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 「情報系ツールの本質はシンプル。日々の業績を追跡できるようにすること」---。およそ1年前の2005年7月,米SAP Labsの製品マーケティング担当副社長であるRoman Bukary氏は記者にこう答えた。かつてIT業界を彩った略語であるDSS(Decision Support System)やEIS(Exective Information System),あるいはCPM(Corporate Performance Management)やBI(Business Intelligence)はみな,共通する狙いを持っているという。
 
 Bukary氏はさらに,企業の業績を把握することは,全ビジネス・パーソンに共通の普遍的な需要なのだと続けた。

 Bukary氏が所属する独SAPはERP(統合業務パッケージ)ベンダーであり,現在では「NetWeaver」と呼ぶミドルウエアをベースに,BI企業としての色も強く打ち出している。同社のBIツール「SAP Analytics」を使いこなす主役は,経営層ではなく業務部門のエンドユーザー。基幹システムを含めた情報システム資源にポータル画面からアクセスし,会社の業績データを日々の意思決定に役立てる。例えば,売上目標を達成するというミッションの下,ある製品の価格を割り引いてよいかどうかを,業務全体に与えるインパクトをシミュレートしながら,現場の担当者が自発的に考えて意思決定する。

 もちろん,企業の戦略を立案するのはCEO(最高経営責任者)など経営層のタスクであり,業務部門にいるエンドユーザーのタスクではない。だが,CEOが立てた戦略を絵に描いた餅にしないためには,現場のビジネス・パーソンが企業の業績データに基付いて自律的・自発的に行動しなければならない,というわけだ。

 従来は,こうした業績データをベースとする経営意思決定は,経営層や経営企画部門のタスクだった。企業は,基幹業務で扱うデータを月次バッチなどで抽出し,時系列でアーカイブしたDWH(データ・ウエアハウス)を構築してきた。DWHから分析用のデータを切り出し,データ・マイニングによる傾向の把握や,OLAP(Online Analytical Processing)の多次元キューブを用いた業務分析などを実施してきた。こうしたデータは,中期経営計画や戦略の立案に使われてきた。

ゲーム感覚で仕事を楽しむ

 SAP Analyticsのように,いわゆるEUC(エンドユーザー・コンピューティング)の概念が,企業経営の意思決定の分野にまで進展していく様は興味深い。会社からマクロなミッションを与えられたうえで,ゴールに到達する手段の選択を全面的に委任され,個々のミクロな意思決定に必要な業績データへのアクセス権限を与えられる---。これは素晴らしいことのように記者の目には映る。

 現場の担当者は,経営層だけが把握しているような情報に対して,もっと貪欲になるべきではないだろうか。「見える化」は,部署ごとのパフォーマンスを経営層がレポート形式で把握する,という典型的なニーズだけでなく,個々の現場の担当者が創造的活動のために基幹システムの生データを利用する,というニーズにまで適用されるべきだろう。

 記者は個人的には,経営層だけが把握しているような業績データへのアクセス権限が与えられたら,純粋にうれしい。自分の工夫次第で,結果が良い方にも悪い方にも変わりやすくなるとすれば,言葉は悪いかもしれないが,“ゲーム感覚”で仕事を楽しめるからである。