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 「DoCoMo 2.0って何なの?」。知人などから最近,よく聞かれる質問がこれだ。店頭でも電車の中や街頭の広告でも,テレビCFでも,赤い★印に“DoCoMo 2.0”の文字を目にする機会は多い。しかし,DoCoMo 2.0が何を示すのかがよく分からないから,冒頭の質問が出てくるようだ。

 “DoCoMo 2.0”のキャッチフレーズがお披露目されたのは,4月23日に開かれたNTTドコモの「FOMA 904iシリーズ」発表会の席上だった。壇上に立った夏野剛執行役員は「904を皮切りにドコモは反撃に出ます。信じられない機能や新しいゲーム,音楽スタイルで,ケータイの波を起こしていきます」と宣言した。その進化のキャッチフレーズが“DoCoMo 2.0”だった。

××2.0は数多くあれど…

 Web2.0から始まって,さまざまなシーンで「××2.0」という言い方を耳にする。特にIT系に身を置いている読者の方々ならば,少なからず××2.0に触れてきたことと思う。ある種,手アカがついた言い回しにもなりつつあるフレーズである。夏野執行役員は,アンケート調査などをした結果を引き合いに,××2.0が一般にはまだ陳腐化しておらず「ちょうどいい表現」と認識されると説明した。これをもって,ドコモの“反撃”の旗印とするというわけだ。

写真●DoCoMo 2.0のお披露目
写真●DoCoMo 2.0のお披露目
904iシリーズの発表会でNTTドコモの夏野剛執行役員が“進化”を説明した。
 そのDoCoMo 2.0,何が新しいのだろうか。904iシリーズの発表会でDoCoMo 2.0の説明として出てきたのは,1台の携帯電話で2つの電話番号と2つのメールアドレスを使い分けられる「2in1」や,電話機を振ったり傾けたりして遊べる「直感ゲーム」,音楽を月額定額料金でダウンロードし放題にできる「うた・ホーダイ」など。このほかにも,ケータイバンキングを使いやすくした「iアプリバンキング」やオークションの出品などを簡単にできる「楽オク出品アプリ」,長時間の動画を試聴できる「ビデオクリップ」など,機能やサービスを強化した項目がずらりと並ぶ。

 しかし,私にはこれらが「××2.0」と名乗るほどのインパクトのあるものには感じられなかった。携帯電話の歴史を振り返れば,1999年にiモードのサービスが始まった時は,まさにそれまでの携帯電話から“ケータイ2.0”に進化したと言えただろう。旧J-フォン(現ソフトバンクモバイル)がカメラ付きケータイを初めて世に送り出したことも,2.0的な進化だったかもしれない。それらに対して,2つのメールアドレスを使えるサービスや電話機を傾けてゲームできることが,より強く携帯電話の進化を感じさせるとは思えないのである。

2in1は契約数の増加大作戦?

 DoCoMo 2.0として挙げられた機能やサービスの中で,筆頭にくるのが2in1サービスである。電話番号とメールアドレスをそれぞれ2つ持ち,プライベートとビジネス,私信用とメルマガ用など,生活のシーンによって2つのモードを使い分けられるというのがウリ。NTTドコモは,月額945円の料金で携帯電話を2台所持するのと同じような使い分けが,1台の端末上で可能になると説明する。

 2つのモードは1台の端末上にあるけれども,電話帳やメールボックスは異なるモードでは見られず,AモードのときにはBモードへの着信は留守番電話に転送するといった設定ができる。「仕事中はプライベートの電話やメールに出ない」「休暇中に仕事の電話が飛び込んでくることを防ぐ」といった使い分けをしたい人には便利なサービスである。NTTドコモによれば,5月25日にサービスを開始してからのユーザーの反応は上々だという。もちろんこのサービスが便利なシーンはあるだろうし,登場を待っていたユーザーもいるだろう。とは言え,これが携帯電話の本流として何かを大きく変えるムーブメントになるようなサービスとは感じにくい。

 ちなみにNTTドコモは4月の発表会の席上で,2in1の2つめの番号を統計上では別の契約としてカウントすると明言した。端末は1台でも,2in1で獲得した契約を月間の純増数などに上乗せするというものだ。

 携帯電話は過半数がドコモユーザーという現状でありながらも,単月の増減では苦戦が報じられる。このため,2in1の2つめの番号をカウントするのは,契約数の上乗せを図る裏技なのかとうがった視点でも考えた。なりふり構わぬことが“DoCoMo 2.0”なのかと…。しかし6月末には,総務省が「2回線目は副次的な回線であり統計上は1回線として扱うように」と指示したという報道があった。そうなれば,見かけの契約を増やすもくろみは(それが本当にあったとして),狙いを達することができなってしまったわけだ。

 直感ゲームは,試してみたところそれなりに面白い。家庭で遊ぶゲームとしては“ハマる”人も出てくるだろう。うた・ホーダイも音楽をたくさんダウンロードして聴きたい人には朗報だ。しかし,通勤電車でケータイゲームを楽しんでいる多くの人には電話機を四方に傾けるゲームはフィットしないだろうし,音楽はケータイ以外にもいくらでも聴く手段はある。どれを取ってみても,ニッチなサービスに感じるのだ。

それでも2.0

 提供されるサービスや機能からDoCoMo 2.0を解こうとしても,どうにも答えが見つからない。でも,どこかに2.0たるゆえんがあるに違いない。

 携帯電話サービスをいち早く始め,iモードを作り,おサイフケータイを作りと,ケータイを通じてライフスタイルの変革を提案してきたのがNTTドコモであることに異論はあまりないだろう。一方で,王道を行くドコモに対して,他社はカメラ付きケータイや着うたなど,ケータイで楽しむ付加価値を先行して市場に問い,それを武器にシェアを伸ばした時期があった。当初のユーザーは少ないかもしれないけれど,熱心に支持してくれるユーザーがいるサービスや機能の提供---こんな部分では,ドコモは他社に後れを取っていたのかもしれない。

 ここ1~2年,ドコモは変わりつつあるように感じることがあった。例えば2006年に,法人向けとはいえ日本語化もしていないBlackBerry端末を提供したことは,かつてのドコモでは考えられなかった英断だろう。必要としているユーザーがいるからサービスや端末を用意する。そうした柔軟なスタンスの一つの表れと感じた。DoCoMo 2.0で取り上げられたサービスも,それぞれのサービスや機能は万人に受けるものではないとしても,望み喜ぶユーザーはいるだろう。多様なユーザーがいても,それぞれにフィットしたサービスがあれば,全体としての満足度は向上するはずだ。

 そういえば,ドコモは決して“ケータイ2.0”と言っているわけではなかった。そう,“DoCoMo 2.0”はケータイの進化というよりも,ドコモの変化への意思表示と考えると分かりやすそうだ。ユーザーが求める(かもしれない)多様なサービスを他社に先駆けて提供するといった方針を,あえて2.0の看板を掲げることでユーザーだけでなく自社内にも浸透させるというあたりが,あながち遠くない答えのように見える。そう思えば,小粒でも数多くの新サービスや新機能を提供している904iシリーズの発表は,一つのターニングポイントに見えてくるだろう。そんな風に考えなければ,記事冒頭で紹介したDoCoMo 2.0に対する知人の質問に答えられそうもない。