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 私事で恐縮だが、最近、家族が私の顔を見てしみじみと「オジサンになったね」と言うようになった。記者には思い当たるふしがいくつもある。「この年ぐらいになれば、みんなお腹が出てくるんだよ」などと返事するのだが、まるで言い訳になっていない。

 “オジサン化”の理由を聞くと、体型や外見のことじゃなかった(多少はあるが)。何につけても仕事に結び付けて語り始めるから、らしい。特にテレビを観ている時に、それが出る。先日も高校生・大学生のアカペラ・コンテストの番組を観て「圧倒的な力を持つボーカルがいて、他のメンバーも全員上手い。“強い”と言われる営業チームもこうなんだよな」などと、感じ入っていた。しかもその後は「で、自分はどうなんだ」と一人で勝手に悶々としているのだから、家族にとっては手に負えない。

 こんな風になったのはおそらく最近の取材で、「仕事が出来るとはどういうことか」「何をすれば仕事が出来る人間になれるのか」「会社のエースとはどんな存在なのか」など、いろいろと考えさせられたからだ。記者は2月ごろから、ソリューションプロバイダで、現在トップ営業だったり、次世代のエースと言われている営業担当者20人以上を取材した。多くの営業部長にも、部下の育成に当たって「トップ営業になるための資質」を語ってもらった。

 取材の目的は、日経ソリューションビジネス4月15日号特集「トップ営業は1年で育つ」を執筆するためだ。この特集は「マネージャーやリーダーがトップ営業の“予備軍”を見出し、1年で鍛え上げる」ことをテーマにした。そこで一連の取材をベースに「トップ営業の候補になれる部下」を探し出すためのチェックリストを本誌が独自に作成した()。それぞれの項目は営業に特化したスキルではなく日々の行動や仕事に臨む姿勢を示したもの。だから営業担当者だけでなくさまざまな仕事に当てはまると思う。

図●あなたの部下の「トップ営業潜在力」をチェック
図●あなたの部下の「トップ営業潜在力」をチェック [画像のクリックで拡大表示]

いかなる時も「1歩目」を早く

 特集執筆を終えた今だから白状するが、このチェックリストを作っているときは、気分が落ち込むことばかりだった。取材の集大成なので、中身にはそれなりに自信がある。もちろん、取材させていただいた方々が悪いわけでもない。すべては記者の日頃の行いが悪いせい。つまり記者にとっては「全然出来ていないなあ」と思うことばかりで“ブルー”になってしまったのだ。

 思えば取材のときから、そうだった。「ソリューション営業の仕事で最も重要なことはスピード。分からないことや腑に落ちないことがあれば、顧客であろうと社内の開発チームであろうと、すぐさま相談するようにしている」。こう語っていたのは、大手SIerの敏腕営業であるAさん。「電話やメールで不十分だと思ったら、すぐに席を立って、直接会って話し合うんです」と続けていた。

 この話を聞いた時点で、記者はどっと汗をかいていた。ここで言うスピードとは仕事全体の処理速度というだけでなく、動き出しの早さも指している。「おいおい、お前が一番出来ていないことじゃないか」と言う上司や先輩たちの顔がちらついた。そう言えば小学生の頃、夏休みの宿題は始業式前日に仕上げていたっけ…。

 記者の周囲にも、原稿執筆のスピードはもちろんのこと、「最初の一歩」が周囲より圧倒的に早い副編集長がいる。立ち話で記事のネタを思いついたら、次の瞬間にはもう自席に戻って、取材先に電話をかけている。動き出しを早めることは誰にでもできるようで、行動の一つひとつで、もれなく実践するのは、かなり難しい。

 ちなみに記者としての仕事のスピードに、ITのツールはあまり関係ないようだ。先の副編集長はスケジュール管理に紙の手帳しか使わないし、ノートパソコンを持ち歩かないので外では仕事しない。記者は携帯電話のほかに「スマートフォン」を使って予定を管理し、毎日ノートパソコンを持ち歩いている。

飲み屋で愚痴を言わない

 こんな言葉にもグサッと来た。「お客さんから文句を言われたり上司から叱られたりしたからといって、愚痴をこぼして逃げるのはもったいない。その真意をつかむことが、問題解決の最大のチャンスなんだから」。これも耳が痛い。そういえばつい数日前、居酒屋かどこかで「仕事が増えて疲れるよなあ」などと嘆いたばかりじゃないか。

 昨年、厳しい上司に叱られ続けたBさん。「最初は“そこまで細かいことを指摘しなくても”と思っていたが、素直にやってみると、必ず結果が付いてくる。だから愚痴を言って遠回りすることを止めたんです」と笑っていた。「愚痴は遠回り」。返す言葉も見付からない。
 
 「上司からどんなに厳しく指導されても、嫌だとか辛いなんて感じなかった。だって仕事は厳しいものだから」というCさんの話も、心に残った。「営業の仕事に飢えていたから、何でも耐えられた」という。「仕事に飢える」。このせりふにもパンチがある。記者はというと…。

 特集のための取材が、こんなふうにして自己反省の場にもなっていったわけだ。記事を書き上げた直後は脱力状態だったが、数日経つと、今回聞いた言葉を思い出して「オレもがんばらなきゃ」と上を向いて歩く力が湧いてきた。

 その後、チェックリストにあるような行動が実践できているかどうかは、自分では分からない。でも立ち止まって悩んでいる暇があったら、とにかく手足を動かそうと強く思う。少なくともオジサン化というか、「何でも仕事に結び付けて独り言を言う」という症状は進行していくに違いない。それはそれで、いいんじゃないだろうかと思っている。