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 最近はIT関連の大きな展示会やイベントに行っても,あまり得るものがないと思っていた。お祭りのような喧騒の中でブースを見て回っても印象に残るものが少ないからだ。しかし,先週それを反省した。

 2月7日から9日まで東京・お台場の国際展示場(東京ビッグサイト)で行われた企業向けのIT総合展「NET&COM2007」に,訳あって2日ほど詰めていた。正直に言えば,通信やネットワークの最新動向に関して,筆者はとても疎い。行けば何かが得られるという期待などしていなかった。しかし,そんな筆者でも,最新の通信/ネットワークのキーワードがすぐに言えるくらいに,今年のNET&COMは例年になくわかりやすかった。

 ここでは,筆者と同様に,通信/ネットワークの動向には疎いという技術者/開発者のために,私が学んだキーワードを紹介したい。NET&COMに行けなかった方や,参加した方々の中でこれから会社向けレポートを書かねばならないという人に少しでも役に立てれば,と思う。もちろん,この分野に強い方には自明のことばかりであることは,あらかじめお断りしておく。

 企業の情報システムやネットワークの分野で,今年から来年にかけて覚えるべきキーワードは,大きく六つある。(1)内部統制/日本版SOX法対応,(2)セキュリティ,(3)NGN,(4)仮想化,(5)Web 2.0,(6)WiMAX──である。これらの中で,NET&COMで特に印象深かった話題やニュースをピックアップする。

 今年は,上場企業の情報システムにおいて,日本版SOX法の核となる「金融商品取引法」への対策が本格化する。もはや“内部統制実施基準への理解を深める”といった段階は過ぎようとしている。しかし,いまだに誤解されている面もある。

 例えば,企業会計審議会内部統制部会長を務めていた青山学院大学大学院の八田進二教授は,NET&COM2007で行われた講演の中で,日本版SOX法への対応として,いわゆる“3点セット”(「業務フロー図」「RCM(リスク・コントロール・マトリックス」「業務記述書」)の作成は必須ではないという見解を示した。企業がすでに持っている文書を利用すればよく,必ずしも新たな文書を作成する必要はないという。これを聞いて,えっ?と思った経営者や担当者は再度,制度そのものへの理解を深める必要があるだろう。

 一方,内部統制対応向けの各種支援ツールも多数出展されていた。例えば,ログ保存・分析ソフトで蓄積した内部統制関連のログ情報と,社内の別の業務データを組み合わせたレポートを簡単に作成するといったものや,財務諸表などの作成にMicrosoft Excelを利用する部署に対して,Excelの操作履歴や計算式の変更履歴などを記録するソフトなどがそうだ。また,ユニークなところでは,ノートPCの持ち出し履歴を管理できる専用キャビネットといったハードウエアによるソリューションもあった。

 (2)のセキュリティ対策については,もはや企業システムでは常識である。ただ,今年以降は前述の内部統制の確立も視野にいれて対策を講じていかねばならない。例えば,多数のソリューション・プロバイダが企業の内部統制対応向けに,電子メールのアーカイブ・ソリューションを展示していた。ネットワークに流れるパケットを記録してやり取りを再現するフォレンジック技術を搭載したものなどが目立った。

 Windowsサーバーの管理・運用者にとっては,米Microsoftが2007年にリリース予定の次期サーバーOS(開発コード「Longhorn」)も気になるところだ。Longhornには,「NAP(Network Access Protection)」と呼ぶ新しいセキュリティ関連機能が搭載される。NAPは,検疫ネットワーク・システム(ノートPCなどを社内のネットワークに接続したときに,安全なPCかどうかを検査する隔離されたネットワーク)を構築する仕組みだ。そのNAPを使ったセキュリティ・システムのデモも見られた。

 (3)NGNは,これまでは言葉だけが先行し,なかなか実体がつかみにくかった。しかし,2006年末にフィールド・トライアルが始まり,いよいよ新しいサービスやアプリケーションの一端が見えてきた。わかりやすい例では,パソコンを使ったテレビ会議の途中で外出する際,テレビ会議サービスの端末をパソコンからPDAや携帯電話に動的に切り替えるといったデモが見られた。いつでもどこでも通信できるというNGNの可能性を示す具体例だ。

 NTTデータの松田次博氏は講演の中で,NGNは「通信事業者のネットワーク資源をAPIとしてユーザー・アプリケーションに開放すること」であり,通信事業者の持っている様々な機能を企業ユーザーから使えるようにするものだと説明した。NGNは,企業にとって大きなビジネス・チャンスである。今後新しいサービスが次々に登場するだろう。

 次世代システムのもう一つのカギとなるのが(4)の仮想化技術である。サーバーやネットワークなどの物理的なリソースを覆い隠し,論理的な利用単位にカプセル化(仮想化)することで,IT環境をより扱いやすく管理しやすい形にする。NET&COM2007では,様々な企業が仮想化技術関連の展示やデモを行った。例えば,前述のLonghornサーバーでは,仮想化機能「Windows Server Virtualization」が標準で搭載される。ブースでは実機によるデモが見られた。

 また,オープンソースの仮想化ソフト「Xen」を企業向けに機能強化した製品により,導入コストを下げるといったソリューションがある一方で,独自のチップセットによるハードウエアでの仮想化でTCOを削減するといった発表があった。このように様々なレベルや粒度での製品や技術が見られ,着々と仮想化の現実解が増えていることが実感できた。

 (5)のWeb 2.0は,もはや“今さら”な感じがするかもしれない。しかし,カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭社長の基調講演から,時代にマッチしたITインフラを構築し,Webやメールを活用した事業戦略をたてることは,今もって重要なテーマであると再認識した。増田社長の電子メール配信の広告効果が伸びている話は,個人的には意外であり興味深いものがあった。

 Web 2.0に関してはその他にも,注目すべき話題があった。例えば,リナックス ビジネス イニシアチブ(LBI)が開催したセミナーでは,他のサイトのサービスを利用する,マッシュアップ的な検索サイト「Weblio」(200以上の辞書/事典を一度に検索できる)で,いかにして軽快な動作を安価に提供するかといった発表があった。また,圧縮接尾辞配列と呼ぶアルゴリズムを採用して,Googleの弱点を克服したという検索エンジン「Sedue」の紹介もあった。

 (6)WiMAX(ワイマックス)は,数kmから数十kmといった長距離で利用できる無線通信技術である。国内では同技術によるサービスはまだ提供されていないが,携帯情報端末などの移動体での利用が可能な「モバイルWiMAX」に注目が集まっている。NET&COM2007では,モバイルWiMAXの実機を使ったデモが見られた。また,モバイルWiMAXの環境で,外出先から録画番組を視聴可能にする映像管理ソフトなどのアプリケーションの実演もあった。新たなモバイル通信サービスは実用段階に近づいている。

 2007年の情報通信は大きな変革期を迎えている。現段階で直接的に関わらない技術者/開発者も,IT業界にいる限り,いずれどこかでこれらの変革に巻き込まれるに違いない。そのときになってあわてないよう,知識武装をしておくことは重要だ。