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 日経コンピュータ2008年8月1日号で「ダメシステムでも使わせたら勝ち」という特集を書いた。ダメシステムという言葉は,仕様面や品質面に何らかの欠陥があるシステムという意味で使った。こういう言葉をタイトルに据えるのは,がんばってシステム構築されている方々に失礼ではないかとも考え,一度は取り下げようと思ったが,結局採用した。誤解を恐れずに言えば,今作られている情報システムはおしなべてダメシステムと言える,と思ったからだ。

 考えてみてほしい。仕様面で完ぺきを目指すのはどんどん難しくなってきている。システムに会計処理しかさせていなかった大昔ならいざ知らず,今は事業の最前線でシステムを使うのが当たり前。受注が確定する前の見積もりや引き合いなども管理する。そんな領域は非定型業務だらけでシステム化しにくく,どうがんばって作っても,ユーザーから「使いにくい」と言われてしまう。

 品質面でいえば,バグがないシステムがあり得ないことはもはや自明。結局,仕様面から見ても品質面から見ても,ダメシステムになることは“宿命”なのだ。だからこそ,割り切らなければならない。今作っているシステムがダメシステムであることを受け入れ,「70点のシステムで稼働させてしまおう」とか,「開き直る」必要があるのである。投資効果を考えれば,そのほうが効率がいいし,システム部門の精神的にも負担が少ない。

 「割り切り」「開き直り」の話は過去に日経コンピュータでも書いてきた。仕様面での割り切りは,06年10月30日号「ITメタボリック症候群」,品質面では,08年4月15日号「『システム・ダウン』の勧め」といった特集で主張してきた。

 しかし,現実にはこの「割り切り」が難しい。システム部門といえどもある意味“客商売”。「どうせダメシステムですから」なんて言おうものなら,経営者やユーザーから「まじめにやれ!」と怒鳴られるに決まっている。

 そこで今回の特集では,どうやったらダメシステムであってもユーザーに納得して使わせることができるかにフォーカスした。使わせることに労力を割くほうが,完ぺきなシステムを目指すより重要になってきたのではないかと考えたためだ。詳細は特集を読んでいただきたいが,結論だけ言えば,「システム稼働後の利用シーンを徹底的に想像し,その想定シナリオから外れないように仕向けること」である。

 重要なのは“仕向ける”という点。例えば,反発を受けてからユーザーに何度も出向いて説得するのではなく,もともと反発が起こらないような状況にユーザーを誘導していく,といったことが必要になる。単にシステムを構築する作業に比べると,かなり戦略的な作業だ。システム構築の域を超えているので,システム部門の仕事ではないと感じる読者もいるかもしれない。しかし記者は,こうした役割こそが,今システム部門に求められているのだと信じている。