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 記者の醍醐味の一つは,興味のある人物に直接会って話せることである。最近,「SaaS & Enterprise2.0」というテーマサイトの編集責任者を務めるようになって,Enterprise2.0やWeb2.0関連の取材が増えた。そこで感じるのが,インタビューの現場に愛用のMac,正確に言うならMacintoshを持ってくるキーパーソンが多いことだ。

それがBSDをベースにしているからだ

 直近の例は,ネットの無料百科事典サービスであるWikipediaの創設者であるジミー・ウェールズ氏だ。同氏にお目にかかったのは3月30日,Wikipediaと同じMediaWikiというソフトを使ったホスティング・サービス,Wikiaについての記者会見だった。

 そこで見かけたのがMacである。ウェールズ氏は世界的に有名なロックバンド,U2のボーカルであるボノ氏とおぼしき人物と2人の写真を壁紙にしたMacで,Wikiaの事業についてプレゼンテーションした。

 どうしてMacなのかを尋ねたところ,同氏ははっきりと「BSDをベースにしたOSであることが大事」と話した。実際,ウエールズ氏がMacを使い始めたのは,BSDをベースとするMac OS Xを搭載するようになってからだという。

 ウエールズ氏の場合,ノート型のMacを単なるクライアント機として利用するだけではない。サーバーとして,Wikipediaを利用できるようにもしているとのことだった。

 2月にも,Macを使う2.0のキーパーソンに会った。Web2.0を代表する技術の一つであるAjaxを全面採用したオープンソースのWebグループウエア「Zimbra Collaboration Suite(ZCS)」を開発する,米ジンブラのサティッシュ・ダラマージ創設者兼CEO(最高経営責任者)がそうだ(関連記事「「すべてがデスクトップからブラウザに移動する」と米ジンブラのダラマージCEO」)。

 ZCSはオープンソースのソフト。ダラマージ氏はAjaxの普及を目的としたOpenAjax Allianceの創設者の一人でもある。インタビューでは,オープンであることの良さを繰り返し語っていたことと、米アップルのiPhoneに強い関心を示したことが印象的だった。

伊藤穣一氏はMacから電話をかけた

 もともとEnterprise2.0やWeb2.0にかかわるキーパーソンとMacの関係を意識するようになったきっかけは,およそ2年ほど前,ブログ検索サイトである米テクノラティの創業者兼CEOであるデビット・シフリー氏にインタビューしたことだ。この時には,「口コミならぬ最新のネットコミが分かる検索サービスが登場」という記事を書いた。

 もっとも,Macとの関係について強い印象を受けたキーパーソンとは,シフリー氏ではない。このインタビューに同席していた,伊藤穣一氏である。伊藤氏もまたMacを持っていた。

 このシフリー氏へのインタビューの最中,突然,電話の呼び出し音らしきものが鳴った。最初は,やはり取材に同席していた当時のテクノラティ日本法人幹部の携帯呼び出しかと思ったが,実は伊藤氏がノート型のMacにインストールしているオープンソースのIP-PBXソフトのAsteriskか、それに類するソフトによるものだったのだ。

 もし間違いなら申し訳ないが,伊藤氏は当時,「一時はWindowsパソコンを利用していたが,OS XになってからMacをまた使い始めた」と話したと記憶している。理由は,Mac OS X上で動作する、様々な面白いソフトを扱うことができるからだろう。Asteriskに限らず,ネット関連の新しいアプリケーションは,オープンソースのOS上で開発されることが少なくない。

 伊藤氏については,1990年代後半,日本のネットの黎明期を切り開いた人物というイメージをお持ちの方も多いかもしれない。だが記者にとっては,テクノラティや代表的なブログ・ソフトのMovable Typeを開発するシックス・アパートとのかかわりの方が印象が強い。最近も,ビジネスパーソン向けのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)として成長している米Linkedinのリード・ホフマン会長が,ITproのインタビューで,伊藤氏の名前を挙げていたことが印象的だった。伊藤氏も2.0の人ではないだろうか。

 以前,ソフトバンクの孫正義社長が,「タイムマシン経営」という言葉を使っていたのをご記憶の方もいるだろう。米国よりも日本の方がネット・ビジネスの進展が遅いことに着目し,米国で成功したベンチャーやビジネス・モデルを日本で展開する経営手法のことだ。伊藤氏がどう考えているかは別として,孫氏よりも同氏の方が高性能のタイムマシンを持っている,と記者は感じている。

改めて感じる2.0とオープンソースの相性の良さ

 Web2.0とオープンソースの相性の良さは様々なところで語られている。あえて乱暴にWeb2.0の最大の特徴を挙げるなら共同作業ということになるだろうか。オープンソースはそもそもネットを介した共同作業を前提としたものだ。オープンソースと親和性が高い,BSDを母とするOS XのMacが,2.0のキーパーソンに愛されるのはある意味では当然のことなのかもしれない。

 こう考えるのは記者だけではないようだ。ITproのテーマサイト「オープンソース/Linux」を担当する高橋信頼記者も,「オープンソース関連でキーパーソンに会うと,Macを利用していることが増えている」と話していた。日経ソフトウエア編集部の何人かの記者にも尋ねてみたが,ソフトの開発が大好きな人に会うと,Macを使ってない人がむしろ珍しいという印象なのだそうだ。

 果たして,記者のこの仮説はどこまで正しいのか。次にMacを愛用するキーパーソンに会った時にも,「どうしてMacを使っているのですか」と質問してみるつもりだ。