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 「日経ウーマン」が毎年選出する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2007」の大賞を,携帯SNSサイト「モバゲータウン」などを運営するITベンチャー,ディー・エヌ・エー社長の南場智子さんが受賞した。

 今回で8回目となる「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の歴史をひもとけば,ITベンチャー社長の受賞は南場さんが初めて。IT・通信関連では,NTTドコモでiモードをプロデュースした松永真理さんが第1回大賞,占いサイト「恋愛の神様」などのコンテンツ開発を手掛けたインデックス社長の小川善美さんが第4回大賞を受賞したが、いずれもヒット・メーカーとしての功績によるもの。今回受賞した南場さんは,創業6年目にして東証マザーズ上場を果たし,その後も業績を大きく伸ばした粘り腰の経営者としての手腕が評価された。

 過去3年の大賞受賞者は,遺伝子解析の研究者,唐木幸子さん。SRI(Socially Responsible Investment)コンサルタントの秋山をねさん。難民支援のNPO法人事務局長の木山啓子さん。それぞれ科学技術の発展や社会貢献といった面で素晴らしい功績を上げた女性ばかりだが,一方で不況を脱しきれない日本の実業界でこれぞといった快挙を成し遂げた経営者や事業家が見当たらなかったという見方もできる。女性が少ないIT業界にあって,女性IT社長の受賞は久々に明るい話題だ。

 南場さん自身は技術者ではない。しかし過去の失敗から技術の重要性を知り,技術革新と市場戦略との“連携”を図りながら,新しいネット・ビジネスを拓いてきた。最近になってこの“連携”がうまく機能しはじめ,業績を急拡大させる原動力になっている。

知る人ぞ知るトップ技術者集団

 南場さんはマッキンゼー・アンド・カンパニーの共同経営者の地位を捨て,99年にディー・エヌ・エーを創業した。当時は東京・渋谷周辺のビットバレーにネット・ベンチャーが集結し,長引く構造不況にあえぐ日本の閉塞感をインターネット革命で打破しようという気運で盛り上がっていた時期。コンサルタントからベンチャー社長への転身,しかも女性起業家とあってそのときは結構話題になった。

 だがディー・エヌ・エーは順風満帆に成長してきたわけではない。創業期の同社に投資し,その内情をよく知る日本テクノロジーベンチャーパートナーズの村口和孝氏は,ディー・エヌ・エーが99年に運営を開始したオークションサイト「ビッダーズ」の,オープン直前の火事場のような状況が今でも忘れられない。

 「オープンまであと1カ月というのに,外注していたシステムの開発が全く進んでいないことが分かった。金曜日に南場さんからその連絡を受け,月曜日の朝までの約50時間,事態をリカバリーするための対応に追われた。最善の対応策を考え,知り合いのシステムエンジニアに片っ端から電話をかけて協力を取り付け,何とか予定通りにサイトをオープンするめどを付けた」と村口氏は話す。

 取引先に,悪い状況をただ説明するだけでは経営者とは言えない。どのように問題に対処するか,今後の見通しはどうかを説明できるところにまで状況をリカバリーすることが重要だ。南場さんと村口氏も50時間でそれをやり抜き,月曜日に提携先のポータルサイトに説明に出向いた。その後は昼夜を問わず,文字通りの突貫工事でシステムを開発し,何とかビッダーズのカットオーバーにこぎ着けた。

 「まさに危機的な状況だったが,南場さんは腹をくくってよく乗り切った。とにかく解決への集中力がすごい。けがの功名ではないが,このときの失敗で技術の重要性を痛感し,優秀な技術者を採用して育てる経営を実践するようになった」と,村口氏は語る。

技術で先行し,市場戦略との連携図る

 ディー・エヌ・エーは2000年7月,複数のオークションマーケットをつなぐXMO(クロス・マーケット・オペレーター)事業を開始した。MSN,エキサイトなど複数のポータルに入口を設けながら出口のエンジンは1つというオークション・プラットフォームをリリースしたのである。だがネット・オークション市場でのヤフーの優勢を突き崩すまでには至らなかった。

 上昇気流に乗ったのは2004年3月に携帯オークションサイト「モバオク」をオープンしてからだ。まだ競合の少ない携帯オークションの分野で先行し,瞬く間にトップになった。現在の会員数は80万人,月間20億PV(ページビュー)を超えるサイトに成長した。

 さらに2006年2月にオープンした携帯SNSサイトの「モバゲータウン」が大ヒットを飛ばす。無料で数十種類のゲームができ,地図上に仮想の家を建てたり,アバターと呼ぶ自分専用のキャラクターを着替えさせて遊んだりできる。11月からは音楽配信やショッピング,動画投稿などの機能を追加した。10~20代を中心に会員は259万人,月間PVは49億に達する。

 なぜ,最近になって次々とヒットが生まれるようになったのか。「モバゲータウンは技術者が2カ月で企画し,開発した」という話もあるように,ディー・エヌ・エーでは技術者の裁量が大きく,スキルが高く評価される。しかも「経営,マーケティング,技術の担当者がふと見ると立ち話しをしている。とても風通しがいい」と村口氏が評すように,アイデアをすぐに形にする機動力がある。もともと成長するポテンシャルがあったところへ,PCから携帯へ主戦場を移すことによって,業績が急拡大したと言えそうだ。

 今年はどんなIT業界の顔が登場するのか。とても楽しみである。