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 資源有効利用促進法に基づくパソコンのリサイクル制度の見直し論議が佳境に入っている。11月の初めにも,この問題を検討している産業構造審議会 環境部会のワーキンググループ(以下,産構審)が中間答申を公表する予定だ。

 パソコンのリサイクル制度は,事業系パソコンで2001年4月から,家庭系パソコンでは2003年10月から始まった。だが,メーカーだけに自主回収と再資源化の義務を課しているこの仕組みは半ば機能不全に陥っている。法に従ってメーカーが作った回収・再資源化ルートでリサイクルされるのは,年間約750万台排出される使用済みパソコンのうちわずか十数%と見られている。メーカーによる回収実績を見てもほぼ頭打ちの状況にある(図1)。

図1 使用済みパソコンのメーカーによる回収実績
図1 使用済みパソコンのメーカーによる回収実績
事業系パソコンと家庭系パソコンを合わせて,回収量は年間100万台程度でほぼ頭打ち。出典:パソコン3R推進センター。
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 なぜ,使用済みパソコンの多くがメーカーの再資源化ルートにのらないのか。抱えている問題は,昨年から話題を呼んでいる家電リサイクル法の改正論議と大筋では同じだ。

 家電リサイクルで指定されている4品目(エアコン,冷蔵庫,洗濯機,ブラウン管テレビ)は年間約2300万台が排出され,家電リサイクル法によるメーカーの再資源化ルートで処理されるのは約半数の1200万台ほど。パソコンよりははるかに実効性は上がっているとは言え,1000万台以上の家電製品がどのように処理されているかが把握できていない。この,いわゆる「見えないフロー」の実態を明らかにするため,国は大規模な調査を実施した。このため,家電リサイクル法改正案の審議期間が大幅に伸び,当初予定されていた通常国会への年内提出は見送られた。

使用済みパソコンの3分の1が海外に流出?

 家電と同様,パソコンについても,使用済み製品のその後の流れに関する調査が昨年行われ,その結果が6月の産構審の資料として示された(図2)。

図2 使用済みパソコンのリサイクルの流れの概略
"図2 使用済みパソコンのリサイクルの流れの概略"
年間排出される約747万台のうち,約3分の1が海外に輸出されたと推定されている。出典:産業構造審議会 環境部会 廃棄物・リサイクル小委員会 基本政策ワーキンググループ第6回会合資料。
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 それによると,年間排出される使用済みパソコンは約747万台。リース会社や一般企業から排出される事業系パソコンがその約7割を占める537万台,家庭系パソコンは約3割の210万台だった。いずれも大半がメーカー系のリサイクルシステムにのることなく,中古パソコンの販売業者や部品販売業者,廃棄物回収業者に流れている。最終的に国内で中古パソコンとして販売されたものが234万8000台,部品や有価物(資源)として販売されたものが247万9000台,輸出業者によって海外に流れたものが243万5000台と推計されている。

 こうして見ると,使用済みパソコンの約3分の1が海外に流れていることになる。「ただし,貿易統計に現れる数値は数十万台くらい少ない。両者にはかなりの開きがある」と,調査を担当した国立環境研究所の寺園淳氏は話す。合法的でない輸出,いわゆる密輸ルートによって中国や東南アジアに流れたのではないかと推定される製品が相当数あるということだ。

 そもそも7年前にリサイクル制度を設計したときは,国内で完結するリサイクルシステムを前提としていた。これほどの数が海外に流れるとは“想定外”だったわけで,この現実が今,制度見直しに際して大きな課題を投げかけている。つまり,元々「国内の資源を有効活用する」という理念のもとに作られたリサイクル法が,「輸出先の環境汚染」や「国際的な資源セキュリティ(安全保障)」というグローバル化がもたらした課題に直面することになったわけである。