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 「ニコニコ動画」の仕組みは企業内でも活用できるはず――。先日,そう思っていた矢先,エビリーという会社が開発する動画共有システム「IntraKaKiKo」(イントラカキコ)の存在を知った。IntraKaKiKoはその名前の通り,イントラネット(=企業内ネット)での利用を前提としたシステムだ。

 早速,同社を訪問してデモを見せてもらったところ,システム的にはまさに企業向けニコニコ動画と呼べるもので,Flashで再生される動画の上にテキストや図形を自由に書き込める。エビリーによると,既にある大手メーカーがIntraKaKiKoを導入し,社内教育用途で活用しているという。企業内での動画活用に新たな道を拓(ひら)きそうだ。

 ニコニコ動画はコンシューマ向けのサービスであるが,企業が参考にできるさまざまな要素を持っている。そう考えて,ITproでは「短期連載:企業にとってのニコニコ動画」と題し,企業人が注目すべきニコニコ動画の特徴を解説してきた。ここでは改めて,それらの要素を見ていきたい。

 「企業内での活用」や「社内情報システムを作る際に役立つ」といった視点で見た場合,ニコニコ動画が備える次の4点が参考になるはずだ。

  1. 時間の制限を打ち破る疑似同期型コミュニケーション
  2. 動画の上に書き込めるユーザー・インタフェース
  3. 短いコメントと過去ログが消えることによる過剰な議論の抑制
  4. ほぼ匿名制による自由な言論空間

 このうち1~3はニコニコ動画が生み出したイノベーションであり,これまでの常識を打ち破るものだ。

 まず,コミュニケーション技術は電話やビデオ会議など,地理的な制限を打ち破る方向では高度に発達してきた。だが,それに比べると,時間軸の制限を超えようとする取り組みはあまり活発とは言えなかった(研究レベルではNTTコミュニケーション科学基礎研究所の「Mirai no Denwa t-Room」のようなものはある)。ところが,ニコニコ動画はFlashとWebブラウザなど,極めて一般的な技術だけであっさりと時間的な制約を取り払うことに成功した。

 2の動画の上にユーザーが書き込める点も前代未聞だ。ビデオ会議など,動画を扱うシステムは「いかに動画をキレイに見せるか」に注力してきた。しかし,ニコニコ動画はこの固定観念を壊し,「動画の上にコメントを表示する方が,視点を移動させなくて済むのでラク」という事実を発見した。

 3もまたニコニコ動画の“コロンブスの卵”的な革新だ。通常,深い議論を可能にするシステムの方が望ましいと思ってしまうが,深い議論は参加への敷居を高くする。

 ニコニコ動画の企画者の一人であるニワンゴ取締役の西村博之さんは,「ログを全部表示できないという技術的な制約もあった」としながらも,「普通の掲示板だとログが全部残っている。そこで会話をしていて古いログがずっと残っていると,議論はどんどん深まっていくが,そうすると元の文脈を知らないと発言できないという状況になる。ニコニコ動画ではそれ(元の文脈を知って議論すること)をあえてできないようにして,見た瞬間に思ったことを書いても問題がないようにした」と説明する(なお,西村博之さんへのインタビュー記事「“ひろゆき”がいま、見ているもの」を11月9日に公開しました)。

 ニコニコ動画はほぼ匿名のシステムを採用し,古いコメント表示を順番に消してゆくことで,過剰なコミュニケーションの抑制と,誰でも参加しやすい場の形成を実現している。この点は,特に「社内ブログやSNSを導入してみたものの,さっぱり盛り上がらない」と嘆く企業に,大いに参考になるだろう。

 冒頭で紹介したIntraKaKiKoのように,ニコニコ動画的な企業向けシステムはこれから続々と登場してくると予想できる。ニコニコ動画が生み出した革新的要素が,ビデオ会議システムやeラーニング,グループウエアといった既存ITシステムをいかに変えてゆくのか,注目していきたい。