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 2007年4月,CSデジタル放送の普及に大きな影響を及ぼす新会社が登場する。同放送の顧客管理業務などを手掛けるスカイパーフェクト・コミュニケーションズと衛星運用事業者であるJSATが共同で設立する「スカパー・JSAT」がそれだ。同社はスカイパーフェクトとJSATの全株式を所有する持ち株会社となる。

 スカイパーフェクトとJSATは持ち株会社の傘下に入り,経営統合を実施する。ここではスカイパーフェクトとJSATの経営統合が,CSデジタル放送業界に与える影響について考えてみたい。

 まず2社の経営統合は,CSデジタル放送業界における長年の懸案事項であるハイビジョン化の問題を解決する契機になりそうだ。地上デジタル放送とBSデジタル放送ではハイビジョン画質の番組が珍しくない。ところがスカイパーフェクトが提供する東経124・128度CSデジタル放送「スカイパーフェクTV!」では,ハイビジョンの番組が放送されていない。東経110度CSデジタル放送「スカイパーフェクTV!110」にはハイビジョンの番組が存在するが,わずか2チャンネルで提供されているに過ぎない。CSデジタル放送の普及を目指すスカイパーフェクトにとって,同放送のハイビジョン化は避けては通れない問題である。

 スカイパーフェクトは2008年から2009年にかけて,CSデジタル放送のハイビジョン化を推進する。まずスカイパーフェクTV!では2008年夏に約10チャンネルでハイビジョン放送を開始する予定だ。2009年秋にはさらに約20チャンネルを追加して,合計30程度のチャンネルでハイビジョン放送を提供できる体制を構築したいとしている。また同社はスカイパーフェクTV!110のハイビジョン化も加速する方針だ。

CSデジタル放送のハイビジョン化を促進

 今後,スカイパーフェクトはCSデジタル放送事業者がハイビジョン放送を開始しやすくするための体制づくりに着手するとみられる。具体的には自社や子会社で通信衛星のトランスポンダ(電波中継器,以下トラポン)の利用権を確保し,他社が番組供給事業者としてハイビジョンの番組を提供できるようにすることを視野に入れているようだ。仮にスカイパーフェクトがこの構想を現実のものにすれば,放送事業者はトラポン料を負担する必要がなくなるため,ハイビジョン放送を実現しやすくなる。

 スカイパーフェクトはJSATとの経営統合により,資金や人材といった経営資源を強化できる。このため放送事業者がハイビジョン放送を提供しやすい体制の実現が,より現実味を帯びてきている。2社の経営統合は,CSデジタル放送のハイビジョン化の促進につながりそうだ。

 またスカイパーフェクトは今回の経営統合を機に,放送番組の制作や調達を推進する方針である。既にスカイパーフェクトは海外のプロサッカーリーグの中継番組といったキラーコンテンツを,スカイパーフェクTV!とスカイパーフェクTV!110の加入者に提供している。同社とJSATの持ち株会社が登場する2007年4月以降は,海外サッカーに匹敵するキラーコンテンツが新たにスカイパーフェクTV!などで視聴できるようになりそうだ。

 このようにスカイパーフェクトとJSATの経営統合は,CSデジタル放送のハイビジョン化の推進や放送番組の充実に結び付く可能性が高い。これらがCSデジタル放送の普及の呼び水となり,スカイパーフェクTV!やスカイパーフェクTV!110の加入者が増加すれば,スカイパーフェクトは放送事業者からより多くの業務委託手数料を徴収できるようになる。またCSデジタル放送業界の活性化を受けて,新規参入事業者が新たに通信衛星のトラポンを利用するようになれば,衛星運用事業者であるJSATも収益を底上げする可能性が高まる。

 ただし放送事業者については,CSデジタル放送の加入者の増加が自社の収益にどの程度プラスになるか,不透明な部分がある。スカイパーフェクTV!やスカイパーフェクTV!110の加入者は,チャンネルおよび複数のチャンネルを束ねた番組パックから自分の好きなものを選び,スカイパーフェクトと契約を結ぶ。放送事業者は自社運営チャンネルやそれを含む番組パックの契約数が多いほど,より多くの収益を獲得できる。その一方で,番組パックの販売数が少なければ,利益の確保が難しくなる。

CSデジタル放送業界のさらなる競争のトリガーに

 スカイパーフェクトは2007年以降,JSATとの経営統合によって拡充した経営資源を背景に,スカイパーフェクTV!およびスカイパーフェクTV!110の販促強化に乗り出す方針だ。例えば2007年は,日本のプロサッカー「Jリーグ」の全試合(約610試合)の生放送を開始し,これに合わせて地域マーケティングを展開する。Jリーグ中継の番組パックを手がかりにして,各地域の居住者のCSデジタル放送に対する関心を高めて,他のチャンネルや番組パックも売り込みたいとしている。スカイパーフェクトが新たに獲得した新規加入者のうち,どの程度の人が自社運営チャンネルおよびそれを含む番組パックを選ぶかによって,放送事業者の収益は大きく変化することになる。

 スカイパーフェクトとJSATの経営統合が契機となり,スカイパーフェクTV!およびスカイパーフェクTV!110の加入者が増加した場合,放送事業者がより多くの収益を獲得できる余地が生まれる。各社は収益増加を狙い,コンテンツ強化や番組のハイビジョン化を推進するだろう。このため筆者は2007年から,CSデジタル放送業界における放送事業者の競争が激化すると予想する。番組編成の強化やハイビジョン化に励む放送事業者が収益を増やす半面,他社との競争に負けてCSデジタル放送市場から撤退するところも出てくるかも知れない。2007年4月のスカパー・JSATの誕生は,CSデジタル放送業界のさらなる競争のトリガーになると思うが,いかがだろうか。読者の皆様のご意見をうかがえれば幸いである。