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 Windowsの最新版「Vista」が鳴り物入りで登場してから3カ月弱。マイクロソフトからは3月末に「発売後1カ月で2000万本というXPの約2倍という過去最高のペースで売れている」と発表があったかと思えば,つい最近になって「パソコンの売り上げに与えた影響は期待したほど大きくなかった」という発言もあった。

 筆者の周りを見てみるとVistaを使っている人は,まだほとんどいない。おそらく読者の周辺も似たような状況で,実際のところはどうなのだろうと思っている人が多いのではないか。そこで,この約3カ月間Vistaを間使い続けてきた筆者が実感していることを,書いてみよう。

高解像度ディスプレイを前提とするVista

 まず,率直な感想を言うと,筆者はVistaを割と気に入っている。今では日常作業の多くをVista上でこなすまでになっており,現在もこの原稿をVistaの上で書いている。

 どこが気に入っているかというと,やっぱり画面周りを中心とした操作性だ。とはいっても,雑誌やWebの記事で「Aero」の代表例として取り上げられる半透明の画面や,複数のウインドウを斜めに3D表示してクルグル回せるといった「フリップ3D」の画面ではない。これらは初めて見たときには確かにインパクトがあるが,実際に使い続けていると案外どうでもいい機能である。半透明ウインドウはきれいだが,実際に使っていて便利だという実感はあまりない。フリップ3Dの画面にいたっては,わざわざ人に見せるとき以外にほとんど使ったことはない。

 では,どこがよいかというと,Vistaでは想定している画面の標準解像度がXPよりも大きくなっている点だ。Vistaでは,デスクトップに表示するアイコンのサイズがXPよりも大きい。パソコンのデスクトップとは,いわゆる物理的な机の上と同じようなもの。よく使うプログラムやファイルについては,ショートカットをデスクトップに置いたりするだろう。このデスクトップに置くアイコンがXPより大きいのだ。

 これはVistaを使ってみて,すぐに気が付いた。Vistaを導入する際には,もちろん既存のXPパソコンもそのまま使い続けていた。そのとき,一つのディスプレイを同じ解像度のまま切り替えながら,VistaとXPを使い分けていたのだが,そうするとVistaに切り替えたときにデスクトップが何となく狭くなったように感じたのだ。

 改めて比べてみると,Vistaを標準で使っているとデスクトップのアイコンとフォントのサイズがXPよりも明らかに大きくなっていた。それで,相対的に画面が狭くなったように感じたのだ。どのくらい狭くなったように感じたかというと,1024×768の画面が800×600くらいのサイズで使っているような感覚だ。

 これではたまらないと思ったので,1680×1050という高解像度のディスプレイに替えてみた。すると,これが想像以上に快適だった。デスクトップ上にアイコンがいっぱい表示できるように広がっただけでなく,個々のアプリケーションを起動したときに使える作業領域も広がって一気に仕事がはかどる(気がする)ようになったのだ。

 もちろん,これはディスプレイの解像度の問題なので,そのディスプレイを使えばXPでも同じ解像度で表示はできる。だが,XPでは標準のアイコンやフォントのサイズが小さいので,その解像度で使うと逆にデスクトップが広大過ぎる。もちろん,フォントのサイズは変えられるのだが,やはりXPの出た当時はそこまでの解像度は想定していなかったのか,しばらく使っているうちに目がなんとなく痛くなってしまう。やはり,想定された環境にそれぞれチューニングされているのだろう。

 そこで,今ではVista用の新しいディスプレイと,XP用の古いディスプレイの2台を机の上に並べて使っている。そうすると,当然のように自然とVistaのほうを使ってしまうのだ。

最小化されたプログラムのサムネイルで簡単な情報を把握

 それ以外にも,Vistaで便利だと感じている部分があるので紹介しよう。例えば,デスクトップ画面の下にあるタスクバーで,起動しているプログラムの画面のサムネイルを表示するようになった。最小化されたプログラムにマウスのカーソルを持って行くと,そのプログラムの画面を小さく表示してくれるだが,これが意外と便利だ。この機能は,プログラムの切り替えをするときに便利といわれることが多いが,筆者はむしろいちいち画面を開かなくても簡単な情報なら把握できる点が気に入っている。

 例えば,降雨情報の画面を最小化しておけば,「そういえば外は雨が降っているのかな?」と思った時には,マウスを持って行くだけで「あっ,降ってそうだ」とか「大丈夫そうだ」というのが分かる。また,動画サイトにアクセスしてBGM代わりに流しながら別の作業をしているときも,たまたま気になる話の部分が出てきたときにマウスを持って行くととサムネイルの小さい画面で表示できる。それで本当に面白そうな情報ならば,クリックして通常のウインドウ・サイズに戻せばよい。いずれも,ウインドウを開いてまた最小化するという作業が省略できるだけだが,結果として途中で作業が中断されることが少なくなり,ストレスを感じずに済むのだ。

 もう一つ,フォルダやファイルのプロパティに増えた「以前のバージョン」というタブも気に入っている(この機能はBusiness/Enterprise/Ultimateといったビジネス向けエディション限定)。これは,フォルダやファイルを勝手にバックアップしてくれるというものだ。このタブを開くと,そのフォルダやファイルの過去のバージョンが一覧表示される。そこから選択するとその時点にさかのぼって情報を取り出せるのだ。つまり,もし間違って削除してしまったり,上書きしてしまったりして昔の情報を戻したい,といったときに簡単に復活できる。言ってみれば,ごみ箱のさらに進化した機能がすべてのフォルダやファイルに付いていると思えばいいだろう。

 これは意外と便利である。削除したファイルはもちろん,うっかり消してしまったExcelのセルのデータについても,ファイルごと復活させてから,現在の最新のワークシートにコピーすれば,簡単に戻せるのだ。実際にバックアップするのは1日1回なので直前の情報には戻せないとか,1カ月以上前の情報はなくなっているとか,バックアップとしてはゆるいものだが,実用的には十分便利なものと言えるだろう。

 と,Vistaで気に入っている部分をいろいろと書いてきたが,では改めてそのためにVistaの導入を他人に積極的に勧めるかというと,なかなかそこまでは言い切れない。例えば,ユーザー・インタフェースの部分でメリットを感じるためにも,OSだけをXPからVistaに入れ替えても仕方がない。やはりVistaを使うには,パソコンやディスプレイといったハードウエアを含めて,新しい環境に一新するのが正しい導入法だろう。何十万円も投資して,今すぐ入れ替えるべきかといえば正直疑問である。

 Vistaは単なる「最新版のWindows」で,それ以上でも以下でもないというのが,これまで使ってきた筆者の実感だ。もちろん,これからパソコンを買うのに,あえてVistaを避ける理由もない。実際に使ってみると,Vistaの完成度は事前に想像していたより高い。ウリの一つとしていた「スタンバイによる高速起動」だけは,いくつかのWebサイトで報告されているようにシステムが不安定になる面があるが,それ以外はほぼ安定して動いている。Windows XPやWindows 2000が登場した当初に比べれば,はるかによくできていて十分に安定していると感じている。

 Vistaの売れ行きが期待外れだという人がいたら,それはパソコンの売り上げが伸び悩んでいると感じた人が,救世主としてVistaに過剰な期待をしていただけの話だろう。今使っているWindowsパソコンをわざわざ入れ替える“目玉”の役割をVistaに期待するのは,さすがに虫がよすぎる。そもそも,Windows 95やXPが登場したころと比べて,ユーザーのパソコンに対するニーズが飽和状態にあるのに,Vistaが出ればすべて解決してくれると考えるのは,あまりに虫がよすぎる。筆者としては,Vista登場の前後でパソコンの売り上げが特に大きな変動なく推移しているというのは,むしろ正常だと感じている。

 Vistaのできのよさから考えて,パソコンの入れ替えが進むにつれてWindowsパソコンの標準OSがいずれVistaに変わっていくのは間違いないだろう。筆者としては,そのときちょっとだけ気を付けてもらいたい。高解像度のディスプレイを使ったVistaでの作業は,使ってみるとなかなかクセになる。せっかく高いお金を払うのなら,ぜひちょっとだけ奮発して,そういった快感を期待できるパソコンを買ってみてほしい。