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 1月30日,「Windows Vista」が発売された。午前0時からの深夜発売イベントが各所で催され,それなりに盛り上がったようだ。

 しかし,各メディアが報じるニュースでは,Windows 95や98の深夜発売に比べれば,盛り上がりに欠けたとのこと。USBメモリーや解説本といったオマケを付けた深夜販売限定のパッケージ「Windows Vista Ultimate α(アルファ)」でさえ,予定数を売り切れないショップが出ていた。「予約殺到」と報じられていたこの限定パッケージ,実際は翌朝並ばずに購入できたのだ。


目玉は3次元のAero,高いハードウエア仕様が要求される


写真1●Windows Vistaの「フリップ3D」
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 Windows Vistaには,「Windows Aero」(エアロ)と呼ぶ3次元デスクトップ環境が追加された。テレビCMでおなじみの「フリップ3D」(写真1)は,Aeroを利用した機能の1つだ。実行中のアプリケーションを「Ctrl+Tabキー」(Ctrlキーを押しながらTabキーを押す)で切り替えるときに,各アプリケーションをスライド状に並べてくれる。タスクバーにあるアイコンにマウス・カーソルを合わせると,アプリケーションのウインドウがサムネイル表示される機能も,Aeroによるものだ。

 マイクロソフトは,Aeroを利用するために,ビックリするほど高いハードウエア仕様を推奨している。例えば,Aeroを利用できるエディション「Home Premium」「Business」「Ultimate」の場合,メモリー(主記憶)は1Gバイト以上,グラフィックス・メモリーは128Mバイト以上,ハードウエアで3次元アクセラレーション(Pixel Shader 2.0)とそれに対応したドライバを用意する,といった条件を提示している。256Mバイト以下のパソコンには,インストールさえできない。

 最新型のパソコンでなくても,メモリーについては,増設すれば要求仕様は満たせる。しかし,問題はグラフィックス機能である。メーカー製パソコンで主流であるチップセット内蔵型の場合,インテル製だと945シリーズ以降のチップセットでなければ対応できない。945シリーズは,2005年5月に発表されたチップセット。わずか2年弱前に登場したチップセットでなければ対応できないのだ。それ以前のチップセット内蔵型パソコンを使っていたら,グラフィックス・カードを増設するしかない。もちろん,グラフィックスを増設できるスロットを備えていれば,だが。

 もっとも,Windows Vistaの良さは,Aeroだけではない。「Windowsサイドバー」やDVDのオーサリングといった新機能に加え,Webブラウザの「Internet Explorer 7」,メール・クライアントの「Windowsメール」といった最新版のソフトを備えたりする。

 しかし,DVDのオーサリングが必要なユーザーなら,既に商用ソフトを利用しているだろう。Internet Explorer 7は,Windows XPに無償でダウンロードして使用できる。そのほかの新機能も,使い勝手が向上するなどのメリットはあるものの,早急にVistaへのアップグレードを必要とするものではない。


Linuxでも起きている3次元デスクトップの波及


写真2●仮想デスクトップを立方体の側面に貼り付けたような形で表示して,切り替えられる。写真は,Red Hat Enterprise Linux 5で試したところ
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 Aeroのような3次元デスクトップは,Linuxでは以前から実現できていた。2006年に登場した「AIGLX」や「XGL」といった3次元デスクトップ環境を利用すればよい。もちろんどちらも無償で入手できる。Linuxは,コミュニティなどが複数のアプリケーションと組み合わせて,OSとして稼働する「Linuxディストリビューション」を配布する。このLinuxディストリビューションの最新版には,既に3次元デスクトップ環境が組み込まれているものが多い。ウインドウを半透明にしたり,デスクトップ画面を箱のように回転させて切り替えたりできる(写真2)。

 3次元デスクトップ環境は,サーバー向けの商用(有償)Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux 5」(2007年第1四半期中に出荷開始の見込み)でも標準で備えている。現在はベータ版が公開されており,実際使用してみると,AIGLXが利用でき3次元デスクトップを実現できた(Red Hat Enterprise Linux 5の新機能については,日経Linux 2007年3月号の特集「Red Hat Enterprise Linux 5の全貌」で紹介しています。ご興味のある方は参照してください)。

 AIGLXやXGLを利用するには,Vistaのように,3次元アクセラレーションを備えたグラフィックス機能とそれに対応するドライバが必要になる。ただし,Vistaほどシステム要件は厳しくない。メモリーは512Mバイトあれば十分に稼働できるし,256Mバイトでもインストールできる。3次元デスクトップを楽しむのであれば,低スペックなパソコンでも,無償のLinuxディストリビューションを使えばいいのだ。

 Windows Vistaの深夜販売は“失敗”に終わったと言っていいだろう。3次元デスクトップを利用したいというユーザーが少なかったことが,マイクロソフトの“想定外”だったのだ。

 ただ,そう考えると,そもそもLinuxを使う個人ユーザーにも,3次元デスクトップ機能を求めるニーズが少ないのではないだろうか。Vistaのビジネス・デスクトップ向けエディションである「Business」と同じく,サーバー向けのRed Hat Enterprise Linux 5に,3次元デスクトップが必要なのだろうか,筆者は疑問に思ってしまう。