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 日本で話題になるソフトウエア(サービス)製品といえば,ほぼすべてが海外製。WindowsVistaやMS Office2007しかり,Salesforce.comのSaaS(Software as a Service)しかり,あるいはGoogle Officeしかりだ。オープンソース分野でも,知名度が高まっているCRMソフト「SugerCRM」はやはり米国製だ。今に始まった話ではないが,日本の商用ソフト製品は,日本で存在感を発揮し,そして海外でも受け入れられる存在になれないのか--。そんな思いを持っていたが,これはいけるかも知れないと思えるソフトが最近いくつか登場した。

 その一つが,ソフトアドバンス製の3Dプレゼンテーション・ソフト「PREZVISION」だ。3Dプレゼンというと,立体画像を駆使して自動車や電機製品などの物体(製品)を紹介するためのソフトに思えるが,そうではない。PREZVISIONはマイクロソフトのPowerPointと同様の一般的なプレゼンテーション用途を想定し,スライドの作り方などの操作性もPowerPointに慣れた人なら,すぐになじめるソフトだ。

 特徴は,まずプレゼン資料でよく使う四角形や円,グラフなどの2次元の図形を簡単なマウス操作で奥行きを付加し,3D化。視点を自在に動かせるようにしたこと。そして同じ図形要素を使って視点が異なる2枚のスライドを作ると,それだけでプレゼン実行時に2枚のスライドの違いを自動補間して,アニメーション表示をしてくれることだ。言葉では説明しにくいが,ソフトアドバンスのWebサイトにあるQuickTimeムービーを見れば一目瞭然だろう。プレゼン資料を印刷して配布しにくいのは問題はあるものの,図形に文字や動画を張り込めるので印象の強い,動きのあるプレゼン資料を簡単に作れる。

 普通,アニメーション的な表示をさせようとすると,光源の位置や回転方向,図形移動の仕方,時間軸など,細かな設定が必要。PREZVISIONでは,この点を割り切ってソフト側が行う。「操作に習熟が必要で作成に時間がかかるようでは,たとえインパクトのあるプレゼン資料を作れるとしても意味がない」からだ。このあたりの操作性の煮詰めやユーザーインタフェース画面の洗練度などは,かなり良くできている。

 ただし今のところ,PowerPointとの互換性など課題もある。前述したとおり,操作性の点ではPowerPointに慣れた人にはほとんど問題ないし,ppt形式のファイルを読み込む機能もある。ところが実際に読ませようとすると,うまくいかないことがあるし,うまくいく場合でもかなり時間がかかるのだ。もう一つ,Windows VistaのAEROが動作するスペックのPCでないと,スムースに表示できないのも欠点だろう。特にノートPCを使うことが多いプレゼン用途では注意が必要だ。とはいえ特にPowerPointのデータを扱う機能を高めれば,日本のみならず海外でも売れる可能性が高いと思わせる製品である。

 沖縄県那覇市に本社を置くジャスミンソフトが販売しているソフト,「Wagby」も面白い。サイボウズの「デジエ」などと同じWebデータベースと呼ばれるジャンルの製品で,Webブラウザからデータの参照・検索・更新を行えるシステムを作るツールである。いくらでもありそうな製品だが,Wagbyのユニークな点は,Excel形式のファイルをWagby(のアイコン)にドラッグ&ドロップするだけで,そのExcelファイルと同等のデータベースを生成(実際にはJavaプログラム)し,Webからアクセスしたり複数の利用者が共有するシステムを作れることだ。その際,データの内容から項目の属性を推論してデータベースを構成する。

 それだけではない。WagbyはExcelファイルを読み込む際に,「定義ファイル」を生成している。この定義ファイルを利用者が変更できるので,画面レイアウト変更,ヘルプ文言の追加,入力チェックルールの付与など,ニーズに合わせたカスタマイズができるのだ。さらに定義ファイルからJavaのソースコードを生成するので,Javaの知識があれば,きめ細かくカスタマイズすることもできる。

 つまり初心者(エンドユーザー)にはドラッグ&ドロップ,ある程度慣れた人には定義ファイルのカスタマイズ,システム開発会社などプロが使う場合にはJavaソースの変更といった具合に,ユーザーのレベルに応じて使い方を変えられる。データ管理も標準ではJavaプログラムで行うが,外部データベース--Oracle,SQLServer,DB2,SQL Anywhere,PostgreSQL,MySQL--を利用できるようにもしている。「敷居が低い」という意味で,中堅・中小企業や大企業の部門単位で使う分には,かなりいけそうに思える。

 ジャストシステムの「xfy」にも注目していい。XMLデータに付き物の様々な規格を意識することなく,ワープロに近い操作性でデータの編集や組み合わせ処理,変換,共有などを行えるツールだ。これまでは「技術的には確かに先進的。だが何に使えるかがはっきりしない」という評価が一般的だったが,ここへきて用途がクリアになってきた。

 その一つが内部統制における文書化支援である。周知の通り,内部統制では「業務記述書,業務フロー,リスクコントロールマトリックス」という,いわゆる3点セットの文書を作成しなければならない。これをワープロや表計算ソフトで作成すると,量が膨大になるだけにメンテナンスが大変。XMLをベースにするxfyのようなツールを使えば,文書や文書内の情報を関連づけることができ,例えば業務フローの一部を修正すれば業務記述に自動反映することが可能になる。「ワンファクト・マルチビュー」という,XMLの特性が生きる用途だ。

 ジャストシステムによるともう一つ,BI(ビジネスインテリジェンス)という用途もある。企業内に散在するXMLデータやインターネット上のデータをリアルタイムで集約し,グラフなど適切な形で表示する用途での引き合いが出てきているという。そこで同社は3月23日,「xfy enterprise edition1.5」を,日本,北米,欧州で同時発売した。

 筆者は,ほかにもインフォテリアのEAI製品「ASTERIA Warp」,ERPや業務パッケージの総合接続保証を目指す「MIJS(Made In Japan Software)コンソーシアム」,アクシスシフトが開発中のビジネスパーソン専用のメーラー「BizMail」などに注目している。だが,ジャストシステムを除けば,紹介したソフトや取り組みはいずれもベンチャ中心のものだ(最初に紹介したソフトアドバンスは秋田市に本社を置く,設立6年に満たない社員13人のベンチャ企業)。

 これらのベンチャ企業に比べると,大手IT企業の動きはいかにも鈍い。一例を挙げよう。今,サーバー台数の急増や仮想化に伴い,システム・プラットフォームの大規模化,複雑化がどんどん進んでいる。これに対処するため,統計処理機能や推論機能を組み込んだ新しいタイプの運用管理ツールが出てきている。米EMCの「smart」や,米Opswareの「Opsware」などだ。ところが運用管理製品を擁する日本の大手からは,筆者が知る限り,そういった製品は出てきていない(NECは運用管理ツールであるWebSAMの一要素としてOpswareを販売)。

 本来,この種の機能強化や改良は日本企業の得意分野のはず。なぜ自ら開発しないのか。ある外資系IT企業のマーケティング担当幹部は,こう見る。「彼らは同じ会社の中に運用を含めたアウトソーシング部隊を持っている。だからツールを使って運用管理を合理化すると(作業量が減って売上が)マイナスになる。運用費に関しては,顧客はきちんと払うので,合理化の必要もない。余計なことはするなというパワーバランスが働く」。さすがに少々うがちすぎと筆者は考えるが,技術力はあるのに製品を開発しないなら,そう見られても仕方ない。ベンチャだけでなく,大手の頑張りも期待したい。