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 I-ONコミュニケーションズという会社がある。韓国ではCMS(コンテンツ管理システム)の最大手であり,設立からちょうど10年めである。同社のCMSは日本でも5年ほど前から「NOREN」という製品名で販売されており,販売パートナーは約50社,導入企業は約400社ある。同社が初めて挑戦した海外市場が日本であり,現在ではアメリカとインドネシアでも販売している。

 先日,新製品の発表に合わせて来日した創業社長のオ・ゼチョル氏に話を聞く機会があった。会うのはこれで2~3回目になるだろうか。新製品の話もそこそこに,以前からゼチョル社長に聞きたいと思っていた話題に突入した。「海外でも売れるパッケージ・ソフトを生み出す土壌作り」についてである。

パッケージ・ソフトを作るとき一番大事なことは?

 コンセプト作り。その製品の哲学と呼んでもいい。同じCMSと呼ばれる製品でも,コンテンツ管理のアプローチはそれぞれ違う。NORENが初版から貫いている考え方は,「デザインとワークフローとコンテンツを徹底して分離し,後で統合する」というもの。

 アジアには大きなソフトベンダーが少ないが,米国には多い。米国ベンダーは新製品のコンセプトを宣伝して売る能力が高いからではないかと思う。例えば,データベース製品の新版が,機能面では旧版と大差なかったとする。それでも「グリッドコンピューティング」という新しいコンセプトを宣伝されると,買おうという気になってくる。ベンダーが宣伝しているのは,新機能ではなく新コンセプトの方なのだ。

製品コンセプトはどこから生まれる?

 当社では,社長である私にも報告せず,開発チーム内部でパイロット開発を進めていることがよくある。何にも縛られることなく,勝手に作っている。失敗もあるが,それも含めてこうした場は必要だ。こうした新しいコンセプトを世に問うとき,ターゲット顧客がいるかどうかは余り気にしない。むしろ見込み客が全くないような真っ白なエリアが,既成概念に縛られずに済むのでベストだ。

 また,これは当社の特徴と言えるかもしれないが,「自分の好きなことをどうぞ!」という雰囲気がある。新人に対しても高圧的に「これをやれ!」と命令するようなことはない。「会社の状況がこうなので,こういう仕事をしたら君にも会社にもいいけど,やる?」と持ちかけることはある。

でも「No」と言われたら?

 あきらめる(笑)。まあこれは極端な例だが。言われた仕事をやっているかどうかは特に監視していない。なぜなら,当社が採用するのは,いろんなことをやりたくてしょうがない人ばかりだからだ。「いいもの,売れるものを作りたい!」という気持ちが強い人。

 「釣りバカ日誌」ってあるでしょう。あれが理想。あの人達(注:ハマちゃんとスーさんのこと)は,遅くまで大酒飲んでも,翌日には4時に起きて釣りに行く。雨が降っても狭い所に座って夜まで釣る。釣りバカじゃない人から見れば,例え1万円もらっても毎日やりたくないことだけど,結局は本人がやりたいかどうかで決まる。

 当社にはちょっと面白い決まりがある。3年続けて勤務したら,通常の有給に上乗せして,毎年2週間の有給がもらえる。意図は「もっと遊んでくれ」ということ。その間も仕事を頑張ってやる人とか,会社に出てくる人とかもいるけど,自分でやってみたいことを自由に考えて欲しいと思う。1日12時間机に張りついていたところで,書けるのはせいぜい100行。11時間は頭の中で繰り返し考える時間なのだから。来年からはこれを3週間か4週間に延長しようかと思っている。

ちなみに,コンセプトの勝率は?

 10個あったら当たるのは1か2ではないか。これまでにいろいろなものを作ってきた。中には,一所懸命考えて作ったものの,6カ月過ぎてみたら本当に下らないものだったという例もある。あるいは客に見せたら決定的な問題点が分かってしまったとか。私が考えたものも含めて,ほんとに失敗は多いですよ(笑)。

失敗した人はどうなる?

 次にもうちょっと頑張るだけ(笑)。「前回失敗したので,今回はここに気をつけました~」と言って。でも失敗できる場は必要。お客さんには迷惑をかけないようにしているが,コンセプトが出来てパイロットプロジェクトが成功したからと言って製品化できるとも限らない。

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 釣りバカ日誌のハマちゃんと言えば,サラリーマンとしては破格の自由人。その「ハマちゃん」たちを大事にして自由に泳がせているゼチョル社長は,年こそ若いが,やはり「スーさん」タイプなのだろう。