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 最近,ひょんなことから非常に古い預金通帳とキャッシュカードが複数見つかり,私は口座を整理しようと思い立った。いくつかの銀行の窓口を訪れたり,電話で問い合わせたりした。そこで経験した,システムに関する2つの話を紹介しようと思う。

 1つは,システム面でいろいろな事情があるのは理解できるが,それにしても「いかがなものか」という困った出来事。もう1つは,「へぇ~,そんなことまで調べられるのか。助かった」と感心した出来事だ。1人の利用者として,いろいろと感じるものがあった。2つの話に共通するキーワードは「履歴」「説明の納得感」である。

「お客さまの口座が見つかりません」は勘弁してほしい

 まずは,メガバンクA銀行で経験した出来事から話そう。私が持っていたのは,合併してA行になる前の銀行が発行した預金通帳とキャッシュカードである。

 ある夜,A行のATM(現金自動受け払い機)にその古いキャッシュカードを挿入し,残高照会をしたところ,「このカードは現在利用できません。インターホンでお話ください」という意味のメッセージがATMの画面に表示された。ATMの脇にはインターホンがあり,これで誰かと話をする必要があるようだった。しかし,話が通じる担当者が夜もいるとは思えず,その晩はそのまま帰宅した。

 次の日のお昼休み,会社の近くにあるA行の支店に行き,ATMに同じキャッシュカードを挿入したら,案の定,同じメッセージが表示された。今度はインターホンを手に取り,事情を説明。1人の行員が出てきて窓口に案内され,システムで照会してもらったところ,予想外の言葉が返ってきた。

 「すいませんが,お客さまの口座が見つかりません」。この件を調べてくれた年配の行員は,まずこう説明した。私は,顔では平静を装っていたが,内心は「えっ,私の口座がない?!」とかなり困惑していた。応対してくれた行員から,「解約していませんか?」と繰り返し尋ねられたが,私が記憶する限り,それは断じてない。「最近,この口座を使いましたか?」との問いには,「もうずいぶん長い間使っていません」と私は答えた。結局,キャッシュカードだけでは詳細に調べられないので,後日,預金通帳と印鑑も一緒に持ってきてほしいと言われた。

 A行を出て,あれこれと考えた。「まさか,銀行が合併する時に口座が消えたのではないか?」と妄想した私は内心穏やかでなかった。

3度目,4度目の訪問で,ようやく筋の通った説明

 そんな私の不安は,次の日,A行への3度目の訪問で晴れた。キャッシュカードと通帳,印鑑を持って窓口に行くと,行員が通帳だけをぱらぱらとめくり,「××支店の口座ですね。電話で××支店に問い合わせてみます」と,すぐ行動を起こした。この件に関する対処法が窓口の担当者に周知されていると感じ,その点では安心感をおぼえた。

 ここで10分ほど待たされた後,窓口の行員から説明を受けた。どうやら,私の口座は存在していることが分かった。残高はわずか660円だったが,解約はしていなかったのだ(当時の口座には「口座維持手数料」がかからないので生きのびていた)。ただ,どうして古い口座のデータをシステムで検索できないのかを聞いたら,「古い口座は,別の口座に移しているのです」との回答を繰り返した。私としては,口座がどういう扱いになっているのか,さっぱり飲み込めなかった。

 後日,自宅に近いA行の支店で口座の切り替え(古い口座の解約と新規口座の開設)をするとき,古い口座がどういう扱いになっているのを再度聞いてみた。その行員によれば,古い口座は支店ごとに紙の台帳で管理しているという。完全にオフラインの状態であり,検索はもちろん人力とのこと。オンラインで管理するとコストがかかり過ぎるから,思い切って紙の管理に切り替えたのだろう。

 どうりでシステムの中に口座が見つからないわけだ。A行に4回通って,はじめて筋の通った説明が得られたような気がした。