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 2006年11月にKDDIと共同でファイルダウンロードサービスの構想を発表してから約1年半を経た2008年4月1日,FM東京とFM大阪は一度も有料サービスを行うことなく,3セグメントを使った番組サービスそのものを休止した。デジタルラジオ推進協会(DRP)が免許人となった実用化試験放送にとって,FM東京らはサービスの中核の一つを担うとともに,大きな経費負担にも応じていただけに,サービスの休止は業界関係者には強い衝撃が走っている。

 今回,FM東京がサービスを休止した理由には,有料ダウンロードサービスへの取り組み方針がある。FM東京はここ1年半実施を強く希望してきたものである。DRPも有料ダウンロードの実現に取り組む方針を決めていた。しかし,実際に有料ダウンロードを実施するためには,免許の問題が立ちはだかることになる。現行の実用化試験放送の免許は無料を前提にしているので,一旦免許を返上する必要があるというものである。

 試験放送で利用するVHFの第7チャンネルは2011年7月以降の用途が決まっており,かつDRPのこれまでの実績から,一旦返上しても再びDRPが利用できるようになる可能性は非常に高そうだ。しかし,そうは言っても,免許を返上するというリスクは付きまとう。2008年3月21日に実施された総会でも,「取り組む」という方針が確認されたにとどまったことから,FM東京は事実上の先送りと判断し,サービスの休止を決めた(FM東京のサービス休止の告知はこちら)。

 ところで,そもそもの疑問として沸くのが,なぜ実用化試験放送の中で,こうした新しい取り組みを実施するのに免許の返上が必要なのか,という点である。

 もともと,FM東京とKDDIが想定する有料ダウンロードサービスでは,放送波を使ってダウンロードするファイルは暗号化されたものである。この段階ではファイルはコンテンツとして利用できないうえに,料金も発生しない。このファイルの暗号化を解くのに必要な鍵データは携帯電話網を利用する。料金も携帯電話事業者などが徴収する。WOWOWなどが展開している,いわゆる有料放送では鍵を放送波で配布しており,料金を自ら徴収する形態であり,かなり異なる。FM東京らの計画を,本当に有料放送と同等に扱うべきなのか,議論の余地はあるところだろう。

 仮に,有料放送に相当するという結論でも,免許の返上まで必要なのか,という気もする。例えば,アナログ放送の世界ではあるが,NHKのFM放送の電波を利用するVICSでは,道路交通情報通信システムセンターが免許人となって,超短波文字多重放送(有料放送を含む)の免許が交付されている。これと同様の扱いはできなかったのだろうか。今回の経緯に詳しい関係者によると,これまでもFM東京などDRPの関係者が総務省に免許を返上しないですむ形態をいくつか打診したが,受け入れられなかったという。

 一方で総務省では現在,電波の有効な利活用を促進するために,ユビキタス特区という制度を設けた。FM東京は,CSK-ISと一緒に福岡市における3セグメント放送の実験を申請し,認められた。ここでは,有料ダウンロードを初めてとして,様々な実験を実施していくという。同じ省内の政策で,こうした新しい試みを積極的に推奨しようという動きが具体的になっているだけに,余計にデジタルラジオの実用化試験放送における免許でも,もう少し柔軟な運用ができなかったのか,と感じられる。