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 9月のNTT東日本,10月のNTT西日本と相次いでIP電話の大規模障害が起こった。その都度,いろいろな説明は受けており,疑問点も問いただしているのだが,まだ釈然としないところも残っている。日経コミュニケーションでは2006年12月15日号の特集で改めてこの問題に迫っていく。どこまで真相に迫れるか期待してほしい。

 さて,このIP電話の障害問題と関連して,先日来記者の頭を悩ましているのがNGNだ。果たしてNGNはIP電話の障害問題からの救世主なのだろうか。

ひかり電話に通用しないNGNの「売り文句」

 NGNは「電話に求められる品質やセキュリティなどを加えたIP統合網」(NTT第二部門次世代ネットワーク推進室の雄川一彦ネットワーク戦略担当部長)であるという。当然IP電話の障害にも強いだろうと思うところだが,話はそれほど簡単ではない。

 NGNはIP網にさまざまな機能を追加する。例えば,ある特定の通信用に帯域を確保するQoS(quality of service)や,ある特定の通信を他の通信から分離するVPN(virtual private network)などだ。こういった機能を使うことで,IP電話のパケットをインターネットを流れるその他のトラフィックから守ることができる。これが,NGNがIP電話のインフラとして優れている理由だ。

 例えば,「050番号」が割り振られているインターネット接続プロバイダのIP電話サービスと比べると,こういったNGNの特徴は明らかにメリットがある。インターネットにどれだけトラフィックが流れても,IP電話の音質に影響を与えないからだ。しかし,NTT東西地域会社で障害を起こした現行の「ひかり電話」と比べると話は大きく変わってくる。ひかり電話のネットワークはもともとインターネットのネットワークと分かれているからだ。

 ひかり電話のパケットはユーザーから電話局までは,インターネットと同じ光ファイバの上で運ばれる。しかし通り道が同じなのはそこまで。局舎の中でインターネット向けのパケットと分離されて,ひかり電話の専用ネットワークに入る。さらに,電話の制御用パケットと音声のパケットとで別々のネットワークを使うという念の入れようだ。物理的に分かれているのだから,論理的にIP電話とその他のトラフィックを分けるNGNと比べても,安定したネットワーク環境である。

 このようにNGNの「売り文句」は,インターネットに対する利点にはなってもひかり電話に対する利点にはならないのである。

 NGNでは論理的に分離されているとは言え,同じネットワークの上にインターネットのトラフィックとIP電話のトラフィックが共存する。さらに放送のトラフィックなども乗ってくる。いざ障害が起こったときの問題の切り分けのしやすさという点では,不安が残る。例えば,今年初頭にIP電話障害を複数回起こしたケイ・オプティコムは,問題を切り分けやすくすることを重視して,従来共通だったネットワークを分離してIP電話専用のネットワークを構築中である。NGNはこういった障害対策優先のネットワークと逆行してしまうという懸念があるのだ。

NGNがIP電話の障害対策の決め手という意見も

 一方で,IP電話の障害問題を取材して回っている間に,「NGNこそ障害対策の決め手ではないか」という意見にも出合った。

 IP電話の障害を防ぐためには,管理・運用技術が上がっていくことが何よりも重要である。例えば,電話の輻輳(ふくそう)というのは日常的に起こっている。人気アーチストのコンサートの電話予約開始のときに電話がつながりにくくなる,などが代表例だ。大事なのは輻輳を起こさないことではなく,輻輳の影響が他に波及しないことである。そこで管理・運用の技術が問われるわけだ。

 これまで,このようなIP電話の管理・運用技術はノウハウとして各事業者の中で培われてきた。しかし,ネットワークが複雑化し規模が大きくなると,こういった地道なノウハウの積み重ねではなかなか追い付かなくなる。NGNでは,ある程度ネットワークの構成も標準化されるし,IP電話のプロトコルもこれまでより精密に標準化される。汎用のツールなどが期待できるようになる。これがNGNが障害対策になるという意見の根拠だ。

 筆者の考えとしては,NGNもまだ未熟な中,標準化の力にどれだけ期待していいのか,やはり不安はぬぐえないというのが正直なところだ。しかし,通信事業者だけの力では,NGN時代に対応しきれないというのは確かであり,標準化を前提にベンダーの力を借りる場面も出てくるだろう。例えば,海外の通信事業者はNGN構築や電話網のIP化において,細かい仕様を自分で決めるよりもベンダーに任せる傾向が強い。実際にある海外の通信事業者幹部にNTTのひかり電話の障害をどう思うか聞いたところ,「インハウスですべてやろうとしているのが問題ではないか。ベンダーを信用した方がうまくいく」と答えてきた。ベンダーの力はIP電話の障害対策でも決め手になるのだろうか。

 IP電話の障害対策もNGN構築も今まさに進行中のもの。何が本当の正解か分かるのは,まだしばらく先になるだろう。ただ,NTTをはじめとする通信事業者は,NGNをどう構築し,障害対策をどうやっていくのかユーザーに説明する責任があるだろう。NGNはこれから電話のインフラを担っていかざるを得ないからだ。

  12月20日に始まるNTTのNGNトライアルは,その一つの回答になるはずだ。日経コミュニケーションは12月15日にNGNのセミナーを開催する(詳細情報)。NTTはもとよりKDDI,ソフトバンク・テレコム,英BTとNGNを担う事業者が勢ぞろいする。そこでもIP電話をこれからどうしていくか,一つのテーマになるだろう。期待したい。