなく,日本語(漢字)も少なくとも標準では表示/入力できなかった。要するに,ビジネスで使うには力不足だったのである。

 「花王のパソコン社内革命」(中経出版発行)がベストセラーになるなど,パソコンを業務に使おうという動きはあったものの,実際に業務で使っているケースは,現在と比べれば極端に少なかった。加えて,パソコンの出荷台数自体が少なく,さらに異なる機種の間で互換性がなかったために機種ごとにプログラムを作る必要があった。市販のアプリケーションがほとんどなかったのも当然である。

 その代わり,当時のパソコンは必ずBASICインタプリタを搭載していた。ユーザーは,自分でプログラムを組むか,もしくは「I/O」「マイコン」「ASCII」などのパソコン雑誌に掲載されたゲーム・プログラム(BASICのソース・コードやマシン語のダンプリスト)を何時間もかけて打ち込んで遊んだものである。当時のI/Oやマイコンは厚さが2センチ以上もあり,しかも記事のほとんどがプログラミングに関するものだった。読者の多くが,最初はソース・コードを打ち込むだけであっても,いつかは自分でプログラミングをするようになったのもうなずける。

 こんな昔話に付き合わせて,と感じた方も多いだろうが,現在第一線で活躍されている開発者の方々やソフトハウスの社長さんなどと話したときに,「実は私もゲームのダンプリストを打ち込んでいました」と言われたことは何度もある。ちなみに,エニックス(現スクウェア・エニックス)が当時としては賞金が高額なゲーム・コンテストを開催し,ゲーム・クリエータの卵を集めたのもこのころだ。ドラクエの堀井雄二氏をはじめ,何人かの有名クリエータがこのコンテストの出身者である。今思えば,記者は趣味でプログラミングを始めるのに一番いい時期を過ごしたのではないか,という気がしてならない。


PS3向けに初心者でもゲームを作れるツールがほしい

 「趣味でプログラミングをする人が減ったのはなぜか」---プログラミング関連の記事執筆をお願いしているライターの方々とこんな話になることが少なからずある。少し前なら,開発環境が高価であることがまず理由として挙げられた。昔のパソコンは標準でBASICインタプリタを搭載していたことを考えれば,説得力がある。

 作りたいものが見当たらない,という話も何度か耳にしたことがある。確かに,Windowsの世界では,「こんなものがあれば」と思っても,インターネットを検索してみると既に誰かが作ってしまっていることが多いのも事実だ。

 ただ,最近は状況が少し好転しているような気もする。開発環境が高価なことについては,Visual Basic/C#/C++ Express Editionなど無償の開発環境が増えてきた。作りたいものが見当たらないなら,PDAや携帯電話向けのソフトを作ってみてはどうだろうか。PDA/携帯電話向けのフリー・ソフトも既にたくさんあるが,Windwos向けよりは少ない。それに,小さいプログラムでもそれなりに使える,というのはWindowsにない利点だ。

 また,今ならNintendo DSやPSP(プレイステーション・ポータブル)用のソフトに挑戦するのもいいだろう。お子さんが使うソフトを手作りで,というのも励みになるかもしれない。

 もっとも,こうした状況の好転だけでは,かつてのサンデー・プログラマがプログラミングに戻ってくることはあっても,今の中学生・高校生がプログラミングを新たに始める理由としてはあまり強くない。そこで,記者がソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)にぜひお願いしたいのが,PlayStation 3(PS3)用に,誰でもゲームを作れるような簡単で安価な開発環境を出すことである。

 PS3上でLinuxが動くことや,何らかの形で個人ユーザー向けに開発環境が提供されるであろうことは,既に報道されている。ただ,記者が希望するのは,Linux上でgccを使うといった,コアな開発者向けのものではない。PS3のGPU(Graphics Processing Unit)やCELLの機能をフルに使える必要などまったくない。プログラミングが初めての人でも抵抗なく入っていけるようなものを出してほしいのである。もちろん,部品を組み合わせるだけでそこそこの見栄えのモデルが作れるような3Dモデリング・ツールも必要だ。

 今の若い人々にとっても,ゲーム・プログラマはなりたい職業の一つのようである。ところが,彼らにとって,ゲームはPlayStation 2などのゲーム専用機で遊ぶものであって,パソコンで遊ぶものではない。ゲーム開発とパソコンにおけるプログラミングが結びつかないのも当然だろう。

 ゲーム開発者の卵を増やすことは,SCEの将来を左右する非常に重要な事柄であるはずだ。仮に開発環境をタダで配ったとしても十分に投資効果があると思うのだがいかがだろうか。