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 サーバーOSのシェアでWindowsとLinuxとの差は,今どのくらいかご存じだろうか?

 商用LinuxとWindowsとの比率なら分かる。調査会社のIDC Japanによると,2007年の売上ベースでは,Windowsが44.5%に対しLinuxは11.0%と,およそ4分の1。サーバー機の台数シェアで見ると,Windowsが77.3%でLinuxは15.2%となり,さらに差は広がる。

 「今後も,4対1の割合のまま進むだろう」。日経Linuxの2008年6月号特集3「エンタープライズLinux最前線」の取材で,NEC,デル,日本IBM,日本HP,日立製作所,富士通といった大手メーカーのLinux責任者にLinuxの展望を尋ねた。その結果,共通してこんな答えが返ってきた。

 このくらいで落ち着くと見るのは,インターネット系サーバーに一通りLinuxの導入が済んだことだけでなく,ITインフラに対する意識が高い企業の割合とメーカー側のビジネス戦略が,均衡点に来ているからだろう。つまり,大手メーカーのビジネスとして成立するLinuxのサポート料金は一定の価格帯に落ち着き,高い料金を払ってもサポートを依頼したい企業が一定の割合にとどまる,ということだ(関連記事)。

クラウド・コンピューティングで情勢が変わる

 だが「大きく情勢が変わる可能性がある」。IDC Japanのアナリストは意外にもこう指摘する。キーワードは2つある。1つは「クラウド・コンピューティング」,もう1つは「フリーLinux」だ。

 クラウド・コンピューティングは,SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)に代表されるように,ネットを介してサービスやコンピュータ資源を提供するもの。最近,米IBMや米グーグルをはじめ,大手各社が軒並みサービスを提供しており,今後急速に広まる可能性が高い。ユーザーは,サービスの裏に存在するOSについて考える必要が無く,性能や信頼性もベンダー任せにできる。

 一方,サービスを提供するベンダーにとっては,“安くて信頼できる”OSが適している。無料で入手でき,自分たちでソース・コードを調べられるLinuxは,有力な選択肢となる。実際のところ,ミクシィや楽天をはじめ,インターネット系のサービスの提供者はそろって,数千台規模でLinuxを採用している。ITインフラへの意識が高くないユーザーも,サービスを介してLinuxユーザーになり得る。

米国では半数以上がフリーLinux

 もう1つの鍵となるフリーLinuxとは,CentOSやFedoraなどコミュニティが主体となって開発しているLinux。Red Hat Enterprise LinuxやSUSE Linux Enterpriseなどベンダーが提供する「商用Linux」とは一線を画している。

 フリーLinuxを活用すれば,オープンソースとしての本来のメリットである「コスト削減」や「ベンダー非依存」が実現できる。国内のLinuxユーザーの多くは,大手メーカーの手厚いサポートを受けており,こうしたオープンソースのメリットをまだ生かし切れていない。しかし最近では,フリーLinuxの質も高まっているため,採用が広まる可能性がある。

 フリーLinuxは徐々に利用が進んでいるのは確かだが,メーカー各社はその実態を正確に把握できていない。日本HPの担当者は「Linuxユーザーの10%程度がフリーLinux」と見ている。米国では既に「Linuxユーザーの半数以上がフリーLinuxという調査結果もある」(IDC Japanのアナリスト)という。

企業は技術者の育成と活用を考えるべき

 ここまで考えて,「やはり国内でLinuxのシェアは高まらないかも」と思い始めた。そもそもクラウド・コンピューティングは,海外のコンピューティング資源を利用できるため,国内のベンダーである必要がない。規模だけでなく技術的にも,国内ベンダーのサービスは,海外のクラウド・コンピューティングのサービスにかなわないのではないだろうか。

 フリーLinuxの採用に関しても,Linux技術者の不足という問題がある。米国でフリーLinuxを利用する企業が多いのは,自己責任で運用できる情報システム部があるからだと言われている。国内のLinux技術者は,認定機関LPI(Linux Professional Institute)の認定技術者だけでも今年2月に累計3万人を超えたが,その大半が大手メーカーとそのグループ企業に属する。大手メーカーにサポートを依頼すれば,たとえフリーLinuxを使っても商用Linuxと変わらないと言える。この状況を打破するには,フリーLinuxを扱える中小ベンダーが増えるか,ユーザー企業自身が技術者を育成するかが必要だが,こうした企業は現状ごく限られる。

 結局,Linuxの技術者を多く育成することが,冒頭の4対1の割合を超えてLinuxが広まる条件といえる。企業の経営層からすれば,LinuxかWindowsかはどちらでもよいだろう。ただ,安定性やコストという観点では,OSは重要な構成要素だ。自社で技術者を抱え,フリーLinuxを使ってITインフラを整える米国企業と,ベンダー任せでLinuxやWindowsを使うだけの国内企業とで,競争力に差が付くのは想像に難くない。

 国内でトップクラスの技術者が数多くグーグルに入社するなど,技術者自体が海外企業に流出するという問題もある。Linuxを通して海外と国内の企業のIT活用を比べたとき,企業は技術者の育成と活用について見直すべきではないかと思えてくる。