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 朝起きるのがつらくて,日中ずっと眠い。夜になると不思議に目が冴え,深夜になってもなかなか眠くならない──。原稿の締め切り明けに,突如こんな状態に陥ることがある。

 日中眠いので「寝不足かな」と考え,休日に昼すぎまで十分に睡眠を取ると,これがかえって逆効果。明け方まで眠れなくなり,週明けの月曜日にはほとんど寝ずに仕事に行く羽目に。取材先で「体調悪いんですか?」と心配されることもある。

 「締め切り間際の興奮状態が,その後もしばらく続くから,体調がおかしくなるんだろう」。そう考えて,記者の職業病みたいなものだと諦めていた。ところが,懇意にしているITエンジニアの方からも同じ悩みを聞くことがあった。考えてみると,納期(締め切り)前に猛烈に忙しくなるのは,ITエンジニアも記者も同じ。睡眠や眠気の異常に悩まされているITエンジニアの方は,きっと少なくないと思う。

 そんなとき「集中力の高め方」(日経SYSTEMS2007年7月号)に関する取材で,「『超集中』仕事術」などの著作がある医師の田村康二氏(山梨医科大学 名誉教授,立川メディカルセンター 顧問)にお会いした。田村氏によれば,仕事の集中力を高めるうえで必要なのは「自分の体内時計を認識して整えること」であり,これが睡眠・眠気の異常を治すことにもつながるという。

睡眠・眠気の異常は,体内時計のズレが原因

 ここで言う「体内時計」とは「生体リズム」とも呼ばれるもの。人間の体内では,まるで時計があるかのように,決まった周期で,体の調子に作用する様々なホルモンが分泌される。その周期は1カ月,半日,90分などいろいろあるが,眠気や覚醒に関係するホルモンは1日周期である。毎日夜になると,「メラトニン」などのホルモンが分泌されて眠くなる。そして朝には「コルチゾール」などのホルモンが分泌され体が覚醒する。

 冒頭のような睡眠・眠気の異常は,この1日周期の体内時計(生体リズム)が狂うことで起きる。いつもは午前零時には眠くなるのに午前4時まで眠れないときは,体内時計が4時間遅れている,というわけである。体内時計が遅れると,覚醒を促すホルモンの分泌も遅れる。だから,朝起きられない。日中は,気温の上昇など自然環境のリズムと自分の体のリズムがずれるので,夜勤疲れのような状態になり十分に体が覚醒しない。それで疲労が蓄積し,眠くなってからいつもより長く寝ると,さらに体内時計が遅れる。

 では,どうすればよいのか。田村氏のアドバイスは,「眠くても我慢して朝決まった時間に起きること」である。そのうえで,日光を浴びる,軽い体操をする,シャワーを浴びる,朝食をとる,といった体が覚醒する行動を意識的に行う。朝無理に起きるので昼間に眠くなるが,できる限り30分以内の仮眠で眠気をやり過ごす。これを何日か続けると,遅れた体内時計が徐々にリセットされ,ホルモン分泌のタイミングが正常化していく。

 このアドバイスを受けてから,日ごろ体内時計を意識しながら生活するようになった。すると,自分の体内時計を乱す原因は,どうやら締め切り前の忙しさだけではないことがわかってきた。週末に夜通し飲んだり,明け方まで本を読んだりすることがしばしばある。体内時計が遅れる最大の原因は,この生活習慣にあるようだ。

 いまだ生活習慣を変えられない(変えようとしない)ため,依然として体内時計はよく狂う。ただし,いざというときは数日で治せるようになってきた。朝起きることでリセットする方法が分かっただけでなく,体内時計を理解したことによって,休日に長く寝過ぎて余計に悪化させることがなくなったのが大きい。

 体内時計の知識が役立つのは,睡眠・眠気のコントロールだけでない。それ以外の面の健康や集中力の向上などにも生かすことができる。10月からITproで,体内時計(生体リズム)をテーマにした田村氏の連載を始める予定である。ぜひご期待いただきたい。

■変更履歴
眠気や覚醒に関係するホルモンの名称に誤りがありました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2007/07/30 15:50]