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 1987年に「PMI(Project Management Institute)」がプロジェクトマネジメントの知識体系「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)」を初めて発行してから,約20年が経過した。このPMBOKに基づくプロジェクトマネジメントは,日本でも,ここ10年くらいで広く普及した。PMBOKをベースにしたプロジェクト・マネジャーの国際資格「PMP(Project Management Professional)」の日本での取得者も,2万人以上に登る。

 PMBOKの登場で,プロジェクト・マネジャーの仕事は,経験とカンに頼った「プロジェクト管理」から,科学的な「プロジェクトマネジメント」へと進化した。そして,その効果は確実にあったと言える。

 そして今,PMBOKに続いて,注目され始めているのが「BABOK」である。

 BABOKとは,Business Analysis Body of Knowledgeの略で,文字通り,「ビジネス分析(Business Analysis)」のための知識体系だ(関連記事)。

 作成しているのは,非営利団体の「IIBA(International Institute of Business Analysis)」。2006年7月にバージョン1.6が発表され,現在は「バージョン2.0 パブリックレビュードラフト」が公開されている(正式版は2008年第3四半期に登場する予定)。

 プロジェクトマネジメントの専門職種の名称は,言うまでもなく「プロジェクト・マネジャー」である。ビジネス分析の専門職種にも名称がある。それが,「BA(Business Analyst)」だ。IIBAは,PMPと同様に,BAのための資格試験も実施している。それが,「CBAP(Certified Business Analysis Professional)」である。

7つの知識エリアを定義

 では,「ビジネス分析」とは一体何だろうか。記者の理解では,一言で言うと,さまざまなレベルの「要求(Requirement)」を決める作業である。

 ビジネス分析の作業で明確にした「要求」に基づいて,ビジネスニーズを満たす具体的な「ソリューション」(解決策)が構築される。ソリューションは,アプリケーションのカスタム開発の場合でもいいし,パッケージ購入でもいい。システム開発を伴わない組織改革やプロセス改革でもいい。システム開発を前提にした場合,ビジネス分析は,システム設計/実装よりも上流の「要件定義よりも前の工程」というイメージである。

 公開されているバージョン2.0 パブリックレビュードラフトに基づいて,BABOKの中身を少し紹介してみよう(訳は記者によるもので,正式な日本語訳ではないことをお断りしておく)。

 BABOKでは,PMBOKと同様,複数の「知識エリア(knowledge area)」を定義している。定義しているのは,(1)ビジネス分析の計画とモニタリング(Business Analysis Planning and Monitoring),(2)要求の管理と伝達(Requirements Management and Communication),(3)エンタープライズ分析(Enterprise Analysis),(4)要求の引き出し(Elicitation),(5)要求の分析(Requirements Analysis),(6)ソリューションの評価と妥当性確認(Solution Assesment and Validation),(7)コンピテンシ(Underlying Competencies)---の7つだ。

 そして,それぞれの知識エリアごとに,タスク(ビジネス分析の作業),テクニック(タスクの実行方法),インプット(タスクを開始するために必要な情報)/アウトプット(タスクの結果)などを記述している。7つの知識エリアの概要は以下の通りである。

(1)ビジネス分析の計画とモニタリング

 ビジネス分析アプローチの計画立案,ステークホルダー(利害関係者)の分析,ビジネス分析作業の計画立案,情報伝達方法の計画立案,要求の管理プロセスの計画立案,ビジネス分析作業のモニタリングと報告---などのタスクから成る。BABOKによれば,これらの作業はプロジェクトマネジメントと密接に関連するため,BAはプロジェクト・マネジャーと密接に連携する必要がある。

(2)要求の管理と伝達

 ソリューションと要求のスコープ管理,要求のトレーサビリティ管理,「再利用」のための要求のメンテナンス,要求の伝達(communicate requirements),要求パッケージ(要求を表現するフォーマット)の準備---などのタスクから成る。BABOKによれば,異なるバックグランドの代表者であるステークホルダー全員を「要求に関する共通理解」に導くために,特に「要求の伝達」は重要である。

(3)エンタープライズ分析

 ビジネス分析作業の中では最も上流の作業。ビジネスニーズの定義,ビジネスニーズを満たすためのギャップの決定(現状とあるべき姿とのギャップ分析),最適なソリューション・アプローチの決定,ソリューション・スコープの定義,「ビジネスケース」の作成ーーなどのタスクから成る。

 このエンタープライズ分析の作業を通じて,「ビジネス要求(business requirements)」を明確にする。ビジネス要求とは,企業(事業部や部門,企業グループの場合もある)のゴール,目的,ニーズに関する「ハイレベルな記述(high-level statements)」のこと。このビジネス要求を文書化したものが,「ビジネスケース」と呼ぶドキュメントである。

 ビジネスケースには,プロジェクトを始める理由や現状のビジネス・プロセス,ビジネス機会,問題,プロジェクトの目的/スコープ/コスト,最適なソリューション・アプローチ,ソリューション案,成果の測定方法などが記述され,これが最終的にプロジェクトを開始するかどうかの判断材料となる。