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 より良い成果を出すために仕事のやり方を見直し、改善し続ける力を「改善力」と定義し、また、コンスタントに斬新な新商品や新サービスを生み出したり、有望な新事業を立ち上げたり、新市場を開拓したりする力を「革新力」と定義してみよう。

 「改善力」の高い企業と言えば、多くの人の頭にパッと思い浮かぶのはトヨタ自動車だろう。あるいは、お客様センターに集まる消費者の声に真摯に向き合い、幹部が毎月製品改善会議を開く花王の「改善力」も相当のものだ。一方、「革新力」の高い企業はと言えば、多くの人に共通のイメージはないような気がする。個人的には、ファーストリテイリングやニトリ、小林製薬の名前を挙げたい。

 『日経情報ストラテジー』では、複数の識者の意見を参考にしながら、東京・名古屋・大阪証券取引所1部上場企業の公開された財務情報を使って「改善力」と「革新力」を数値化できないかどうかを検証してきた。その結果を、今週発売の2008年11月号の特集「1000日現場改革力ランキング」に掲載した。

 実は、この「1000日現場改革力ランキング」は「改善力」だけに着目したランキングとなっている。改善力をどんな財務指標を使って測定すればいいかに関しては、誰に意見を求めてもおおむね共通の見解が得られた。しかし、「革新力」については意見が分かれた。しかも、研究開発費や教育研修費など、将来の革新を生む手がかりとなるような経営データを公表している企業が意外と少なかったのである。多くの読者に納得してもらえそうな形で「革新力」を測るのは難しい、と判断せざるを得なかった。

 もちろん「改善力」についても、業種も規模も違う千数百社の上場企業を単純比較することはできない。そこで2004年度末時点と2007年度末時点の3つの財務指標を比べて、それらの改善幅が大きい企業を高く評価することにした。具体的には、(1)従業員1人当たり営業利益、(2)棚卸資産回転日数、(3)売上高販管費率――の3指標を直近の約1000日間(3年間)でより改善した企業を上位に来るようにしたのである。分かりやすく言うと、(1)は少ない人員で多くの利益を生み出す力を、(2)は営業・生産・物流など各部門が協力し合って在庫量の最適化を図る力を、(3)は経費をより効率的に使って製品やサービスを売る力を表す。

 ただし、いくら社内の各部門で業務改善が盛んになったとしても、ある程度は安定的に利益を出さなければ上場企業としては落第だ。そこで4番目の指標として、ROA(総資産当期純利益率)の3年平均の値を加えた。

 すると、ランキングはどんな顔ぶれになっただろうか。ROAを指標の1つに加えたため、この3年間に特に業務改善が活性化していなくても、国際的な素材高という環境要因によって業績が急伸して上位にランクインしたと推察される金属・石油・化学などの業種の企業も散見される。それでも日立建機(6位)、豊田合成(18位)、安川電機(23位)、デンソー(36位)、キヤノン(51位)、村田製作所(52位)など、製造現場を中心に業務改善活動が盛んで有名な企業の名前がずらりと並んだ。

 このランキングは、3年前の時点で既に社内の各部門の業務改善が進んでいた企業に幾分不利に働く。「乾いた雑巾」を絞るのは、「濡れた雑巾」を絞るよりも大変だからだ。それでも145位に入ったトヨタ自動車は、絶え間なき改善のお手本と言っていいだろう。ランキング全体を俯瞰してみると、おおむね200位まではこの3年間で「改善力」に磨きをかけた企業がひしめいている。

 来年もランキング特集を企画するつもりだ。必ずしも財務情報にこだわらず、その時までに「革新力」を表す指標を見つけたい。多くの業種で国内市場の伸びが頭打ちとなっているのに加え、国内で事業活動をしていてもグローバル競争を意識せざるを得ないほど競争環境が年々厳しくなっている。そんななか、日本企業の経営者にとって気になるのは「改善力」と「革新力」の両輪だと思うからだ。ITproの読者の皆様からも知恵を拝借できればありがたい。