PR

 情報システムの開発や運用は社内で自前でこなすべきか、それともコンピュータに強い外部企業にアウトソーシングして任せてしまうべきかは、統一的な答えが得にくい難しい選択問題である。各企業の置かれた環境によって、どちらにも一長一短があるからだ。単純に、アウトソーシングすれば安上がりとは限らない。

 先日、この難解な課題に対する興味深い選択例に出会った。日経情報ストラテジー2008年1月号の特集「ベンチマーキング経営」で取り上げた良品計画である。

 「無印良品」ブランドの雑貨や衣料品などを販売する同社は、2006年末に稼働させた新しい「MD(マーチャンダイジング)システム」を自前で開発したところ、その開発コストが従来までのアウトソーシング費用として比較した時に、何と15分の1まで下がったことを明らかにした。

 売上高が1500億円を超える良品計画ほどの規模の企業が、これほど劇的に基幹システムの開発コストを削減できた例は珍しいはずだ。開発コストが15分の1になっても、MDシステムの検索レスポンスは逆に10倍以上も早くなったという。そのため、店舗からは好評だ。

 良品計画は2006年から、売上高に対するシステムコストをこれまでの1.7%から1.0%以下に引き下げる目標を掲げてきたが、開発コストの低減によって、「今後は1%を切れるメドが立った」(小森孝・執行役員情報システム担当部長)としている。

 システムのアウトソーシングを全面的に止めたわけではない。実際、MDシステムと同時期に刷新した店舗システムや物流システム、インターネットでの商品販売システムなどは現在も引き続き、外部のシステム業者に開発や運用を委託している。今後は自前の開発とアウトソーシングの組み合わせで基幹システムを構築していくとのことだ。

しまむら流の自前主義を情報システムでも採用

 もともと良品計画は基幹システムの開発と運用をすべて、外部のシステム業者4社に分散してアウトソーシングしていた。だが2005年に、会社の核となるMDシステムだけは自社開発するという「自前主義」に経営方針を大転換。そこから新しいMDシステムの要件定義を始めた。

 良品計画が自前主義を指向するようになったのは、同社の社外取締役を務める、しまむらの藤原秀次郎会長の影響が大きい。藤原会長は「人材を育てるためには、情報システムや物流など自社の核となる機能は自前で運営すべきである」と唱える人物であり、良品計画の松井忠三社長は藤原会長の教えを自社の経営改革に大胆に取り入れた。情報システムの開発も例外ではなかった。

 とはいえ、それまでアウトソーシング一辺倒だったシステム開発を、急に自社開発に切り替えるのは容易なことではない。小森執行役員は当初、「自社開発するなら、どこか小さなシステム業者を買収して、社内に取り込むしかないのではないかと考えていた」ことを打ち明ける。だが最終的には自社開発できるメドが立ち、情報システムも自前主義に踏み切った。

 良品計画がMDシステムの自社開発に取り組んだのは、2006年5月から12月までの約半年間だ。完成してみれば、開発コストは従来通りにアウトソーシングした場合に支払うことになるシステム業者からの見積もり金額の約15億円をはるかに下回る約1億円で済んでしまった。15分の1とは、この金額差を指す。

 小森執行役員は「開発コストも開発期間も従来より圧倒的に少なく、しかも検索のレスポンスが早い。正直、驚いている。自社開発というこれまで当社では考えもしなかった発想に切り替えて、ゼロから基幹システムのあり方を考え直した甲斐があった」と振り返る。

 効果はコスト削減だけではない。肝心の人材育成も進んでいる。良品計画の山崎裕詞・情報システム担当システム企画課長は「入社以来、システムはアウトソーシングするだけだったので、今回初めてシステムの自社開発にかかわれて、2005年から今日までの2年間は本当に楽しかった」と顔をほころばせる。良品計画の現場でも、しまむらのように自前主義による人の成長という効果が出たようだ。

 特集で取り上げたベンチマーキング経営とは、一言で言えば、「自社の『常識』を他社の常識に照らして改める」ことを指す。そこに経営改革を成功させる大きなヒントが隠れている。良品計画は「しまむらのふりを見て、我がふりを直した」というわけだ。